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【完全版】GWO~麗しき女神の秘宝~  作者: 齋藤 雅


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第七話 【仲間】

「ここから反撃だ!」


タカノが二本の剣を構えた。


「リョウコ!」


「え?」


「さっき、向こうの連携に気付いたのはあんただろ」


タカノはレンたちを睨んだまま続ける。


「あんた、まだ戦うことに慣れてないんでしょ?」


「う、うん……。」


「だったら、私たちを動かしなさい」


「え?」


「あんたが司令塔になるの」


リョウコが目を見開く。


カスミもソウマへ目を向けた。


その手に、もう剣はない。


「幸い、ソウマの剣をあんたが折ってくれたおかげで、向こうの攻撃力は著しく低下してる」


敵陣を見たまま。


「よくやった」


「…………。」


リョウコは言葉を失った。


タカノが二本の剣を前へ構える。


「私たち三人をコマだと思って使いなさい」


「あいつらは、私たちが倒す!」


ミカコもトンファーを握り直した。


「それぞれが出来ることを、全力でやる」


リョウコがミカコを見る。


ミカコは前を向いたまま、口元を僅かに上げる。


「それがチームプレイってもんさ」


「…………。」


リョウコは三人を見た。


タカノ。


カスミ。


ミカコ。


ずっと、自分より遥かに強かった三人。


追いつけるはずなんてないと思っていた。


その三人が今、自分を見ている。


自分の指示を待っている。


「……あたしが、みんなに指示していいの?」


タカノが呆れたように眉を上げた。


「だから頼んでるんでしょ」


ミカコも鼻で笑う。


「今さら何言ってんのさ」


「…………。」


胸の奥が、熱くなる。


強くなったからじゃない。


剣で勝てるようになったからでもない。


自分にも出来ることがある。


それを、初めて仲間に認めてもらえた。


「……うん!」


リョウコは大きく頷いた。


その横で、ポムが自分を指差す。


「あたしは?」


カスミが即答した。


「あんたはリョウコを守ってれば良い」


「ほぇ?」


「司令塔を守ってもらわなきゃ困る」


ポムの顔がぱっと明るくなる。


「分かった!」


「それなら直接戦ってないしね」


ピックが笑う。


「たぶん!」


「たぶんって何!?」


その時。


「来るぞ!」


レンの声が飛んだ。


男子側が一斉に動く。


先頭はゴウ。


その左右をジンとソウマが走り、後方ではユーキが銃を構えている。


レンはそのさらに後ろ。


全体を見ている。


リョウコの表情が変わった。


さっきまでなら、目の前に迫ってくる相手だけを見ていた。


でも今は違う。


全員を見る。


誰がどこへ向かい、誰を狙っているのか。


「ゴウさんが正面!」


リョウコが叫ぶ。


「ミカコさん!」


「了解!」


ミカコが前へ出る。


ゴウの拳とトンファーが激突した。


ドンッ!!


床を震わせる衝撃。


その横をジンが抜けようとする。


「カスミさん、右!」


「見えてる!」


カスミの棒が横薙ぎに走り、ジンの槍を外へ弾く。


その瞬間、ソウマが空いた中央へ飛び込んだ。


「タカノさん!」


「任せな!」


二本の剣が交差し、ソウマの蹴りを受け止める。


だが——。


「ユーキさんが狙ってる!」


後方。


銃口がミカコへ向く。


リョウコは一瞬だけ考えた。


男子側は、誰かが止められれば必ず別の誰かが補う。


だったら、一人ずつ相手をするんじゃない。


連携そのものを崩す。


ゴウは強い。


でも、一番厄介なのは――後ろから自由に撃てるユーキだ。


まずあの銃を止める。そのために、前をこじ開ける。


リョウコの視線が、三人を走った。


タカノ。


カスミ。


ミカコ。


そして。


一つの動きが頭に浮かぶ。


「ミカコさん!」


「何!」


「正面から突っ込んで、道を開けて!」


ミカコがニヤリと笑う。


「了解!」


トンファーを構え、一気に前へ飛び出した。


「カスミさん!」


「何!」


「タカノさんを飛ばせる!?」


「……は?」


タカノが振り返った。


「ちょっと待て! 何を——」


カスミは一瞬だけ考え、すぐに意味を理解した。


棒を低く構える。


「タカノ、乗れ!」


「本気!?」


「行ける!」


タカノが床を蹴った。


その足が、カスミの棒へ乗る。


「今!」


リョウコが叫ぶ。


カスミは棒を大きくしならせ、タカノの体重ごと一気に押し込んだ。


限界まで弓なりに曲がった棒が――跳ね返る。


「行っけえぇぇぇぇぇぇ!!」


バァンッ!!


溜め込まれた反発力が一気に解放され、タカノの身体が弾丸のように射出された。


その先では、ミカコが敵陣へ食い込み、トンファーで進路をこじ開けていた。


「ミカコさん!」


「分かってる!」


ミカコが振り返り、飛んでくるタカノへ片方のトンファーを突き出した。


「踏め!」


タカノの足がトンファーへ乗った瞬間、ミカコが腕を振り抜く。


「うおぉぉりゃぁぁぁぁ!!」


ドンッ!!


「上等!」


タカノはさらに身体を低くし、二本の剣を構えた。


加速をそのまま攻撃へ変え、一直線にユーキへ迫る。


「はぁ!? 俺!?」


ユーキが慌てて銃口を上げる。


だが、遅い。


タカノが空中で身体を捻った。


二本の剣が閃く。


ガキィンッ!!


銃が大きく弾かれた。


「うそだろ!?」


ユーキの手から銃が離れ、床を転がる。


タカノはそのまま着地すると、ユーキの懐へ踏み込んだ。


「捕まえた!」


「ちょっ——!」


二本の剣が、ユーキの首元で止まる。


「…………。」


ユーキは床へ転がった銃を見る。


それから、目の前のタカノを見た。


「……参った」


『ユーキ、戦闘不能』


「はぁ!?」


前線でミカコと向き合っていたゴウが、思わずユーキを振り返る。


「お前、まだ一発も食らってねえだろ!」


ユーキは首元へ突き付けられた二本の剣を指差した。


「いやいやいや! 首に剣二本だぞ!?」


「だからって諦めんなよ!」


「俺、打たれ弱いから銃選んだんだよ!」


ゴウの顔が引きつる。


「堂々と言うな!!」


少し離れたところで槍を構えていたジンも、呆れたように眉を寄せた。


「そもそも模擬戦で死ぬな」


「そういう問題!?」


レンだけは大剣を構えたまま、短くユーキを見る。


「ユーキ」


「……何」


「あとで説教な」


ユーキが肩を落とした。


「ですよねぇ……。」


そのやり取りを見ながらも、リョウコの目は戦場から離れていなかった。


ユーキは消えた。


次に狙うなら――。


リョウコの視線が、一人の男子で止まる。


その手に、もう剣はない。


「……ソウマさん」


リョウコが指を向ける。


ミカコがその指先を追い、ソウマを見る。


そして一度だけ、リョウコと目を合わせた。


それだけで十分だった。


男子側の意識が僅かに逸れる。


ミカコの目が鋭くなる。


「お前ら!」


男子たちが振り向く。


だが、ミカコはもう走り出していた。


「まだ戦闘中だ!」


「しまっ――!」


狙うのは――ソウマ。


ソウマが慌てて構える。


だが、その手に剣はない。


繰り出された拳を、ミカコは身体を沈めてかわし、そのまま一気に懐へ潜り込んだ。


「はぁぁっ!!」


ドゴンッ!!


トンファーがソウマの腹へまともに入る。


「ぐっ……!」


身体が大きく吹き飛び、床へ叩きつけられた。


ドンッ!!


「ソウマ!」


レンが叫ぶ。


だが、返事はない。


ソウマはそのまま動かなかった。


『ソウマ、戦闘不能』


「…………。」


一瞬。


男子側の空気が止まる。


だが、レンがすぐに大剣を構え直した。


「立て直すぞ。まだ三人いる」


「了解」


ジンが槍を構え、ゴウもミカコへ向き直る。


その前で、ミカコはトンファーを構え直し、ニヤリと笑った。


「戦場でよそ見してるからだよ」


「…………。」


ユーキがそっと目を逸らした。


「ほらぁ……ああなるじゃん」


「お前は黙ってろ!!」


その光景を見たリョウコの目が輝いた。


「これ……!」


一人じゃない。


三人の力を、繋げればいい。


「行ける!」


ポムがその横で嬉しそうに跳ねる。


「リョウコ、すごーい!」


ピックも感心したようにリョウコを見る。


「リョウコちゃんって、今まで馬鹿にされてきたけどさ」


「うん?」


「魔法使いが戦士の中にいたんじゃ、そりゃ何も出来ないって馬鹿にされるよねぇ」


ポムがぱっと顔を上げた。


「それだ!」


「でしょ?」


ポムは大きく頷く。


「人間、得意不得意ってのがあるからね!」


リョウコが振り返る。


「……あたし、魔法使いなの?」


ポムが少し考える。


「たぶん!」


「たぶんなの!?」


ピックが笑う。


「少なくとも戦士じゃないよね」


「それは自分でも分かるよぉ!」


その時。


レンの視線が、まっすぐリョウコへ向いた。


「……あいつだ」


ジンもすぐに気付く。


「司令塔か」


「そうだ」


ユーキ。


ソウマ。


立て続けに二人を失った。


女子側の動きを変えたのは――リョウコ。


レンが大剣を構え直す。


「リョウコを潰す」


ゴウが籠手を打ち合わせた。


「了解!」


ジンも槍を低く構える。


「えっ!?」


リョウコの顔が引きつった。


「今度はあたし!?」


ピックが横で深く頷く。


「そりゃ狙われるよねぇ」


「嫌だよぉ!」


その前へ、カスミが立つ。


棒を横へ構えた。


「来るよ」


「カスミさん!」


その隣で。


ポムがカスミを見上げた。


にこっ。


「カスミちゃん、面白いことしてみよっか」


「か……カスミちゃん?」


ポムがカスミの腕へ触れる。


ぺたっ。


「え?」


淡い桃色の光が広がり、そのすぐ隣にもう一つの人影が形を作っていく。


髪。

顔。

服。


そして、手に持つ棒まで。


「…………。」


カスミが横を見る。


もう一人のカスミも、同じようにカスミを見る。


二人同時に眉を寄せた。


「「気持ち悪い」」


ピックがコピーカスミの周りを飛び回る。


「ポムの実体影分身って、他人にも使えるんだねぇ」


ポムが嬉しそうに笑う。


「コピーだよ!」


リョウコが目を丸くする。


「人もコピー出来るの!?」


「うん。でも五分だけ」


ポムが指を一本立てる。


「それと、完全に同じじゃないよ。あたしが分かる範囲で作ってるだけだから」


カスミが自分そっくりのコピーを見る。


「……五分あれば十分」


コピーカスミも棒を構えた。


「同感」


カスミの眉がさらに寄る。


「やっぱり気持ち悪い」


コピーカスミも同じ顔で眉を寄せた。


「それはこっちの台詞」


リョウコが二人を見比べる。


「会話まで普通に成立してる……!」


その時。


「来るぞ!」


リョウコの声。


ゴウが二人のカスミを見て、一瞬だけ顔を引きつらせた。


「……マジかよ」


それでも。


籠手を打ち合わせる。


「だったら二人まとめて来い!」


ゴウが正面から突っ込んだ。


「言われなくとも」


二人のカスミが同時に床を蹴った。


ゴウが拳を振るう。


一人のカスミが棒で受けた。


ガンッ!!


「っ!」


その横で、もう一人のカスミが身体を回転させ、棒をゴウの足元へ走らせる。


「うおっ!?」


体勢が崩れた。


カスミが叫ぶ。


「ミカコ!」


「見えてる!」


ミカコが一気に踏み込む。


ドゴンッ!!


トンファーがゴウの胸元へ叩き込まれた。


「ぐっ!」


ゴウが後ろへ弾かれる。


だが、倒れない。


「まだだ!」


踏み止まった、その瞬間。


タカノが横から飛び込んだ。


「じゃあ、これは?」


二本の剣が交差する。


ゴウが籠手を上げる。


ガキィンッ!!


受け止めた。


だが、足元。


本物とコピー、二本の棒が左右から同時に走る。


「え」


ガッ!!


両足を払われた。


「うおおっ!?」


巨体が宙へ浮く。


「今!」


リョウコが叫ぶ。


ミカコが身体を捻った。


「終わり!」


ドゴンッ!!


トンファーがゴウの胴へまともに入る。


「ぐあっ!」


ゴウの身体が床を滑る。


そのまま。


動かない。


『ゴウ、戦闘不能』


「三人目!」


リョウコの声が弾む。


残るのは。


レン。


ジン。


二人。


その二人を。


タカノが同時に相手していた。


ギィンッ!!


レンの大剣を右の剣で受け、直後に伸びたジンの槍を左の剣で弾く。


「っ……!」


タカノは一歩下がると、すぐに踏み込んだ。


二本の剣が、レンとジンへ同時に走る。


「……やるな」


レンが大剣で受けながら呟く。


ジンも槍を返す。


「完全に流れを持っていかれた」


「今さら気付いた?」


タカノが笑う。


そのまま。


三人の攻防は止まらない。


それでも。


二人の目から戦意は消えていない。


タカノが二本の剣を構えた。


「まだやる?」


レンが笑う。


「当たり前だ」


カスミも。


コピーカスミも。


棒を構える。


ミカコがその横へ並ぶ。


リョウコは四人を見る。


いや。


今は。


五人。


自分も含めて。


一つのチーム。


「……行こう!」


レンとジンが同時に床を蹴った。


タカノが正面からレンへ。


カスミとコピーカスミが左右からジンへ。


ミカコはその間を抜ける。


そして。


リョウコは。


全員の動きを見ていた。


「タカノさん、右!」


「了解!」


「カスミさん、少し下がって!」


「分かった!」


「ミカコさん、そのまま!」


「任せて!」


次々に。


声が通る。


誰も迷わない。


誰も一人で戦っていない。


レンが大剣を振り抜く。


タカノがかわす。


その死角へ。


ミカコ。


「もらった!」


レンが咄嗟に大剣を戻す。


だが。


遅れる。


その隙。


タカノの剣が首元で止まった。


「…………。」


レンが一度だけ目を閉じる。


「参った」


『レン、戦闘不能』


残る一人。


ジンが槍を振るう。


本物のカスミが受ける。


コピーカスミが横から棒を差し込む。


ジンが跳ぶ。


その着地点。


ミカコ。


「逃がさない!」


トンファーが槍を弾いた。


ガキンッ!!


槍が床へ落ちる。


ジンの目の前へ。


二本の棒。


左右から。


首元で止まった。


「…………。」


ジンが小さく息を吐く。


「参った」


『ジン、戦闘不能』


一瞬。


闘技場が静まり返った。


そして。


『模擬戦終了』


『勝者――女子校代表チーム』


「…………。」


リョウコは。


しばらく動けなかった。


勝った。


自分たちが。


勝った。


「……勝った?」


「勝ったよ!」


ポムが飛び跳ねる。


「リョウコ、勝ったー!」


「…………。」


リョウコの目に。


じわっ。


涙が浮かぶ。


タカノがそれを見て笑った。


「今度は泣いていいんじゃない?」


「……うん」


リョウコが笑う。


「うん!」


その時。


カスミが口を開いた。


「あと」


「え?」


「あたしたちに『さん』付けるの、もうやめな」


リョウコが目を瞬かせる。


「え?」


タカノも剣を肩へ乗せる。


「仲間なんだから、いらないでしょ」


ミカコもトンファーを下ろした。


「いつまで他人行儀なんだよ」


「…………。」


リョウコは三人を見る。


タカノ。


カスミ。


ミカコ。


今まで。


遠い人たちだった。


強くて。


怖くて。


自分とは違う世界にいると思っていた。


でも。


今は。


「……タカノ」


タカノが笑う。


「うん」


「カスミ」


「何?」


「ミカコ」


「遅い」


「ひどい!」


三人が笑った。


リョウコも。


泣きながら笑った。


その横で。


コピーカスミが手を上げる。


「じゃああたしも?」


カスミが即答した。


「お前はカスミじゃない」


「気持ち悪い」


「「だからそれはこっちの台詞」」


「まだ五分経ってないの!?」


ピックが腹を抱えて笑う。


そんな中。


ミカコがリョウコの前へ立った。


何も言わない。


ただ。


右手を上げる。


「……?」


リョウコはその手を見る。


少し迷って。


恐る恐る。


自分の手を上げた。


パンッ!


乾いた音が。


闘技場に響いた。


ミカコは何も言わない。


ただ。


少しだけ笑った。


リョウコも。


同じように笑った。


初めて。


自分にも。


仲間が出来た気がした。

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