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異世界召喚されたけど家でだらだらする  作者: マスカット寿司
ミルクの幸せまで

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42/45

こいつで分身ってマジか⋯⋯

 律と〘AI〙の放った【魔法砲撃】がマエスの【(シルバー・)(ヴォルテクス)】に飲み込まれ無効化される。


 光線を飲み込んだ銀渦の勢いは衰えるどころか増え続け、律と〘AI〙の操るロボに向かって突進してきた。


〘避けた方がいい!この敵は空間に干渉できる!下手したら【魔法障壁】を破ってくるかもしれない!〙


 〘AI〙の緊迫した声を聞き、律も急いで銀渦を避ける。


「ありゃりゃ。ざんねん、バレちゃったか」


 〘AI〙の予想通り時空切断効果を付けていたマエスは、作戦の失敗にため息をついた。


「ま、次は当てるよ」


 そう言ってマエスは【(シルバー・)(ヴォルテクス)】を発動し、律に当てにかかる。


「【錬金・蜘蛛の罠(プラン・パッパラー)】」


 続くマエスのスキルで、律の家は銀の糸に囲まれる。


(ロボを縮小させて避けれなくもないが⋯⋯)


 ロボを縮小させればその分スピードは遅くなる。


 巨人と小人じゃ一歩の大きさが違い、巨人の方が速くなる。それと同じだ。


(なら⋯⋯!)


 律は家の機能を思い出し、発動する。


「【幻影の家(マカサデハウス)】」


「!」


 直後マエスの眼に映る縮小されたロボが揺らぎ、分身する。


 そしてそれは別々の方向に動き始め、マエスを翻弄し始めた。


 試しに一つロボを飲み込むと、そのロボは煙となり霧散する。


 マエスは表情を険しくする。

 まだまだ家は大量に残っているからだ。


「なら、全部飲み込むまでだよ!」


〘させないよ〙


 マエスが銀渦で全てを飲み込もうとするが〘AI〙がその隙を突いてロボを巨大化させ、巨大な剣で攻撃する。


「めんどくさいね!」


 マエスはその剣を魔力の集中させた手で受け止め、そのまま水銀でロボを飲み込もうとする。


 〘AI〙もロボの体表から光線を射出し、水銀を弾き飛ばす。


「属性付与、【時空切断(ゴルカ)】!」


 〘AI〙が稼いだ時間で律が【魔法砲撃】を溜め、【時空切断】の効果を付与しつつ剣に纏わせる。


 そのまま銀渦に向かって剣を振り下ろし、銀渦を両断した。


 マエスは破壊された銀渦をちらりと見て、すぐに目の前の〘AI〙()に向き直る。


 〘AI〙は【魔法砲撃】を剣に纏わせ、マエスに向かって振り下ろす。


 マエスは水銀を大量召喚しつつ足元の水銀に潜り、瞬間的に〘AI〙から離れた。


「【(シルバー・)―――――――」


「させない!」


 再び【(シルバー・)(ヴォルテクス)】を発動しようとしたマエスに、律からの光線が飛んでくる。


 それはダメージよりもスキルのキャンセルを見込んだものであり、その一点においては十分すぎるほど役割を果たしたと言えるだろう。


〘ナイス!〙


 マエスに隙が出来たのを見て、〘AI〙は一気に距離を詰める。


〘くらえっ!〙


 〘AI〙は【魔法砲撃】を纏わせた剣を振り下ろし、マエスに大ダメージを与えようとする。


「ちっ!」


 マエスが水銀で受け流しつつ防ごうとするが、流石に威力を消しきれず少ないとは言えないダメージを受ける。


「くっ!」


 〘AI〙はここぞとばかりに畳みかけ、光線と剣にてマエスを攻め立てる。


 マエスは剣と光線をいなしつつ水銀を大量召喚し、なんとかスキル発動の時間を作り出す。


 とはいえ、【(シルバー・)(ヴォルテクス)】が発動出来るほどの時間はない。


 そこでマエスが使ったスキルは―――――――



「【銀体(エルト・プラティア)】」



 マエスがスキルを発動した瞬間、〘AI〙の操るロボが吹き飛んだ。


「〘!?〙」


 先ほどまでマエスがいた場所。ロボが剣を振り下ろそうとしていた場所。


 そこには、数秒前の彼の魔力を凌駕するほどに強化されたマエスがいた。


「うん、いいね、この身体は」


 そういうマエスの身体は、もはや水銀そのものに変わっている。


「じゃ、やろっか」


 マエスがそうつぶやいた途端、彼の魔力が一気に跳ね上がり、水銀が律の視界を覆った。


 〘AI〙は律操るロボの前に立ち、剣で水銀を防ぐ。


 すると剣を覆っていた【魔法障壁】が溶けてなくなり、ロボ本体すら溶け始めた。


〘これに触れたらアウトだ!絶対に触らないようにして!〙


 〘AI〙がそう言い、ロボは完全に溶け落ちる。


 律はロボを縮小させ、その分【飛行】のレベルを上げて水銀を避ける。


 このような隙間のない攻撃だと、相手に幻影を見せて惑わしても意味がないのだ。


 なんとか水銀を避けきったが、マエスは【魔法障壁】を溶かす水銀に包まれていて攻撃が出来ない。


「属性付与、【時空切断(ゴルカ)】!」


 律が時空切断を付与した斬撃を飛ばすが、それすらも水銀に溶かし尽くされる。


(どうする?どうすればこの状況を打開出来る?)


 律は現在の状況を鑑みて打開策を模索する。


(【魔法砲撃】は通じない。手持ちの機能であれを突破出来るものは恐らくない。魔王を呼ぶか?いや、【時空遮断】の効果で助けに来れる確率は低い⋯⋯ってかそもそも通信も出来ないか)


 律が考えていると、〘AI〙の声が聞こえてきた。


〘とりあえずボクの身体として使える複製(コピー)を召喚して!時間稼ぎくらいは出来る!〙


 〘AI〙の言葉を聞いて律は複製(コピー)を召喚し、操作を〘AI〙に任せる。


〘ロボに変形させられるだけの時間はないけど⋯⋯出来る限りやってみる!〙


 〘AI〙はそう言って水銀へと近づいていった。








〘AI〙サイド


〘さて、大口叩いちゃったけど、どれだけやれるか⋯⋯〙


 〘AI〙は水銀を避けつつ、マエスへと近づいていく。


 ある程度近づいたところで、一気に水銀が襲ってきた。


 スピードに緩急をつけたり、海賊船型の家を縮小させたりする事でなんとか避ける。


 それでも避けきれないところは部分的に【魔法障壁】を集中させる事で耐える。


 律に話しかけたりは出来ない。

 律を集中させたいし、性能的に水銀の対処をするだけで精一杯なのだ。


〘っと!〙


 水銀の膜の中から急にマエスが飛び出してきて、危うく海賊船を溶かされそうになる。


 不意打ちが失敗し、また水銀の中に潜っていくマエスを、〘AI〙はじっと見つめる。


 恐らく今攻撃してもマエスは倒しきれない。


 ならば少しでも律にマエスを倒す手がかりを伝えたかったのだ。


〘【探知(サーチ)】、一点集中!〙


 何か対策をしているのか普段マエスを【探知(サーチ)】では捉えられないのだが、一点集中させることにより〘AI〙はその身体の構造まで覗き見る。


〘なんだあれ⋯⋯?〙


 〘AI〙が捉えたのは、マエスの中にある球体。


 他の部分に比べて魔力が強く、どくんどくんと脈打っている。


〘なんか弱点っぽいな⋯⋯〙


 〘AI〙はもっと観察するため、マエスに対して光線を撃ってみる。


 正確に言えば、"弱点っぽい場所"に対して、だ。


 するとマエスを覆っている膜に到達する前に別の水銀が割り込み、光線を無効化する。


 〘AI〙が光線を撃ちながら耐久していると、マエスが飛び出して攻撃してきた。


 〘AI〙はそれをすんでのところで避け、すれ違いざまに光線を撃ち込む。


 弱点っぽい場所に対して撃ち込まれた光線はまたも割り込んできた水銀に阻まれ、マエスを傷つけるに至らない。


〘いや明らかに弱点でしょあれ〙


 〘AI〙は律にその事を伝えるため、音声を飛ばす。


 ただマエスの攻撃を避けながらそれをするだけの性能(スペック)は今の〘AI〙にはないため、マエスに倒される形になる。


〘ま、別にボクが倒されてもなんも問題ないんだけどね〙








律サイド


 律が何か打開策がないかと考えていると、〘AI〙からの音声が飛んできた。


〘弱点っぽい場所見つけたよ!【探知(サーチ)】の一点集中で見れる!〙


 その報せはまさに律が待ち望んでいたものだった。


 律は早速【探知(サーチ)】の一点集中でマエスを見てみる。


 すると、どくんどくんと脈打つ球体が視えた。


「何か動いてるやつか?」


〘そうそうそれそれ〙


 〘AI〙が肯定してくれるが、また新しい問題が生まれる。


(あれどうやって攻撃すればいいんだ⋯⋯?)


 普通にやっても割り込む水銀に阻まれるし、なんとか隙を突いて当てたとしても水銀の膜に溶かされる。


(こんな時魔王ならどうする?コンドならどうする?ウステならどう⋯⋯)


 必死に思考していた律に一つの閃きが走る。


(ウステなら⋯⋯?)


 頭に走る閃きに従って、律は準備を始める。


 【魔法砲撃】のための魔法陣を展開し、魔力を溜め始める。


 もちろん付与する効果は【時空切断(ゴルカ)】だ。


 込められた魔力が高まっていく魔法陣。


 その魔法陣は普通のものではなく、二重に重なったものだ。


「属性付与、【時空切断(ゴルカ)派生(ネルマディオン)


 二重の魔法陣は重なり合い回転を始め、溜められた魔力が放出されていく。


「【転移(テレポート)】」


 直後マエスの体内で光線が煌めき、その弱点、もとい核が貫かれ水銀の身体が崩壊を始めた。


 律が撃った【魔法砲撃】、それはコンドが召喚した兵士の再現だった。


 ワープする斬撃。


 それを【魔法砲撃】の光線に当てはめたのだ。


「はぁ⋯⋯」


 強敵を倒し、律は大きなため息をつく。


「これで分身ってマジかよ⋯⋯」


 崩壊を始める水銀の世界の塵を見ながら、律は本格的に魔王を呼ぶことを考え始めるのだった。

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