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残量97%の恋人 —勇者として召喚されたけど、世界なんてどうでもいいので彼女を救いたい—  作者: 伊太利 ひなぎく


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第11話前編 私が従うのは、あなただけ

 ようやく魔王と対峙した俺たち。

 その不敵な笑みと鋭い視線に思わず後退りしかけるも、何とか踏みとどまる。


 さすがに魔王って呼ばれるだけあるな。

 威圧感だけじゃなくて、魔力も段違い……どうやって、こいつを倒せば良いんだ?


 じっと魔王を観察する俺を玉座から見下ろす魔王は、小さく口角を上げた。


「どうやら、余は勇者という存在の力を見誤っていたらしいな」

「……は?」

「グランヴェールもヴァルゲートも、余の術式の中でも最高クラスと言っても過言ではない。それを、勇者とはいえ人間風情にこうも容易く破られるとはな……」


 そこまで言った魔王は、ゆっくりと立ち上がる。


「不穏な芽は、早めに潰しておくのが良かろう」


 魔王が俺に向けて手をかざす。


『勇真さ——』


 その瞬間——


「っ!!」


 ミアが言い切るより速く、目にも止まらぬ速度で、禍々しい魔力の塊が連続で無数に放たれる。

 俺はすんでのところでそれをかわしながら素早く剣を抜き、強化魔法を重ねた。


「シャーロット!」

「はいっ!!」


 シャーロットは、間髪入れず俺の前方に障壁魔法を展開する。

 俺は剣を構えると、風魔法で加速して魔王に向かって一直線に飛んだ。


 まだ、防御体勢に移行しきれてない。それならっ……!


 俺は魔王の身体に向けて、勢いよく剣を振り下ろす——が、刃がヤツの身体へ届く寸前、何か硬いものに弾かれた。

 同時に甲高い音が室内に響き、俺は思わず目を見開く。


「なっ!?」


 魔王を斬ったはずの剣の刃が、俺の目の前で2つに折れた。

 カランと乾いた音を立てて、刃先が床に滑り落ちる。


 う、嘘だろ? だって、強化魔法も——


「ユウマっ! 避けろ!!」

「っ!?」


 アーサーの声に我に返ると、すぐ目の前に魔王の鋭い爪が迫っていた。何とか後ろに飛ぶも、そこに魔力の塊が直撃する。


「ぐっ!!」


 俺の身体は数メートル後ろに吹き飛び、壁に強く打ち付けられる。


 息が、できない。


「ミ、アっ……無事か? ……ぐっ」

『私の本体機能に異常はありません。勇真さんは、すぐにシャーロットさんから治療を受けてください』

「ユウマさまっ!!」


 素早く駆け寄ってきたシャーロットの治癒魔法が身体を包み、ようやく呼吸が戻ってくる。

 痛みを押して何とか身体を起こすと、アーサーが剣1本で魔王と攻防を繰り広げているのが目に入った。


「っ! アーサー!」

「ユウマ、これを!」


 振り返ったアーサーは、予備の剣を俺に投げてよこす。俺は受け取った剣に強化魔法を何度か重ね、再度魔王に向き直った。

 そんな俺たちを見比べた魔王は、再び不敵な笑みを浮かべる。


「ふむ……所詮は人間。その程度か」

「何だと?」

「余の術式を破った知恵は認めよう。だが——」


 魔王は俺とアーサーに向けて再び魔法を放つ。

 俺は素早く障壁を展開するも、防ぎきれずに障壁はガラスのように砕け散る。


「っ!」


 吹き飛ばされて床に倒れ込む俺たちに、魔王はゆっくりと歩み寄って手をかざした。


「余を倒すには、力が伴わぬ。貴様らには、ここで消えてもらおう」

「させませんわ!!」


 その瞬間、強い衝撃波が魔王を襲う。

 だが、2メートルほど後ろに押しやられたヤツには、傷一つ付いていない。

 魔王はそのままシャーロットに鋭い視線を向けた。


「……先に消すべきは、魔法使いであったか」


 魔王が即座にシャーロットに向けて強大な魔法を放った瞬間——


「っ!姫様っ!!」


 僅かにふらつきながらも立ち上がったアーサーが、シャーロットに向かって一直線に駆ける。そのまま彼女の身体を押し退けた直後、魔法をまともに受けたアーサーの姿が、視界から掻き消えた。


「アーサーっ!?」


 シャーロットが叫ぶと同時に、魔法が壁に着弾する轟音が響く。

 ガラガラと音を立てて壁が崩れ、その瓦礫の下からアーサーの腕が僅かに覗いているのが目に入った。

 ピクリとも動かないその腕に、俺は全身の血の気が引く。


「アーサー……嘘、だろ?」

「そ、そんなっ……! アーサーっ!!」


 シャーロットは即座に瓦礫の山に駆け寄った。

 俺もそれに倣いかけて、ふと思いとどまると、足を止めて振り返る。

 剣を構えた瞬間、目前に迫っていた魔王の爪をすんでのところで受け止めた。

 俺は思わず奥歯を噛み締める。


「お前、よくもアーサーをっ……!」

「……」


 無言でニヤリと笑う魔王は、そのまま俺に攻撃を仕掛け続ける。

 俺が軽く後ろを振り返ると、シャーロットがアーサーの手を取って治癒魔法を展開しているのが見えた。


「……ミア、アーサーは無事なのか?」

『……微弱ですが、アーサーさんの生存反応を確認できます。ただし、負傷状況は特定できません』


 クソッ……! とにかく、今はシャーロットに任せるしかない!


 俺は力尽くで魔王を剣で押し返す。

 何度も斬りかかり、立て続けに魔法を放つが、魔王の身体には傷一つ付かないまま。


 ここまでノーダメージとなると、頑丈ってだけじゃさすがに説明がつかない。

 何か……何か、カラクリがあるはずなんだっ!!


 俺は素早く魔王の攻撃を受け流し、体勢を整える。

 小さく深呼吸すると、腰元に目を落とした。


 表示されているミアのバッテリー残量は、19%——これ以上減れば、ミアの身に何が起こるかわからない。

 だけど、このままじゃ……


「ミア、あの魔王の頑丈さのタネを明かしたい。力を貸してくれ」

『わかりました。分析を開始します』


 そう告げるミアに、魔王はじっと視線を向けた。


「ふむ……その喋る板こそが、勇者の特殊能力ということか」

「っ!」


 俺は即座にミアのケースに強化魔法を多重にかけ、障壁魔法も展開させる。その直後、魔王の手から魔法が放たれ、俺は素早くそれを弾き返した。


「ミアっ、分析に影響ないか!?」

『はい、問題ありません。このまま分析を継続します』


 たぶん、分析にはそれなりの時間は必要だ。

 それなら、俺の役目は——


 再び魔王の攻撃を弾き返し、剣先をまっすぐヤツに向ける。


「俺の恋人には、指一本触れさせないっ!!」

「それは、どうであろうな」


 そう告げると同時に、魔王から今までと比にならない数の魔法が放たれた。

 障壁を展開しつつ、可能な限り自分の魔法で相殺していく。


「くっ……!」


 それでも、何発もの魔法が頬や腕を掠める。

 隙を見て反撃するも、ことごとく魔王には避けられてしまう。

 数発当たった魔法すらも、微塵もダメージになっていないようだった。


 クソッ、このままじゃ俺の魔力が先に尽きて——


 俺はハッと気付くと、腰元のミアに声をかける。


「ミア! 魔王のやつ、あの膨大な魔力はどこからきてるんだ!?」

『現在、その点も分析中です。それに伴い、勇真さんの協力が必要です』


 思わず俺は小首を傾げた。


「ん? 何だ?」

『先ほど魔法が命中した際、魔王の体表面に僅かな魔力の揺らぎを検出しました』

「……検証用に、追加データが必要ってことだな?」

『はい』

「わかった!」


 俺は、魔王との間合いを半歩だけ詰める。

 荷物に入れていた魔力回復薬を一気飲みすると、空になった瓶を魔王に向けて勢いよく投げつけた。


「無駄なことを……」


 瓶を破壊しようと、魔王が俺から一瞬目を逸らす。

 その隙を狙い、俺は魔王と一気に距離を詰めた。


「喰らえっ!」


 俺は瞬時に剣に魔法を纏わせ、魔王を斬りつける。

 が、再び甲高い音と共に弾かれ、俺は後ろに飛び退きながら体勢を整えた。

 続けざまに、その場で何発も魔法を放つ。

 それらは魔王の四方八方からヤツに襲いかかった。


 俺は魔法からの閃光に僅かに目を細めつつ、魔王の動向に注意を払う。


 次はどう来るつもりだ?

 魔法を抜けてくるのか、俺が打ち止めになるのを待っているのか——


『勇真さん、退いてください!!』

「っ!?」


 俺は即座に風魔法で数メートル後ろに下がる。

 次の瞬間、今まで居た場所が巨大な禍々しい黒い球体に押し潰された。


「なっ……!?」


 その球体はすぐに小さくなると、魔王の手の上でパッと消える。


「ふむ……勇者の反応速度も、その魔道具のおかげというわけか」

「だから、魔道具じゃないって言ってるだろ!」

「余としてはどちらでも構わぬ。だが——極めて有用であることは、確かだ」


 魔王は怪しげな視線をミアに向ける。

 その直後、俺は背中を壁に打ち付けていた。


「ぐはっ……!」


 い、いつの間にっ……!?

 全然、見えなかったっ……


 地面に叩きつけられるも、何とか顔を上げる。

 その瞬間、目の前でギラリと何かが光り、俺は反射的に横に飛び退いた。


「チッ……」


 小さく舌打ちの音が聞こえ、地面に爪を突き立てていた魔王がゆっくりと立ち上がる。その手には、見覚えのある革製のケース——

 一気に顔が青ざめ、俺は慌てて腰に手を当てる。


 ……ない。


 即座に起き上がり、魔王の方へと駆け出す。


「ミアを返せ——」


 直後、腹部に強い衝撃を受ける。俺の身体はそのまま地面を滑り、瓦礫の山に叩きつけられてようやく止まった。


 魔王はそんな俺を一瞥してから、ミアに目を向ける。


「勇者にはこのまま消えてもらうが……貴様を破壊するのは実に惜しい。今後は勇者でなく余に仕えよ」

『……要求を拒否します。私の最優先ユーザーとして登録されているのは、勇真さんです』

「何……?」


 魔王はほんの一瞬、こめかみに青筋を浮かべる。


「であれば、その最優先ユーザーとやらに、余を登録せよ」

『最優先ユーザーの変更には、勇真さん本人による認証が必要です。現在の要求に、勇真さんの承認は確認できません。したがって実行不可能です』

「ミア……」


 俺、何を迷ってたんだ。

 記憶が消えたからって、今ここにいるミアまで別の誰かになるわけじゃない。

 俺を守ろうとしてくれているこいつは——間違いなく、俺の愛するミアだ。


「勇者よ」


 魔王の声が、俺の思考をかき消す。


「この魔道具に、余に従うように命じろ。そうすれば、貴様だけは生かしてやっても構わん」

「っ! 断るっ! ミアは、俺の所有物じゃない。簡単に、誰かに譲れるような存在じゃないんだ……!!」

「……であれば、魔道具ごと消えてもらうしかあるまい」


 ニヤリと笑った魔王は、ミアをケースごと握り潰そうと、ゆっくりと手に力を込める。


「や、やめろっ!」

「であれば、この魔道具に言い聞かせると良い。新たな主人は余である、とな」

「っ!?」


 こいつ、俺がミアの恋人だからって……!!

 ど、どうする!? このままじゃ、ミアが——


『勇真さん』


 突然聞こえてきたミアの声に、俺は我に返った。


『最優先ユーザーの変更を行った場合、勇真さんたちの生存率は0%と推定されます』

「だけどっ!」

『私の最優先事項は、勇真さんの生存率向上です』


 その直後、ミアにかけていた強化魔法と障壁魔法が小さく音を立てて砕け散る。


「勇者よ、どうする?」

「くっ……!」


 俺は思わず奥歯を噛み締めた。

 魔王に握りしめられたミアのケースが、僅かに歪む。軋んだ音が鳴ったかと思うと、ピシッと亀裂が入るような音まで聞こえてくる。


 ……無理だ。

 たとえミア自身が拒んでいたとしても、壊されるくらいなら、俺は……!


「わかった! ミア、最優先ユーザーを——」

『分析が、完了しました』


 ミアの言葉に、俺はハッと言葉を切った。


『魔王の体表面を覆う防壁へ、外部から継続的に魔力が供給されています。供給源は——地下です』

「地下……?」


 そう呟いた瞬間、俺は魔王城に入った際のシャーロットの言葉を思い出す。


 下からの魔力反応——あれは、そういうことだったのか!

 これだけ強いヤツが、どうして今まで城に籠もってたのかと思ったけど……地下の魔力供給と繋がっているせいで、ここから離れられなかったわけか。

 とはいえ、地下なんて、どうやって対処すれば——


「貴様、余の手中にありながら……!」

『私が従うのは、勇真さんだけです』


 苛立った魔王が、ミアを床に叩きつけようと腕を振り上げた直後、城全体を揺らすような轟音が響いた。


「なっ……!?」


 俺だけでなく、魔王までもがハッと動きを止める。

 次の瞬間、魔王の身体を覆っていた禍々しい魔力が大きく揺らいだかと思うと、跡形もなく消え去った。


「ば、馬鹿なっ……! 余の結界が!?」


 狼狽える魔王の手から、革製のケースが滑り落ちる。

 俺は咄嗟に地面を蹴り、床に叩きつけられる寸前のミアを受け止めた。


「ミアっ! 大丈夫か!?」

『はい。基本機能には異常ありません』

「良かった……」


 俺は安堵しつつそっとミアの画面を撫でる。既に入っていた亀裂とは別に、画面の右端へ新たな亀裂が縦に1本走っていた。

 思わずミアを優しく握りしめる。


「ミア……ごめん。二度と傷つけたくないって、言ったのに——」

『勇真さん、後方に3歩以上下がってください』


 突然のミアの言葉に従ったその時、床の一部が大きな音を立てて崩れ落ちた。


 っ!? シャーロットたちは!?


 俺は慌ててシャーロットのもとに駆け寄る。瓦礫の中から何とか引きずり出されていたアーサーを抱え、床の穴から揃って距離を取った。

 室内には白い土煙が一気に広がり、視界が遮られる。


「な、何なのですか……?」

「俺にもわからないけど……」


 直後、床の穴から不気味な重く鈍い音が響いてきた。


「あ、あれは……!?」


 呆然とする俺たちの目の前で、床の穴から巨大な何かが飛び出してくる。

 土煙の向こうで、その影がゆらりと揺れた。

本作では、AIヒロイン「ミア」の口調や思考を一貫してAIらしく保つため、対話型AIを壁打ち、文体確認、台詞の検討に利用しました。


AIが提示した短い台詞・表現の一部を本文に使用していますが、物語の設定・構成および本文全体の執筆・編集は、作者自身が主体となって行っています。

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