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転生したら、仇討ちが普通の世界に一人で立っていた。  作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
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第5話〜コンビニレジ前は戦場につき

法律で「仇討ち」が正当化され、誰もが当たり前のように刃や武器を交える異世界。そんな狂気の街・世田谷に、何の戦闘能力もない一人の現代人が放り出された。生き残るための武器は、身の回りの日常品と咄嗟の悪知恵だけ——これは、理不尽すぎる世界を泥臭く生き抜く男の災難と脱出の記録である。


「ハァ、ハァ……なんとか撒いた、か……?」

特級仇討ち執行官をゴミ収集網で側溝に叩き伏せた僕は、路地裏をくねくねと曲がりながら、なんとか環七通り沿いのコンビニへと逃げ込んだ。

自動ドアが開き、涼しいエアコンの風と爽やかな入店音(ファミマのあのメロディだ)が僕を迎えてくれる。

「助かった……文明の利器万歳……」

制服に付いたチョークの粉を軽く払い、息を整える。喉はカラカラだし、さっきのダッシュで体力も限界だ。まずは水分補給と、小腹を満たす何かを購入しようとドリンクコーナーへ向かう。

しかし、棚に手を伸ばした瞬間——背後から嫌な気配が漂ってきた。

「ほう……『初心者マーク付き』が、こんな公衆の面前で無防備にスポーツドリンクを選んでいるとはね」

振り返ると、そこにはコンビニの制服を着たアルバイト店員が立っていた。胸のネームプレートには『研修中・仇討ち見習い』の文字。そしてその手には、バーコードリーダーではなく、重厚なスタンガンが握られていた。

「待て待て待て! なんでコンビニ店員が刺客なんだよ! バイト中に副業するな!」

「失礼。当店の『お客様感謝デー』の一環でしてね。君の首を取れば、時給アップと特別ボーナスが支給される仕組みになっているのですよ」

「どんな店だ! 労基署に駆け込むぞ!」

店員が手慣れた手つきでスタンガンのスイッチを入れる。バチバチッという凄まじい放電音が狭い店内に響き渡った。

逃げ道を探すように周囲を見回す。レジカウンター、ホットスナックのケース、そして目の前のレジ横棚。

(相手はスタンガン……間合いに入られたら一発でアウトだ。でもここは狭い通路、大振りな攻撃は届かない!)

「喰らいやがれ! 『世田谷流・ホットスナック爆撃』!!」

僕は保温ケースから揚げたてのアメリカンドッグを取り出すと、マスタードとケチャップのパックを親指で一気に破裂させ、店員の目元めがけて勢いよく噴射した!

「ぐはっ!? 目に……マスタードが……ッ!?」

「さらにこれだーっ!」

視界を奪われて苦悶する店員の足元へ、僕はレジ横にあったドリップコーヒー用の大量のグラニュー糖とガムシロップをぶち撒けた。靴底がニュルッと滑り、店員は派手に床へ倒れ込む。

「く、公務……じゃなくて勤務妨害——」

「勤務中に客を狩ろうとするな!」

バタバタともがく『研修中刺客』を尻目に、僕はレジに100円玉を1枚叩きつけ、握りしめたポカリスエットを抱えて店を飛び出した。

狂気の街・世田谷。コンビニのレジ前すらも戦場だが、僕の悪知恵とローカルアイテムがある限り、今日を生き延びてみせる。

    【第5話・完】

最後までお読みいただきありがとうございます!

コンビニのレジ前すら安心できない異世界・世田谷ですが、マスタードとグラニュー糖という身近なローカルアイテムでなんとか切り抜けてもらいました。

(※作中のアメリカンドッグや調味料の使い方は大変危険ですので、現実のコンビニでは真似しないでくださいね!)

次回も主人公が知恵と小細工でしぶとく生き残る様子をお届けできればと思います。

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