20. 魔陣
よろしくお願いします。
この大変な時に、なんか妙なことを言っているなと思い声のした方を見てみると、そこには今朝広場で神様がどうしたとかいう演説をしていた、白服の集団の姿があった。
あの白い服は確か……バルツルグ王国のヒルデル市などで見かけた、何とかいう宗教の連中だったか。
どういうことだ?
予定とか何とか言っているが、連中がこの騒動を仕掛けたということなのか?
「やむを得ん!」
「予定は狂ったがしかたない!」
オレが見ているのにも気づいていない様子で、白服達は手に持っていた古びた本を開いて空に掲げ、何やら呪文のようなものを唱え出した。
すると今度は、爆発が治まっていたアインクル湖の周囲に数本の、紫色の光の柱が立ち昇る。
紫といってもオレの紫雷撃のような輝く紫ではなく、暗くよどんだ感じの、見ていると不快感をかき立てられる感じの紫だ。
あれは何だと思った瞬間光の柱は消滅し、続いて柱と同じ色の巨大な魔法陣が、湖を、そして湖畔を覆い尽くすようにして出現する。
と、湖の中で紫の光が一際大きく輝いたかと思うと、急に水面が泡立ち、大きな水柱が起こるとその中から巨大な影が飛び出した。
それは、樹木ほどもある太さの胴体に、数十メートルはあろうかという長さの身体を持った巨大なヘビ。
……いや、よく見ると手足が付いているので、トカゲになるのか?
飛び出してきたトカゲは、苦しそうな悲鳴を上げて魔法陣に覆われた水上をのたうち回る。
もしかしてあれが、この湖の主か?
魔法陣からは紫色に光る鎖のようなものが何本も伸びて、主の身体に絡みついている。
その鎖は次第に数を増やしていき、そして増えるごとに主は苦しそうな声を上げて暴れまわる。
あの魔法陣は、主を捕まえようとしているのか?
「何なのコレ!?」
「きゃあああああ!」
「タマさん動けない!」
湖の光景に気を取られていたオレは、ミズキやエルナ、マルクスの悲鳴で我に返った。
振り向くとそこには、オレ達の足下にまで広がった魔法陣から主を捕まえているのと同じ鎖が伸びて、ミズキや周囲の人達の身体に絡みついている。
なんだかわからんが、とにかく危険なものなのには間違いない!
オレは即座に、地面に広がる魔法陣に向けて紫雷撃を撃った。
紫雷撃が命中した魔法陣は、その円の一部が消し飛ぶ。
一角が消滅した魔法陣は一瞬大きく光り輝いたかと思うと、砕け散るようにして消えていった。
ミズキ達や主の身体に巻き付いていた光の鎖も、同じようにして消滅する。
よし、これでなんとかなったか……
「!!」
オレは反射的に、身を翻してミズキ達をかばう。
次の瞬間、背中に着弾する火球。
しかしその火球は瞬時に粒子状に分解されオレの身体へ吸収されていく。
今のは、攻撃魔法か!
火球の飛んで来た方をみると、そこには片や杖を構え、片や短剣を腰だめにこちらへ突進して来ている、先ほどオレを愕然と見ていた白服の姿。
「貴様何をした!よくも我らの崇高な計画を……!」
「!!」
何やらよくわからないが取り敢えず危ないし邪魔なので、オレは突進してきた白服の顔面に張り手を打ち込んで昏倒させ、続いて担ぎ上げたその白服をもう1人の、杖を構えている方に向けて投げつけた。
飛んで来た仲間の身体が激突し、合わせてひっくり返る白服達。
あの連中は一体何だ?
さっきも変なことを言っていたが、やっぱり奴らがこの騒ぎの原因なのか?
まあとりあえず、あの危なそうな魔法陣は消えたわけだし、湖を見れば主も光の鎖から解放されたようで、水面に長い首を出してこちらを見ている。
あの様子なら、こちらに何かしてくるようなことは無さそうだ。
後はあの白服達を締め上げて何をしようとしていたのかを吐かせれば、この一件は終わりかな。
そんなことを考えながら、いまだ地面でもがいている白服達の方に足を向けようとしたその時、不意にオレの背筋に、電流でも流されたかのような感覚が走った。
お読みいただきありがとうございます。
また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。




