律の戦い
(1対1に持ち込まれた!どうする?)
律は狂気の笑みを浮かべているマエスを見据え、勝つための方法を模索する。
少なくとも魔力は律を圧倒的に超えている。
だが律の【魔法障壁】なら、自然魔力を取り込むことで半永久的に障壁を展開し続けられる。
もちろんマエスの結界で自然魔力の供給は絶たれているが――――
(それについてはもう対策済み!)
律は新機能の【間界魔力供給】を使い、結界の外から魔力を供給する。
その新機能はあらかじめ設定しておいた場所から魔力を供給する場所。
【時空切断】の応用により、時空ごと遮断されていても魔力は届く。
届くまでに時間差はあるが、一度届きさえしてしまえばそれは気にしなくていい。
「【魔法砲撃・屈曲】派生」
律は炎の効果を付与した【魔法砲撃】を召喚し、軌道を自由自在に操る。
「【炎帝】」
そして出来上がった巨大な炎の塊はマエスに標準を合わせ、まるで隕石のように落下していく。
「【銀光】」
それに対応するように放たれたのは光。
照らしたものを余さず破壊する、眩い銀の光。
明るくも恐ろしい銀の光は、同じく光を眩い光を放ち辺りを照らす炎の塊と衝突した。
銀の光は炎の塊を照射し、その炎を無効化していく。
銀の光もまた与えられた魔力が少なくなっていくにつれて弱まっていき、その光の総量は減っていく。
光が弱まり、炎が散る中、両者の魔力は再びぶつかり合う。
「【魔法砲撃・屈曲】派生」
「【錬金・増幅】」
律の光線が何かを形取り、マエスの背後に何かが形成されていく。
「【海神】」
「【銀鐘】」
律の放った光線は海を司る神、【海神】を形取り、その手には先が三又に分かれた槍を持っている。
そしてマエスの背後には銀色の鐘が現れ、辺りに大きな音を響かせる。
海神の槍が伸び、銀の音が響き渡り、その2つは先ほどのように衝突する。
2つはぶつかり合い相殺し合う。
その様子を静かに見つめていたマエスに、ふっと影が差す。
〘【魔法砲撃・屈曲】派生〙
その〘AI〙が放った光線はバチバチと帯電された電気を見せつけるように音を鳴らし、マエスの眼にこれでもかと電気で作られた巨体を映していた。
〘【雷神雷槌!!〙
マエスを叩き潰さんと巨大な雷の槌が迫り、その身体を雷で焼いていく。
だがそんな危機的状況でもマエスは笑みを見せ、ラッキー、といった気楽な雰囲気で言う。
「うん、いいね。ちょうどこの神体を試してみたかったんだ」
マエスは両手にその膨大な魔力を集中させ、全身全霊で【雷神雷槌】を受け止める。
「なかなかに強い魔法だね。でも、まだ足りない」
マエスはその雷を掴み、反射するように〘AI〙に投げ返した。
〘AI〙はその雷を操り槍として自分の手中に収める。
そして供給された自然魔力を上乗せしつつ、マエスに刺すように投げ返した。
それをまた掴もうとしたマエスが、ふと律の方を見る。
そこには光り輝く弓と、番えられた今にも放たれそうな巨大な光の矢があった。
「【天弓】」
律がそうつぶやいた瞬間、マエスの神体に光の矢が突き刺さる。
「へぇ!結構早いんだね!」
マエスはそのスピードに驚きつつも、光の矢を抜こうと身体を水銀に変え―――――られなかった。
(身体が⋯⋯動かない?)
マエスは動かない身体をなんとか動かそうと魔力を送る。
そんなマエスに雷の光が振り注ぐ。
マエスがそちらを見ると、先ほどの雷の槍に自然魔力を溜めている〘AI〙がいた。
(まだ身体は動かない⋯⋯迎撃出来ない!)
マエスは投げられた雷の槍をモロに喰らい、ダメージを負いつつ吹き飛ばされた。
そこに律は2度目の【天弓】を撃ち込む。
超速で放たれた【天弓】はマエスに反応を許さず、命中を果たした。
(これに与えられた属性は恐らく光。だが光に身体を硬直させる効果はないはず。どうなってる?)
マエスが解除方法を探りつつ思考していると、その考えを見抜いたように律が話しかけてくる。
「この【天弓】に与えられた属性は2つ。光と電気だ」
そう、律は【魔法砲撃】のレベルアップにより、2つの属性を同時付与出来るようになっていたのだ。
不可避の光速と確定の硬直時間の代わりにダメージは弱くなり、範囲も矢が当たる範囲にかぎられたが、〘AI〙のサポートをするだけならこれで十分だ。
〘【天弓】〙
さらにマエスに3本目の矢が刺さり結界に縫い付けられたところで、律と〘AI〙が同時に【魔法砲撃】を発動する。
「〘【魔法砲撃・屈曲】派生〙」
律の後ろには人影が、〘AI〙の後ろには塊が生成されていく。
「【雷神雷槌】」
〘【炎帝】〙
雷の槌と炎の塊が混ざり合い、渦となりマエスに突進する。
「〘【雷炎絶禍・極】〙」
それはかつて魔王が律に放った技。
律の中で最強の存在、魔王。
その【雷炎絶禍】を、今この瞬間だけは、律たちが上回っていた。
そしてその技の標的はただ1人、マエスに向かう。
直後雷と炎の渦はマエスに到達し、その身体を飲み込み、蹂躙した。
「!?」
その時律たちの眼が捉えたのは、地獄ともいえるような渦の中で動く影。
「良かったよ」
マエスは小さくつぶやく。
「なんとか同化の準備を完了させられて」
その言葉が律の耳に届くと同時、強大な魔力が辺りを駆け抜けた。
「【錬金・界同】」
マエスがスキルを発動し、律たちを覆っていた銀の帳が形を変える。
そして銀の帳はマエスの身体に集約し、結界が解除される。
その銀の帳を吸い込んだマエスの身体は、地面に溶け込むように消えていった。
律が一瞬不可避に思ったのも束の間、辺りの景色が急に銀色に変わる。
「〘AI〙!何が起きてる!?」
〘分からない!ただ一つ言えるのは、まだ戦いは終わってないってこと!〙
律は〘AI〙の言葉で、気を引き締めなおす。
「とりあえず、魔王と合流―――――――」
そこまで言ったところで、律の言葉が止まる。
〘マエスの魔力を確認!警戒して!〙
〘AI〙が律に注意を促し、【探知】を発動して辺りを探る。
〘どこにも⋯⋯いない?〙
〘AI〙はマエスを見つけられない事実に混乱する。
今辺りに溢れている魔力は間違いなくマエスのものだ。
そしてその魔力は強大で、とても【探知】の範囲外から放てるものとは思えない。
その瞬間、銀に染まった地面が蠢き、銀の棒が家に向かって伸びてくる。
律と〘AI〙はそれを避けるが、本体が見つからないため反撃は出来ない。
〘何が⋯⋯どうなってるんだ?〙
魔王サイド
少し遡り。
まだ律たちが結界の中で戦っていた時。
「【炎砲弾】」
魔王は氷の城に向けて、炎の砲弾を撃ち込み続けていた。
炎に当たっても修復して耐え続ける氷城に魔王は痺れを切らし、直接呼びかける。
「いいかげん出てこい。我慢比べでは俺に勝てぬぞ」
魔王がそう呼びかけても、ウラントたちが出てくる気配はない。
「仕方のない」
魔王は凍った地面に降り立ち、その地を蹴る。
魔王が閃光のように跳び、そのままの勢いで氷の城に突撃する。
魔王にぶつかられた城は辛うじて耐え、冷気によって即座に修復する。
だが魔王の攻撃はここからが本番。
「【借力・結合洗練技】」
魔王は多数から一気にスキルを借力する。
「【時空切断水素火雷爆】」
魔王は水を大量召喚、それを雷炎で焼き尽くすことにより水素爆発を起こし、その爆発に時空切断効果を付与する。
それによって生まれたのは、食らえば大ダメージを負い、燃え、痺れ、時空ごと切断する防御不可の爆撃。
「さて。生きているか?」
宙に浮いた魔王は氷の城だったものを見つめ、そこに声を届かせる。
「【光閃】」
瞬間爆発による土煙を斬り裂いて飛んできたのは、光の斬撃。
常人なら気づかぬ間に斬られているような速度。
だが魔王はそれを当然のように避け、光すらも上回る速度でウステに迫る。
「そろそろ終わらせるか」
魔王がそう言ってウステを気絶させようとした時、地面の色が変わる。
「ほう?」
地面は銀に染まり、次の瞬間には大量の銀の柱が生えてくる。
だが魔王はそれを無効化すると、地面から放たれる魔力を見つめて笑う。
「今日は楽しいことが多いな」
ピンチとも言えるような場面で、魔王はそれでも笑ってみせた。
「次の相手はお前か?」
魔王の前には、マエスが立っていた。




