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転生したら、仇討ちが普通の世界に一人で立っていた。  作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
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第12話〜事情聴取

目が覚めると、そこは法とモラルがほんの少し狂った、見慣れたはずの街だった。

この世界では、誰もが当たり前のように「仇討ち」の権利を行使する。

街を歩けば日本刀を差し差す刺客とすれ違い、駅のホームでは合法的に仇討ち代行業者が暴れ回る。

そんな物騒極まりない世界に、何の戦闘能力もないただの現代人として放り出された僕。

頼れるのは、手元にあるチープな身代わり手形と、スーパーで買った激辛キムチ鍋の汁、そして咄嗟の悪知恵だけ。

血生臭い復讐劇が日常と化した世界で、理不尽な刺客と謎の行政指導(?)をすり抜けながら、僕は今日も全力で生き延びていく——。

「えー、では確認ですが。あなたが町田駅ホームにおいて、仇討ち代行業者『血煙組』の刺客三名に対し、激辛キムチ鍋の汁を噴出させ、なおかつ駅の自動販売機を破損させた……お間違いありませんね?」

グレーの事務デスクを間に挟み、眼鏡の男——仇討ち適正化推進課の相模課長補佐が、パイプ椅子に深く腰掛けた僕をジロリと睨みつけた。

「ち、違います! あれは正当防衛です! そもそも向こうが日本刀で斬りかかってきたんですよ!?」

「日本刀の携帯は『仇討ち特例法第3条』により届出済みです。合法ですね。一方、あなたの使用したカプサイシン系スプレー、および市販の激辛スープは、相模原市及び周辺自治体の『環境美化条例』ならびに『危険物持ち込み規制』に抵触します」

「仇討ちで人が斬り合ってる横で環境美化!? 基準がバグってません!?」

思わず机を叩いて立ち上がると、脇に控えていた厳つい警備員が「動くな」と腰のサスマタに手をやった。相模原市、防犯対策まで無駄に手厚い。

「落ち着きなさい。我々は何も、あなたの仇討ちそのものを否定しているわけではないのです。ただね……『きれいで住みよい仇討ちの街・さがみはら』を目指す我が市としては、ゲリラ的な劇物の散布や公物破損は見過ごせないのですよ」

相模課長補佐は溜め息をつき、厚いファイルの中から一枚のピンク色の用紙を取り出した。

「本来なら過料三万円ですが……あなた、例の『身代わり手形』をお持ちですね?」

「え、ええ。これですけど……」

僕がポケットから丸まった手形を取り出すと、相模課長補佐の目が鋭く光った。

「その手形がある場合、相模原市内での仇討ち関連トラブルについては、行政手続きの『代行免除申請』が適用できます。ただし……代わりに我が市が指定する『あるボランティア作業』をこなしていただく必要があります」

「ボランティア……ですか?」

「ええ。町田と相模原の境目を流れる境川の、仇討ち残骸(血痕および捨てられた武器)の清掃作業です」

異世界に来てまで行政指導を受け、まさかの川の清掃奉仕を命じられるとは。僕の命がけの逃亡劇は、思わぬ形でクリーンな環境保護活動へと脱線していくのだった。

お読みいただきありがとうございます!

日本刀の斬り合いは届出済みで合法なのに、キムチ鍋の汁は条例違反で怒られるという、行政の妙な手厚さとバグった基準を描いてみました。

身代わり手形のおかげで命拾い(?)したものの、まさかの境川清掃奉仕活動……。

次回も理不尽な世界観に振り回される主人公を温かく見守っていただけると嬉しいです!

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