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転生したら、仇討ちが普通の世界に一人で立っていた。  作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
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第9話〜いざ、町田へ

昭和の情緒が残る架空の現代日本を舞台に、小田急線で繰り広げられるハチャメチャな仇討ちバトルコメディのプロローグをお届けします。

平成から令和へと時代が移り変わろうとも、この国には決して消え去ることのない奇妙な制度が存在していた——それこそが、国家公認の「仇討ち法」である。

だが、過密ダイヤを極める都心の鉄道網において、刃物を振り回す刺客たちの存在はあまりにも不条理で、かつ運行遅延の最大の原因となっていた。そこで鉄道会社が打ち出した苦肉の策が、電車の最後尾に設けられた「仇討ち優先車両」である。

主人公・僕が手にしているのは、名門の家柄と莫大な財産、そして親の威光によって発行された伝説の「身代わり手形」。これを持っていれば、あらゆる仇討ちのターゲットを肩代わりできる代わりに、全国の仇討ち志願者から一斉に命を狙われるハメになるのだ。

今や関東最大の決戦場と化した小田急線急行列車。相模大野行き電車に乗り込んだ僕を待っていたのは、法改正の網をかいくぐり、命がけで僕の首を狙う刺客たちとの、あまりにも下らない生存競争だった。

相模大野行き急行列車が駅のホームへ滑り込むと同時に、ドアが開く音を合図にして、さらなる仇討ち志願者たちの群れが雪崩のように仇討ち優先車両へと押し寄せてきた。

「見つけたぞ! 親の七光りで手に入れたというその身代わり手形、我が一族の念願として今ここで討ち取る!」

「待ちやがれ! その首は俺たち『町田仇討ち組合』の獲物だ!」

ホームにまで溢れかえっていた刺客たちが一斉に雪崩れ込んでくるが、彼らは足を踏み入れた瞬間に一様に青ざめた。僕が丹念に敷き詰めたリップクリームとファミチキの油によって、車内の床は完全に摩擦ゼロのスケートリンクと化していたのだ。

「うわあああぁぁぁ!? 滑る、滑るぞ!?」

「踏ん張りが利かぬ! 構えが崩れる……ッ!」

次々と体勢を崩して滑り倒れていく刺客たちに向け、僕がポケットから取り出したのは、コンビニのレジ横で買ったアツアツの「からあげクン(レッド)」である。

「食らいつけ! カプサイシンの嵐!」

僕はからあげクンを口に含み、持ち前にしてあったポカリスエットの残りで一気に流し込みながら、勢いよく車内中央へ向かって息を吹き吐き出した。激辛の油脂分とスパイスが微粒子となって霧状に拡散し、目の前の刺客たちの粘膜を容赦なく襲う。

「グハッ!? 目が、目がぁぁぁ! スパイスがダイレクトに目と鼻を刺す……!」

「な、なんて情け容赦のない兵器だ……! これはもはや化学兵器の領域……!」

悶絶する刺客たちを尻目に、僕は吊り革を伝ってスパイダーマンのように天井付近を水平移動し、混乱する車内をすいすいとすり抜けていく。

「お客様、車内での辛味成分のエアゾール化および吊り革を用いた過度なアクロバット移動は、他のお客様の目や鼻を著しく刺激しますのでおやめください。次は、町田、町田です」

車掌の相変わらず感情を失ったアナウンスが車内に響き渡る中、急行列車は狂乱の刺客たちを乗せたまま、いよいよ最大の難所である町田駅へと滑り込んでいくのだった。

お読みいただきありがとうございます!

からあげクン(レッド)の辛味成分は、本当に目に染みるので取扱注意です(笑)。

そして急行列車はいよいよ激戦区・町田駅へ突入します。

次回もカオスな仇討ちバトルをお楽しみに!

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