21. 巨竜
よろしくお願いします。
突然、周囲が暗くなる。
これは……?
まだ夜になるような時間ではない。
何かが、太陽を遮っている?
湖にいた主がオレの思ったことに同時に気づいたか、その水上に出した鎌首をもたげて頭上を見て、そして目を大きく見開いた。
オレも、空を見上げてそこに何があるのかを確認して……そこにいたのは、くすんだ暗い緑色のウロコに覆われて、体長は20メートルにも達しようかという巨大な身体。
その身体を包みこまんばかりに大きな翼。
長く伸びた首からタテガミをなびかせて、こちらを見下ろす凶悪な顔。
この姿は……
「ドラゴン……?」
かすれた声で、広場の誰かが呟く。
そう、この姿はまぎれもなくドラゴン。
冒険者ギルドで聞いた、超強力なブレス(熱線のようなものだろうか)を吐き、その1発で国が滅ぶとさえ言われる伝説の魔物。
それがなぜ、こんな所に?
広場にいる人達が、皆愕然と滞空するドラゴンを見上げている。
アインクル湖の主も突然の事に驚いたか、ドラゴンを見つめたまま動けないでいる。
そんな中、広場の中に声を上げた人達がいた。
「ドラゴン……」
「ドラゴンだ!」
目の前で滞空するドラゴンを前に興奮した声を上げたのは、例の白服の集団。
「おお……これは、深緑の身体……草樹竜、プラントドラゴンか?我らの術式がおびき寄せたのか……?」
「これは……予想以上の成果じゃないか!」
「実験自体は失敗に終わったが、この結果については報告を上げなけれ……!」
まくし立てる声は、そこで途切れた。
突然降下してきたドラゴンの、その巨体に見合う大きさの後ろ脚が、白服達をまるで紙か何かのようにペシャンコに踏み潰していた。
「ひっ!」
「う、嘘……」
「あ、あ……」
隣りにいたミズキやエルナやマルクスが、かすれた声を漏らす。
その中でミズキが、震える手でオレの服の裾を引っ張ってきた。
「ね、ねえタマ……あのドラゴン、私達を、助けてくれた、と思って良いのかなあ……?」
「いや、明確にこちらに対して殺意があるな。もっと正確に言うと、遊び道具か何かを見る目をしている」
わずかな希望を賭けての問いかけは、オレにあっさりと否定される。
愕然となるミズキ。
「あ、遊び道具!?」
「ああ。たぶんだけどあのドラゴン……さっきプラントドラゴンって聞こえたな、ここにいる人間達を、遊び半分で殺しまくるつもりだと思う」
「は……?」
そこまで話したところで、オレ達の声が聞こえていたのかいないのか、空中からこちらを見下ろしていたドラゴンが咆哮を上げた。
「ぐっ……!」
台風かとも見紛うような衝撃に身構える。
プラントドラゴンの大きく裂けた口が一瞬、愉悦の形に吊り上がったように見えた。
次の瞬間、ドラゴンは猛然とオレ達に襲いかかってきた。
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