第15話〜決闘
いよいよ田中との直接対決!
カッターナイフを手にした主人公は、果たしてリベンジを果たせるのか……?
※一部、打撃や出血などの描写が含まれますのでご注意ください。
第15話〜境川の河川敷にて
放課後の第一準備室。僕は死角から忍び寄り、黒板消しクリーナーの重低音に紛れて、田中の背中に「放課後、境川の河川敷で待つ。理由:仇討ち」と達筆で書いた紙をペタリと貼り付けた。
「……おい」
クリーナーのスイッチを切り、ゆっくり振り向いた田中の背中で、果敢な決闘状が虚しくヒラヒラと揺れている。
「背中に紙を貼るのは小学生の嫌がらせレベルだぞ。それと、漢字が間違っている。『仇討ち』の『仇』の字、九じゃなくて丸になってるぞ。『丸討ち』か? 玉砕覚悟の丸腰宣言か?」
「くっ……! 細かい指摘はどうでもいい! 川辺へ来い、田中!」
十五分後。昨日みんなで一生懸命ゴミ拾いをした、ピカピカに綺麗な境川の河川敷。
僕はカッターナイフの刃をカチカチと三段階出し、夕日を浴びて冷たく光らせた。
「ここで決着をつける! 僕の大切な青春と記憶を踏みにじんだ罪、その血で洗ってもらう!」
「やれやれ……せっかく昨日クリーン作戦で綺麗にした川辺を、血で汚す気か? 近所のおばちゃんに怒られるぞ」
田中は溜息をつきながら、通勤鞄から静かに「何か」を取り出した。包丁でもナイフでもない。それは――凶悪な鈍器のごとき、重厚な角材付きの『巨大三角定規(木製)』と『アクリル製1メートル直定規』だった。
「法で認められた仇討ちだ、文句はあるまい。……死ねぇッ!」
僕が殺意を込めて飛びかかった瞬間――。
ヒュン! と空気を引き裂く重低音が響き、1メートル直定規が僕の額を容赦なく強打した。
「ぶはっ!?」
「姿勢が悪い。腰が入っていないから軌道が丸見えだ」
悶絶してうずくまる僕の背中に、間髪入れず巨大三角定規の直角部分(90度)が容赦なく叩き落とされる。ドスッ、という鈍い音とともに、僕の肋骨があやしい悲鳴を上げた。
「ぐあぁっ!?」
「そして角度が甘い! 襲いかかるならせめて鋭角の45度で突いてこい! 90度の鈍角で撫でられてどうする!」
「痛い痛い痛い! 暴力反対! 先生でしょ!?」
「仇討ち法第3条だ。合意の上の復仇戦において、武器の形状に制限はない。……おい、血が垂れてるぞ。昨日拾ったペットボトルのゴミ袋の上に落ちろ。芝生が汚れる」
田中は無表情のまま、巨大三角定規で僕の頭部を叩き続け、打撃のたびに「ピタゴラスの定理!」「円周率!」「解なし!」と理不尽な掛け声を叩き込んでくる。頭皮が切れ、ドス赤く温かい血が目に入って視界が真っ赤に染まった。
「がはっ……げほっ……!」
「ほう、カッターナイフを離さない執念だけは認めてやろう。……だがな」
田中は僕の手首を容赦なく踏みつけると、ゴリゴリと体重をかけた。メキメキと嫌な骨の音が響き、激痛に叫ぶ間もなく、カッターナイフが手から滑り落ちる。
田中はそのナイフを拾い上げると、僕の目の前で刃を最大限までシャキシャキシャキと伸ばした。
「さあ、お前の大好きな復仇の時間だ。……首を差し出せ」
夕暮れの河川敷に、冷酷な金属音が響き渡る。
綺麗になったばかりの草むらに、僕の絶望的な悲鳴が虚しく響き渡っていた。
お読みいただきありがとうございます!
いよいよ田中との直接対決でしたが、カッターナイフ対巨大定規の戦いは圧倒的な数学指導(?)の場と化してしまいました……。漢字の間違いから構えの角度まで叩き込まれた主人公ですが、この絶体絶命のピンチをどう脱するのか(あるいは撃沈するのか)、次回も楽しんでいただけたら嬉しいです!
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