第10話〜町田駅の攻防
第10話をお読みいただきありがとうございます!
相模大野へ向かう途中の町田駅で、まさかの大混戦。刺客の数も対策もどんどんエスカレートしていきますが、主人公も身近な日用品と駄菓子(?)で全力で抗います。ぜひお楽しみください!
プシュー、と重々しいエア音を立ててドアが開いた瞬間、町田駅のホームは一瞬にして戦場へと変貌した。
「出たぞ! 伝説の身代わり手形持ちだーっ!」
「町田の恥をすすぐのは俺たちだ! かかれぇぇぇ!」
ホームに押し寄せた刺客たちの数は、これまでの比ではない。改札口から階段、果ては立ち食いそば屋の前に至るまで、ギチギチに詰まった竹槍や日本刀の群れが優先車両のドアへと殺到する。
「うわっ、多すぎるだろ!? 相模大野に行く前にここで詰むって!」
僕はとっさに、コンビニの袋から固形石鹸とデカいペットボトルの茶を取り出した。床のリップクリーム層に追い石鹸水をぶちまけ、車内の床を「超・絶対摩擦ゼロゾーン」に再構築する。
「ぐわあぁぁっ!? 足が、足が滑るッ!」
「ぬあーっ! 慣性に従ってホームへ逆流していくーっ!」
雪崩れ込もうとした刺客たちが次々とスライディング姿勢で車外へ押し戻されていく中、ホームの奥から黒い着物姿の巨漢が割って入ってきた。
「ハハハ! 浅はかな仕掛けだな! 我が『町田仇討ち連盟』特製のアイゼン付き下駄の前に、そんな油など無力!」
ガチリ、と床に刺さる金属音。スパイク付きの下駄を鳴らし、巨漢が凄まじい圧迫感で車内へ踏み込んでくる。
「くっ、対策してきてる……! ならば、これだ!」
僕はポケットの奥底から、最後の切り札——「激辛柿の種」の袋を破り開けた。そのまま手づかみで口へ放り込み、勢いよく噛み砕いてから、車内を循環するクーラーの吸気口に向かって渾身の息を吹き吹き飛ばした。
「喰らえ! 超微粒子カプサイシン・サイクロン!」
「ぐはあっ!? 目が、目がカサカサして激痛が……っ! 吸気口を経由して車内全体に拡散しておる……っ!?」
あまりの激痛に巨漢が悶絶し、体勢を崩した隙を見逃さず、僕は吊り革をバネにして車外のホーム天吊り看板へと跳躍した。
『お客様、ホーム上での激辛スナック粉砕物のエアゾール噴散、および駅名標への登頂行為は大変危険です。駆け込み乗車はおやめください。発車します』
駅員の虚無なアナウンスとともにドアが閉じ、電車は叫び声を上げる町田の刺客たちを置き去りにして、ゆっくりとホームを離れていくのだった。
お読みいただきありがとうございました!
町田駅での大混乱、なんとか(?)乗り切りました。
床をツルツルにしても対策されるなら、空気攻撃しかない……ということで、激辛柿の種の威力をいかんなく発揮して(?)もらいました。
駅員さんの冷ややかなアナウンスとともに、いざ相模大野へ!
次回もどうぞよろしく御願い申し上げます!




