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異世界召喚されたけど家でだらだらする  作者: マスカット寿司
ミルクの幸せまで

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表裏一体⋯⋯と、〘AI〙⋯⋯?

「【表裏一体(ドスガラ・フェナニタ)】」


 そう言った兵士の剣は消え、代わりに手元には杖が現れた。


(攻撃が防がれた⋯⋯ってか、杖?)


 その変化にいち早く気付いた律はロボを操作し、兵士から離れる。


 【表裏一体(ドスガラ・フェナニタ)】は、兵士の役職を反転させる【至高の一体(デモ・デフィニデバ)】専用スキル。


 先ほどまで剣を持ち前衛役職だった兵士は一転、杖持ちの魔法使いとなった。


(剣は使えないから斬撃はもうない。はず)


 斬撃は使えないと言っても、油断は出来ない。


 遠距離攻撃なら斬撃よりも魔法だ。

 空を飛んだとしても魔法なら攻撃が届くだろう。


 「【脚力増強(ピエルラ・リランセ)】【腕力増強(フォエル・リランセ)】」


 兵士は自らに強化魔法をかけ、運動神経を増強させる。


「【表裏一体(ドスガラ・フェナニタ)】」


 そして再び剣を持った前衛に戻り、空のロボに向かって勢い良く向かってきた。


「はぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」


 律が驚愕の声を上げるのも束の間、兵士はスキルを使用する。


「【時空切断主(ゴルカ・ドレート)】」


(まずっ!)


 律は咄嗟に【魔法砲撃】による斬撃を放ち、兵士を拒絶する。


 兵士は剣を構え、空中でその斬撃を受け止める。


 ギギギギギ、という音が鳴る中、兵士は強化された肉体でもってその斬撃を華麗に受け流した。


(だが勢いは落とせた!)


 律の狙いはもとよりロボのもとに辿り着かせない事。


 兵士の勢いはもう十分落ちており、ロボがいる空まで到達する事はないだろう。


 と、思っていた律の耳が、スキル発動時の発声を捉える。


「【表裏一体(ドスガラ・フェナニタ)】」


 兵士は再びスキルを発動、魔法使いになると同時に魔法を行使する。


「【ウィンドウバースト】」


 直後、兵士の足元で風の爆発が起きる。


 その勢いで兵士は飛び上がり、ロボの頭上をとる。


「【表裏一体(ドスガラ・フェナニタ)】【時空切断主(ゴルカ・ドレート)】」


 スキル発動と同時に振り下ろされた兵士の剣は、ロボを真っ二つに両断した。


「っぶな!?」


 律は剣に切断される直前に【転移引っ越し(コピー・ワープ)】を使用し、ギリギリで兵士の攻撃を回避していた。


 ロボを両断し、兵士はそのまま落ちて地面に着地する。


「【表裏一体(ドスガラ・フェナニタ)】」


 兵士は魔法使いへと変わり、杖を構える。


「【時空切断主(ゴルカ・ドレート)】」


 兵士の杖が、金色(こんじき)に輝き始める。


(【時空切断主(ゴルカ・ドレート)】⋯⋯魔法使いでも使えたのか!?)


 【時空切断主(ゴルカ・ドレート)】は自分の攻撃に時空切断効果を付与するスキル。


 別に魔法でも使えない事はない。


 驚く律を置いて、兵士は大量の魔法を使い始める。


「【魔法雨(ユビア・マルカ)】【自動攻撃魔法陣(フィルゴロ・マフィト)】【嵐の中心(エレフェント)】」


 兵士の魔法により、辺りは一気に地獄へと変わる。


 魔法による攻撃性の雨が降り、下からは自動攻撃の魔力が飛び、雨とともに雷も降ってくる。


 しかもその全てに時空切断の効果が付与されているのだ。


(地獄かよ)


 ウステはまだ良かったのかも知れない。


 彼は剣士だったから手数が少なくて済んだ。


 だが魔法使いはだめだ。


 とんでもない手数と、一撃一撃が【魔法障壁】を破ってくる特殊効果。


 律は確信する。


(これ絶対⋯⋯魔法使いに持たせちゃだめなやつだ)





 兵士が本格的に魔法で攻撃を始めてから数分。


 律は【飛行】にて逃げ回っていた。


 ある程度は【魔法反射】で防げるが、このレベルの手数だと流石に押し負ける。


 せめてロボにチェンジ出来ればマシだが、そんな暇すらないのだ。


(くっそ!何かないか⋯⋯)


 律はウィンドウを開き、購入可能な機能を表示する。


 ウィンドウを高速でスクロールし続ける律の目に、一つの機能が止まった。


「【人格付与】⋯⋯?」


 律は効果を確認しようとするが、そのタイミングで家が大きく揺れる。


 兵士の攻撃が直撃したのだ。


 あと一撃でも食らえば【魔法障壁】は破壊されるかも知れない。


 戦場に荒れ狂う魔法のせいで、効果をまともに確認することすらできない。


(こうなりゃ一か八かだ!)


 律は購入ボタンを押し、すぐにそのスキルを発動した。


〘やぁ!初めまして!僕は古き設定サポート音声くんの友達、《ノーネーム:名前を決めてください》だよ!〙


 直後脳内に響いた声は、律を唖然とさせるには十分なものだった。



ドォォォォォーーーーーン!!!



 その時【魔法障壁】に兵士の攻撃が命中し、その衝撃で律の意識は引き戻される。


 律は【飛行】を再開し、必死に攻撃を避けながら付与された"人格"に話しかける。


「お前は何をしてくれるんだ!?」


 家を操作しながら話しているため、律の声がうわずってしまうのは仕方のない事だろう。


〘家に関することならなんでも出来るよ!例えばこの攻撃を避けさせるとか!あと名前決めt〙


「マジか!」


 名前うんぬんを無視した律の表情が一気に明るくなる。


「じゃあ早速頼む!」


〘了解だよ!あと名前きm〙


 直後、家の自動運転が始まった。


 自動運転と言っても目的地を設定するものとは全く異なり、しっかりと自分の意思をもって攻撃を避けている。


 攻撃の回避が自動になって余裕が出てきた律は、【魔法砲撃】にて兵士を攻撃し始める。


「⋯⋯」


 一方兵士は、律の様子が変わった事に気づいていた。


 先ほどのような不規則に動く、半分運任せの避け方とは違う。


 攻撃を認識し、それに対する最善手を常に打ち続けている。


 兵士がほんの少し驚いたのも束の間、光線が飛んできた。


「【マジックシールド】」


 兵士は自分の前に障壁を展開し、【魔法砲撃】を防ぐ。


 この障壁もロボの攻撃を防いだだけあって相当硬い。


 流石に律の【魔法障壁】ほどは硬くないが、【魔法砲撃】を防ぐくらいなら造作もない。


 とはいえ、兵士にとって状況は悪くなってきている。


 そんな状況を打開するべく、兵士は一つのスキルを使用した。


「【台風の目(オッド・レイビフォン)】」


 直後、兵士を中心とした台風が現れる。


 それによって生まれた鋭い風は辺りを吹き荒れ、律、及びその家を操作している〘ノーネーム〙に撤退を余儀なくされた。


 いくら家の動きが洗練されていても、全域に作用する広範囲攻撃を避ける事は出来ない。


 これが兵士の策、題して【ゴリ押し】であった。


「【脚力増強(ピエルラ・リランセ)】【腕力増強(フォエル・リランセ)】」


 兵士は自分の運動神経を向上させ、全力で跳ぶ。


 魔法使いのモードとはいえ、魔法で運動神経を強化すれば空を飛んでいる家に近づく事くらいは出来る。


 そのうえ。


「【ウィンドウバースト】」


 兵士の足元で風が炸裂し、その反動で一気に家に近づく。


 律は近づいてくる兵士に向かって【魔法砲撃】を放ち、接近を拒絶する。


 ところが兵士の台風はそれすらも巻き込み、台風の回転を利用して光線の軌道を律へと変える。


 結果光線は【魔法障壁】を破る風を纏い、家へと逆戻りしてきた。


(ちっ。このままやってちゃジリ貧だ。なら⋯⋯)


 律は〘ノーネーム〙に声をかける。


「名前決めたぞ!」


〘ホント!?〙


 〘ノーネーム〙が嬉しそうに返答する。


「お前の名前は、〘AI〙だ!」


 律の心は余裕がなかった。


 だがそんな適当な名前でも〘ノーネーム〙―――〘AI〙は喜んだ。


〘ありがとう!僕は今日から〘AI〙だ!〙


「あともう一つ仕事頼めるか!」


 明らかに声が生き生きとし始めた〘AI〙に律はこれ幸いと頼み事をする。


〘いいよ!なんでも言って!〙


「ああ。お前にやってほしいのは―――――――」


 律が〘AI〙に頼みたい事を共有する。


〘了解したよ!出来るかは分からないけどやってみる!〙


 頼み事を聞いた〘AI〙はやる気に燃えた目(?)を輝かせ、台風の中へと突っ込んで行った。





 一方、兵士サイド。


 兵士は【ウィンドウバースト】を連発し、少しづつ家に近づいていた。


 家も合わせて後退するため速度は遅いが、確実に近づいている。


 兵士がもう一度【ウィンドウバースト】を使おうとした時。


〘行くぞぉー!!〙


 そんな声を上げながら、家が突っ込んできた。


「⋯⋯?」


 兵士は少し困惑したが、向かってくるなら都合がいいとばかりに【ウィンドウバースト】を発動し、台風圏内に家を捉える。


 全方位から攻撃する突風は2重に張られた【魔法障壁】を破り、家を破壊した。


 中に律はいない。


 だがその代わりとばかりに〘AI〙が声を上げていた。


〘ぐあ⋯⋯僕は⋯⋯〙


 〘AI〙が苦しそうな声を上げた瞬間、中からもう一つの家が現れる。


 突風はいまだ止まず、その家まで破壊した。


〘何度でも⋯⋯〙


 するとまた中から家が現れ、魔力の溜められた砲口を兵士へと向ける。


〘蘇る!〙


 台風の風が間に合わず、至近距離で光線が撃ち出される。


「【マジックシールド】」


 その光線は無慈悲にも展開された障壁によって阻まれた。


 そして家を突風が襲い、破壊される。


 もう中に家はない。


 兵士の耳が再び〘AI〙の声を捉えたのは、その時だった。


〘言ったでしょうっ!〙


 兵士がばっと振り返った時にはもう既に光線が至近距離まで迫っていた。


〘僕は何度でも蘇ると!〙


 その光線は兵士の身体を貫き、律たちに勝利をもたらしたのだった。


〘勝ったぞーっ!〙


 台風と魔法の雨が止んでいく中、〘AI〙の声が響き渡った。

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