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異世界召喚されたけど家でだらだらする  作者: マスカット寿司
ミルクの幸せまで

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魔王の戦い

「【賽の目】」


「【残像(プレマデン)】」


 ウステの斬撃に触れた魔王の身体が消失し、ウステの視界から消える。


「後ろだぞ」


「残念ながら、射程内だ」


 ウステの後ろに回った魔王のさらに後ろ、ウラントが魔法を発動する。


「【冷獣】」


 直後魔王を襲うのは氷の獣。


 その牙は触れたものを凍りつかせ、その攻撃には冷気が伴う。


「【炎獣】」


 目には目を。歯には歯を。


 魔王は氷の獣に炎の獣で対抗する。


 召喚された2体の獣はぶつかり合い、溶かし、凍らせる。


 威力はほぼ同じで、魔王は【冷獣】を相殺しきった。


「【巨人剣(ギガントソード)時空切断(ゴルカ)】」


 炎と氷の粉が舞う中、魔王に影が差す。


 魔王が見上げた先にあるのは時空を切断する、巨大な剣。


「せっかくの不意打ち出来るチャンスが台無しだぞ?」


 溜めの長い技に呆れつつも、魔王は笑みを浮かべて手に魔力を集中させる。


「【流星断ち】!!」


 魔王に向かって巨大な剣が振り下ろされ、衝突の余波で辺りには土煙が舞う。


「「!」」


 巨大な剣が折れ、魔力の塵となり消えてゆく。


「いい剣だ。だが、少々力任せ過ぎるな」


 魔王は巨大な剣に手刀で迎撃し、その剣を折っていた。


「さて」


 魔王が身体から魔力を立ち上らせ、固有スキルを発動する。


「俺の番だな」


 そう言うと同時、魔王の身体が光り始める。


「【魔王借力】閃光の魔王、デステイロ・レイデモ」


 直後ウステとウラントの視界から魔王が消える。


 そこに残っているのは僅かな光だけ―――――


「【光速】」


 後ろから聞こえてきた声にいち早く反応したのはウステ。


 【時空切断(ゴルカ)】の剣にて即座に斬りかかる。


 だがその剣より早く、ウステは魔王の拳に吹き飛ばされる。


 閃光の魔王デステイロ・レイデモの【光速】を使った魔王の速度は文字通り光速。


 秒速約30万キロもの速度で動くことが出来る。


 吹き飛んでいくウステに魔王は追いつき、光の速度で連撃を叩き込む。


 ウステは魔王の速度について行けず、反撃どころか防御もままならない。


「【極冷氷槍】」


 光速で動く魔王にようやく気がついたウラントは、触れたものを凍りつかせる槍を飛ばす。


 魔王がそれに気づき対応しようと振り返った瞬間、彼の動きが止まる。


「【(うね)り】」


 ウステの斬撃が蛇のように巻き付き、魔王の身体を拘束する。


「【蜷局(とぐろ)断ち】!」


 魔王の身体に巻き付く斬撃は魔王を締め付け、一瞬だけ魔王の動きを完全に止める。


 直後魔王の身体に氷の槍が突き刺さり、その身体が芯から凍りつく。


「ふむ。今回はそう簡単に解除出来なさそうだ」


 魔王が身体に突き刺さる氷槍を見て言う。


「【時空切断主(ゴルカ・ドレート)派生(ネルマディオン)


 ウステが大剣を構え、技を発動する。


「【微塵】」


 空間を埋め尽くす斬撃が出現し、その直後に斬撃の全てが消える。


「【転移(テレポート)】!」


 消えた斬撃は全て魔王の体内に転移し、その身体を内側から荒らし尽くした。


 さらにウステは魔王の身体に大剣を刺し、技を発動する。


「【光貫】」


 ウステの技により大剣はさらに奥へと突き刺さる。


「【流星断ち】!」


 魔王の身体を両断せんと放たれた2度目の【流星断ち】は、魔王の体内で炸裂する。


「「!?」」


 ウステとウラントが気づいた頃には、魔王は既にマエスが構築した結界の上に立っていた。


「ふむ。よいスキルだ」


 そう言って魔王は性能を確かめるようにスキルを発動する。


「【時空切断主(ゴルカ・ドレート)】」


「!」


 ウステが戦慄する。


 魔王が使ったのはウステの固有スキルだ。


 特殊な手段を使って再現できることはあるが、他人のスキルをコピーするというのは本来相当な条件を満たさないと出来ないこと。


 マエスが【時空切断主(ゴルカ・ドレート)】を使えるのも、ウステが了承した上で時間をかけて実現したものだ。


(いつ条件を満たした⋯⋯?)


 ウステが記憶を探っていると、自身の魔力が大きく増えている事に気づいた。


(魔力が増えている⋯⋯。スキルのコピーと何か関係しているのか⋯⋯?)


 そこでウステは思考を中断する。


 魔王が大剣を創り出し、握ったからだ。


「【至高剣術(ラメ・スプリーノ)】」


 魔王は平然とウステのもう一つの固有スキルを使用し、剣を振るった。


 そしてそれを迎撃するようにウステも同じ技を使用する。


「「【賽の目】」」


 空間は両者の【賽の目】で埋め尽くされ、それぞれの身体に斬撃が走る。


 数秒後斬撃が止み、両者は改めて向き直る。


 お互いの身体には斬撃があるが、魔王の方が斬撃の数は多く、傷跡は深い。


「ふむ。まぁ、技量はそちらの方が上か」


 魔王は自身についた傷を眺めながら言う。


「まぁよい。本命はこっちだ」


 魔王は自分の前に魔法陣を召喚し、【時空切断(ゴルカ)】をかける。


「【魔王借力】【雷炎絶禍】」


 発動したのはかつて律に向かって放った炎と雷の渦。


 あの時と違うのはその渦が空間に影響し時空すら斬り裂くものになっている、ということ。


「【氷球(ボラデ・テロ)】」


 ウラントが手を合わせ、再び開いた時に現れたのは氷の球。


 そこからは強大な魔力が立ち上り、極寒の冷気が漏れる。


「【大氷河】!」


 直後氷の球は一気に広がり、辺りを氷の大地へと染め上げる。


 その氷はまだ止まらず、魔王に迫る。


「くはは。それが奥義か」


 魔王は迫る氷を見て固有スキルを発動する。


「【煉獄】」


 瞬間魔王から炎が広がり、氷の大地に対抗するように辺り一帯を炎に変える。


 そしてぶつかった炎と氷はせめぎ合い、お互いを止める。


 氷の大地は踏み込んだ者を即座に凍りつかせ、炎の大地に踏み込んだ者は全身を炎に包まれる。


 よってお互いはお互いの領域に踏み込めないが、その程度で止められるほど両者は弱くない。


「【氷帝】」


「【炎皇】」


 ウラントは身体に冷気を纏い、魔王は【煉獄】から炎を供給する。


 そしてお互いに片手を上げ、(てのひら)を相手に向ける。


 ウラントの冷気が片手に渦巻き、魔王の炎が手の中で圧縮される。


「【冷氷嵐線(リニア・ベートー)】」


「【煉獄弾砲(キャノン・ポガルトル)】」


 直後放たれた極冷の光線と煉獄の砲撃は氷河と煉獄の境目でぶつかり、大爆発を起こした。


 魔王と炎の大地を冷気が襲い、ウラントと氷の大地を熱波が襲った。


 氷と炎、そして魔力の塵が舞う中、一条の光が飛び出す。


 自身に向かってくる光に魔王は反応し、構築した大剣を構える。


「「【時空切断主(ゴルカ・ドレート)】【激流突き】」」


 飛び込んできたウステと魔王の剣がぶつかり合う。


 火花が散る中先に限界を迎えたのは魔王の剣で、刃が根元から折れる。


「ふむ。やはり剣術では勝てないな」


 言いつつも手に魔力を集中させ、ウステの剣を掴む。


「【賽の目】!」


 その手に斬撃が走り、次の瞬間には指が切り落とされる。


 その隙にウステは剣を引き、剣を斜めに斬り下ろす。


「【閃光断ち】」


 防ぐのが間に合わなかった魔王の身体に剣閃が浮かぶ。


 だが切断されるには至らず、魔王は笑みを見せて反撃する。


「【炎手(マノベ)】」


 魔王の手に炎が宿り、再び振り下ろされたウステの剣を掴む。


 だがウステの剣は燃えず、光を放って押し返してきた。


「剣は相当強いようだな。だが」


 魔王は剣を封じつつ接近する。


本体(こっち)はどうだ?」


 魔王はウステの腹に炎の拳を食らわせる。


「ぐっ!」


 ウステの腹に魔王の拳がめり込み、文字通りぶっ飛ばされる。


 だがそれでも剣は離さず、魔王に剣を奪われることだけは回避した。


「その剣がそんなに大事か?」


 魔王は一瞬光の速度を出し、吹き飛ぶウステに回り込む。


「【氷槍】」


 魔王が剣を奪おうとすると、ウラントが氷の槍を持って突っ込んでくる。


 魔王はそれを受け流し、今度はウラントに接近する。


「【転移(テレポート)】」


 そこでウステが【転移(テレポート)】を発動し、ウラントを連れて氷の大地へと撤退する。


「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」


 ウステもウラントも満身創痍。


 これ以上戦うのは難しいだろう。


「ここまでか?」


 魔王が煉獄と氷河の境目に立ちそう問う。


「まだだ」


 それに答えたのはウラント。


 そしてウラントの身体から今までとは一線を画す魔力が漏れる。


「【氷城(ヒュガンテ)】」


 直後2人の後ろに氷の城が現れ、煉獄と氷河の境目には氷の城壁が作られる。


 魔王の前には巨大な扉が現れ、氷河への入り口を演出する。


 魔王は閉じられた扉をこじ開ける。


 すると内から冷気が噴き出し、煉獄を少し凍らせる。


「ほう?」


 先ほどよりも強い冷気に魔王は笑みを見せ、堂々と氷河に踏み入る。


 扉が閉まり、即座に魔王を冷気が襲うが魔王は次のスキルで全てを防ぐ。


「【魔王城顕現】」


 魔王の背後に魔王城が建設され、魔王はその頂上に立つ。


 そして遥か前方にある氷の城を見据えて言った。


「さて、まずはそこから引きずり出すところからだな」


 魔王は顔に笑みを浮かべ、両者の戦いは激しさを増していくこととなる。

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