魔法兵と一騎当千
「さあ。どうやって対処する?」
ロボの前に並べられた大量の魔法兵。
それを守るように佇む一体の兵士
それにどう対処するのか、コンドは期待を込めた目で見ている。
(ただ剣を振るっても、【一騎当千】に止められるのがオチだ)
律は上空に複製を召喚。
(なら)
そしてロボの手と召喚した複製の砲口に魔力をこめる。
自分の魔力を使い溜めをスキップ、光線が放たれる。
今回はスピード重視。目にも止まらない早さで大量の光線が戦場を走る。
「【マジックバリア】」
その光線は、突如現れた障壁に防がれた。
大量の魔法兵が障壁を召喚したのだ。
だが、一本の光線がその大量の障壁を抜け、コンドの方へ向かっている。
スピード重視の光線はコンドの反応よりも早く、対応しようのない速度で着弾する。
はずだった。
スピード重視の光線よりなお早く、閃光のようなスピードで走る影。
キィィィィィィィィン
響き渡る高音。
それは、一体の兵士が光線を弾いた証。
一騎当千は光線を超えるスピードで走り、コンドを守り抜いた。
「マジか!」
これでコンドを倒せるとも思っていなかったが、流石に一騎当千が間に合う事にあうことは想定外。
律が思っていたよりも一騎当千の速度は高かったようだ。
(だが!これも最大限利用させてもらう!)
一騎当千はコンドの前。
つまり今なら剣を止める事の出来る兵はいない。
「コンド本体は無理だが、魔法兵は倒させてもらうぞ」
振り下ろされた剣は魔法で作られた障壁を軽々と破り、大量の魔法兵を一気に倒し―――――――
キィィィィィィィン
再び響き渡る高音。
一騎当千はまたも間に合い、魔法兵を守ったのだ。
(いや、これならコンドを攻撃出来る!)
律は自分の魔力で溜めをスキップし、スピード重視の光線をコンドに向かって撃ち出した。
一騎当千はロボの剣を弾くが、コンドの方に向かう様子はない。
「【軍勢召喚】」
コンドは兵士を大量召喚、肉壁にして光線を防ぐ。
一騎当千はその隙にロボの背後に回り、その手に持った剣を振り下ろす。
「模倣、【時空切断主】」
次の瞬間、【魔法障壁】が真っ二つに切断される。
「!?」
律は即座に【転移引っ越し】を使用し、他の複製のところへ撤退する。
(今のスキルは⋯⋯)
律が表情を険しくする。
それも無理はない。
なぜなら今一騎当千が使ってきたスキルは、魔王を除き律を最も追い詰めた人間のものなのだから。
だが、ウステとは違う。
今切断されたのは【魔法障壁】だけだ。
ウステなら今の一撃で【魔法障壁】どころかロボまで真っ二つにしてきた。
本当にウステがいたなら今頃律はロボットと一緒に真っ二つになっているだろう。
想定外だが、最悪ではない。
とはいえ、油断できないのも事実。
律はコアなしでロボを召喚し、自分たちが乗っていない状態のロボを作り出した。
これならノーリスクで攻撃出来る。
一騎当千は再び召喚されたロボを迎撃するかのように飛び出し、空中で剣を振るった。
その剣は【魔法障壁】のみを斬り裂き、一騎当千を【魔法障壁】の内部に侵入させる。
はずだった。
「!」
一騎当千の前に立ちはだかる"もう一枚の"【魔法障壁】。
律は【家召喚】のランクアップにより、【魔法障壁】の2枚同時召喚が可能になっている。
相手は【魔法障壁】を破ってくるが、対策が出来ないわけじゃない。
一騎当千は【時空切断主】を使ってくるが、ウステの他の技能は使ってこない。
それに、ウステのように一度に全てを両断してくる事もない。
これなら【魔法障壁】の2枚召喚で十分に対応が可能だ。
(恐らく、一騎当千の兵はウステの"スキルだけ"を模倣している。それも【時空切断主】だけだ)
律の考えは当たっている。
一騎当千が模倣出来るのは事前に登録した一つのスキルだけ。
今回はウステの【時空切断主】を登録している。
つまりそれ以外のウステのスキル、例えば【賽の目】などは模倣出来ず、一振りで全てを斬るようなウステの技術も再現は不可能だ。
律は一騎当千を【魔法障壁】で囲い込む。
そして【魔法砲撃】を一気に撃ち出し、【魔法反射】にて光線を散らばらせる。
いつかの刀使いに使った戦法だ。
外の魔法兵たちが一騎当千を助けるため、一斉に魔法を放つ。
だが律は【魔法障壁】に一瞬穴を空け、その魔法を中に取り入れる。
魔法兵たちが放った魔法は、一騎当千をさらに追い詰める最悪の一手となってしまった。
光線と魔法の入り乱れる中、一騎当千は攻撃を捌くのをやめ、【魔法障壁】に向かって走り出した。
一騎当千は剣を大きく振り被る。
そして【魔法障壁】を斬り裂くため、振り下ろした。
(【魔法障壁】を破る隙なんて⋯⋯)
律は一騎当千の剣を狙い、【魔法砲撃】を飛ばす。
「与えないっ!」
スピード重視で放たれた光線は剣に追い付き、その剣を弾き飛ばした。
宙に舞う一騎当千の剣。
それを取ろうと手を伸ばした一騎当千。
その急所を、【魔法砲撃】による光線が貫いた。
「!」
一騎当千がやられた事を感知したコンドが、表情を険しくする。
コンドはまた【一騎当千】を召喚しようと、魔力を練り始める。
そこに光線が飛んできて、コンドは慌てて飛び退きロボを睨んだ。
「ようやくお前に集中できるよ」
「まだ倒されないよ!【軍勢召喚】!」
大量の軍勢が召喚されると同時、ロボの剣がコンドの元に振り下ろされた。
もうもうと上がる土煙。
それを吹き飛ばすように現れたのは軍勢。
軍勢魔道士コンド・ガルネ。
それを代表するスキル、【軍勢召喚】による兵士である。
これまでにないほどの圧倒的物量。
兵士の質も作戦も戦術も、何も考えない数による理不尽なほどのゴリ押しだ。
それを迎撃するように放たれたのは光線。
範囲重視で放たれた【魔法砲撃】の光線は多くの兵士を焼き、そのほぼ全てを戦闘不能に陥らせる。
その瞬間さらに増えた物量の兵士が召喚され、もはや一つの巨大な生物のように動き始める。
「【軍勢召喚】派生」
兵士たちは集合し、あたかも1人の巨大な兵士のように律を攻撃する。
「【集合合体兵士】!」
巨大な兵士はロボと同等の大きさにまで成長し、ロボにつかみかかる。
律が操るロボも応戦し、両者は取っ組み合いの姿勢になりお互いを押し始めた。
ぶつかり合う2つの巨体。
その均衡が崩れる時は思ったよりも早く、この場の誰もが予想だにしない展開で訪れた。
2人が戦っているのは巨大な渓谷。
そんな空間で巨体がぶつかり合っていたら、当然。
ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ!!!!!
渓谷は大きな音を立てて崩れ、その瓦礫は両者に衝突する。
律操るロボは【魔法障壁】により瓦礫を無効化、むしろチャンスと見てさらに力をこめる。
だがコンド操る巨大な兵士は瓦礫に衝突し、そのままバランスを崩す。
ロボはその兵士に馬乗りになり、至近距離で【魔法砲撃】を撃ち込み続ける。
やがて巨大な兵士は光線に焼き尽くされ、消滅した。
そこに立っているのはボロボロで魔力も残り少ないコンドだけ。
「詰みだ。大人しく拘束されろ」
その言葉を聞いた途端、ボロボロで覇気のなかったコンドの目に光が灯る。
コンドはニヤッと笑い、答えた。
「断る」
「そうか」
律は電気属性を付与した【魔法砲撃】、その砲口をコンドへ向ける。
「【軍勢召喚】派生」
律は【魔法砲撃】を撃とうと、正確にコンドに標準を合わせる。
「【一騎当千】派生」
律は続く言葉に耳を疑った。
(【一騎当千】の⋯⋯先?)
「これが最後の抵抗だ」
そう告げ、コンドは全魔力を注ぎ込んだスキル名を口にする。
「【至高の一体】」
召喚されたのは一体の兵士。
それは、コンドが【軍勢召喚】を使い続ける上で身につけた、一つの完成形だった。




