第14話〜黒板の数式と刃
目が覚めた時、世界は狂っていた。
そこは、法によって「仇討ち」が認められた世界。理不尽に大切なものを奪われた者が、自らの手で刃を執り、復仇を果たすことこそが絶対の正義とされる社会だった。
前世の記憶を抱えたままこの異世界に一人立たされた僕には、どうしても許せない男がいた。
冷徹な眼光で生徒を見下し、僕の心を理不尽に踏みにじった数学教師――田中だ。
法で許されているからといって、殺戮を好んでいるわけじゃない。
だけど、この穏やかな日常を守るためには、避けては通れない血の儀式がある。
これは、歪んだ世界で復仇の刃を研ぎ澄まし、己の正義を貫くための物語だ。
境川の清掃作業を終えた翌日、爽やかな川風の余韻は、学校の重苦しい空気の中へと一瞬で消え去った。
ギチギチと嫌な音を立てて、チョークが黒板を削る。壇上に立つのは、数学教師の田中だ。冷徹な眼光と、生徒を虫ケラのように見下す歪んだ笑み。奴が黒板に書き連ねる複雑な数式を見るたび、僕の胸の奥で、押さえつけていたドス黒い感情が脈打つ。
この世界では「仇討ち」が合法だ。理不尽に大切なものを奪われた者が、刃をとって復仇を果たすことが正義とされている。
そして田中こそが、僕から前世の記憶ごと引きちぎりたくなるほどの、激しい憎悪を向けさせる対象――僕の仇だった。
「おい、聞いてるのか?」
田中の冷ややかな声が教室に響く。僕は静かに目を伏せ、手元のアシストノートに視線を落とした。そこに書かれているのは、授業のメモなどではない。
田中の放課後の行動パターン。奴が一人で立ち寄る準備室の死角。そして、仇討ちの決闘状を突きつけるのに最も適した「境川の河川敷」までの誘導ルート。
(昨日、みんなで綺麗にしたあの川辺で……決着をつける)
穏やかな日常を守るためには、避けて通れない血の儀式がある。握りしめたシャープペンシルの芯が、パキリと音を立てて折れた。僕の仇討ち計画が、静かに動き始めようとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
境川の清掃活動という平和なひとときから一変、教室では復讐へのカウントダウンが始まりました。
昨日綺麗にしたばかりの思い出の場所が、仇討ちの舞台になろうとしています。
シャープペンシルの芯とともに折れた感情の行方と、田中の冷徹な視線――。
はたして計画通りに決着をつけることができるのか、次回の展開もぜひ見守っていただけると嬉しいです!




