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異世界召喚されたけど家でだらだらする  作者: マスカット寿司
ミルクの幸せまで

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到達点

 至高の一体(デモ・デフィニデバ)


 それは、【軍勢召喚(デモニカ)】を長年使い続けてきたコンドの最終奥義(到達点)


 【一騎当千(デモ・コントラミ)】を遥かに超える性能を持つたった一体の兵士を召喚するスキル。


 その分代償は重く、現在ある全魔力を消費、その上最低でも1ヶ月は魔力が一切回復せず身体にも損傷(ダメージ)を負う。


 魔力切れと身体のダメージにより、【至高の一体(デモ・デフィニデバ)】を召喚したコンドは気を失った。


 バタリと前に倒れ込むコンドと、それを守るように立ちはだかる一体の兵士。


 今、戦いの火蓋は切って落とされた。




 律は【魔法砲撃】を兵士ごとコンドに撃ち込み、それと同時に【魔法障壁】で相手を閉じ込める。


 当然のように光線を弾いた兵士は剣を上段に構え、一気に振り下ろす。


 直前、律は【転移引っ越し(コピー・ワープ)】を使用し別の場所へと転移する。


 【魔法障壁】で守られていたはずのロボに剣閃が走り、その巨体が一刀両断される。


「【時空切断主(ゴルカ・ドレート)派生(ネルマディオン)


(派生技!?)


 律が驚愕し、その隙に兵士はスキルを発動する。


「【転移(テレポート)】」


 使ったのはウステと同じ【転移(テレポート)】。


 だがおかしい。


 兵士はどこにも移動しておらず、先ほどと同じ位置に立っている。



 剣を振り終えた姿勢で。



「!」


 律は何かを感じ取り、即座に【転移引っ越し(コピー・ワープ)】を使用する。


 また別の複製(コピー)に転移した律たち。


 直後、今の今まで律たちがいた場所に剣閃が走り、家ごと斬り刻まれる。


 そう、兵士が使った【転移(テレポート)】の対象は、自分が放った斬撃。


 それを律たちの位置へ直接テレポートさせた。


 本来【転移(テレポート)】でも【魔法障壁】の中には入ってこれないはずだが、対象を斬撃だけに絞り【時空切断主(ゴルカ・ドレート)】も合わせることで無効化したのだろう。


「【時空切断主(ゴルカ・ドレート)派生(ネルマディオン)


 兵士がもう一度同じ攻撃をしようとする。


(させるかよ!)


 律は阻止するため光線を撃ち込むが、直前で【転移(テレポート)】が発動されてしまう。


 律は即座に【転移引っ越し(コピー・ワープ)】しようとするが、何かおかしい事に気付く。


(斬撃が⋯⋯来ない?)


 律が先ほど光線を当てたところを見ると、ちょうど土煙が晴れるところだった。


⋯⋯⋯⋯兵士がいない。


 兵士は別の場所へとテレポートしており、それで斬撃をテレポートさせる余裕がなくなったのだろう。


(ん?)


 律は感じた違和感を見逃さず、重要な情報までの糸口を発見する。


(なんでわざわざ【転移(テレポート)】を使って避けた?避けるだけなら普通に移動すればいいし、あの兵士なら弾く事だって出来たはず。ならなんで?)


 律はさらに思考を巡らせ、やがて一つの結論にたどり着いた。


(まさかあいつは⋯⋯【転移(テレポート)】を使う直前、移動が一切出来ないのか?)


 律は兵士の動きを思い出し、思考を加速させる。


(それだけじゃない。剣を振るって光線を弾く事も出来ないんだ!)


 律の下した結論には穴がある。


 それは、転移してくる斬撃の発生方法だ。


 本当に剣を振るえないのなら【転移(テレポート)】で送る斬撃も発生させられず、無駄になってしまう。


 ではなぜ斬撃を発生させられるのか?


 それは【転移(テレポート)】の原理にある。


 【時空切断主(ゴルカ・ドレート)】を発動した者の持つ剣は時空を斬り裂けるようになり、それによる空間飛ばし、つまり【転移(テレポート)】が可能になる。


 兵士は【転移(テレポート)】発動の瞬間に2重の斬撃を放っており、片方は【転移(テレポート)】開通、もう片方は攻撃に使用されている。


 これを一瞬で行っている兵士には高負荷がかかり、その副作用で剣を振るう事が出来なくなっているのだ。


 現在の律にこれを知る手段はない。


 だが、結果的に律はこの戦いにおいて正しい情報を手にした。


(【転移(テレポート)】を使う瞬間、あの兵士には確かな隙が出来る!)


「【時空切断主(ゴルカ・ドレート)派生(ネルマディオン)


 兵士が【転移(テレポート)】を使い斬撃を飛ばそうとする。


 律はそこに【魔法砲撃】を撃ち込み、兵士にダメージを与えに行く。


 光線が迫る中、兵士は【転移(テレポート)】の対象を斬撃から自分自身に変更、光線を回避する。


(どこ行った?)


 辺りを見回す律。その上空。


 そこにテレポートした兵士は【時空切断主(ゴルカ・ドレート)】を発動、落下と同時に剣を振り下ろした。


 そのさらに上空。


 落ちてくる兵士に気付いた律は複製(コピー)を召喚し、【転移引っ越し(コピー・ワープ)】を使いそこに転移した。


 律が転移した複製(コピー)の形。

 それは球体。ロボの中心に位置する、コアの形をしていた。


「⋯⋯」


 剣を振り終え家を両断した兵士。


 その上空で再び形作られるロボを見て、兵士は大きく跳んだ。


 まだロボは完成されていない。


 その隙にコアごと律たちを叩き切るつもりなのだ。


 上空へと勢い良く向かう兵士。


 それを妨げたのは【魔法砲撃】による、大量の光線だった。


 まだロボ本体が完成していないとはいえ、全ての部品はれっきとした複製(コピー)


 その全てが【魔法砲撃】を放てるのは、当然の道理だ。


 兵士は剣を振るって光線を防ぎ、斬り、受け流すが、その度に勢いは弱まっていく。


 全ての光線を捌き切ったころには、その勢いは大分弱まっていた。


 それでも上昇を続ける兵士の身体はやがて臨界点に達し、降下を始める。


 直前兵士は腕を伸ばし、【魔法障壁】だけでも破ろうと剣を振るう。


 だがその剣は僅かに届かず、兵士は重力に従い落ちていく。


 その身体を光線が襲い、ただでは落とさせてくれない。


 兵士は降ってくる光線を捌きつつ地面を確認し、最後には見事な着地を見せた。


「【時空切断主(ゴルカ・ドレート)派生(ネルマディオン)


 また派生技を使おうとする兵士を、律は【魔法砲撃】にて攻撃する。


 だが今回使われた派生技は律の予想とは裏腹に、【転移(テレポート)】とは違うものだった。


「【時空斬撃(バキア・パルト)】」


 突如飛ぶのは斬撃。


 時空ごと全てを両断する、金色(こんじき)の刃であった。


(斬撃!?)


 律は予想外の動きに困惑するが、ロボを操作してなんとか回避した。


(やばいかもな)


 そう思うのは借金取りであり、律と行動を共にするレイト。


 レイトがそう思うのも妥当な評価だった。


 兵士が斬撃を飛ばし始めたことにより、律たちの遠距離攻撃というアドバンテージは消え去った。


 先ほどまでは空から【魔法砲撃】を撃ち続けていれば【転移(テレポート)】を防げ、一方的に攻撃できる状況だった。


 だが相手も遠距離攻撃、それも【魔法障壁】を破りうる攻撃をしてくるなら、新たな策を講じなくてはならない。


「おい、律。少し作戦会議を……」


 そう言いかけたレイトの言葉が止まる。


 律が何かを閃いたかのような、楽しそうな表情を浮かべていたからだ。


「斬撃……転移(テレポート)……」


 そう呟いて、律はその顔に笑みを浮かべる。


 次の瞬間、ロボが動き出す。


 その構えは兵士と同じ、斬撃を飛ばす前の構えだった。


 直後、兵士が見たのは斬撃。


 たった一つの、巨大な斬撃だった。


「【時空斬撃(バキア・パルト)】」


 その巨大な斬撃に、兵士も斬撃でもって応じる。


 放たれた多数の斬撃は巨大な斬撃とぶつかり合い、その全てが巨大な斬撃に吸収された。


「……」


 兵士は驚くでも悔しがるでもなく、ただ淡々と己の剣で受け止める。


 ぶつかり合った兵士と斬撃は、お互いに火花を散らしながらお互いを相殺していく。


 やがて斬撃は消え去り、残ったのは兵士だけとなった。


 【魔法砲撃】を圧縮した斬撃をなんとか凌ぎきり、兵士は辺りを見回す。


 そんな兵士と、後ろから不意打ちしようと待機していた複製(コピー)の目(?)が合った。


 兵士は片手で剣を振るい、一振りで複製(コピー)を両断する。


 その中から、光が漏れた。


「!」


 両断された複製(コピー)から飛び出してきたのは光線。


 【魔法砲撃】による、光線だった。


 律は【転移引っ越し(コピー・ワープ)】のレベルを上げ、自らの魔力を転移させていたのだ。


 兵士は咄嗟に避けるがその身体に僅かに(かす)ってしまう。


 瞬間、兵士の動きが止まる。


 光線に付与された効果は電気。


 動けなくなった一瞬の隙を突き、ロボが落ちてくる。


 ロボはそのままの勢いで兵士に迫り、踏みつぶさんと足を振り下ろした。



ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!



 直後鳴り響いた轟音は、当たれば致命傷どころか即死までもっていけるであろう程の威力を物語っていた。


 そう、‘‘当たれば‘‘だ。


「!?」


 兵士を守ったのは障壁。


 魔法によって創られた障壁だった。


(魔法兵はいないのに!どうして!?)


 律は顔中に衝撃といった表情を浮かべる。


「【表裏一体(ドスガラ・フェナニタ)】」


 そうスキル名を呟いた兵士の手には、剣の代わりに杖が握られていた。

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