時空切断(と、おまけ)
おまけがありマスカット(?)
「【至高剣術】【時空切断主】」
ウステが使用した2種の強化スキル。
それによって増幅された魔力は凄まじいもので、その余波によってウステの髪は逆立ち、辺りに小さな風を生み出していた。
ウステが大剣を上段に構える。
「【流星断ち】」
ウステが使用した強化スキルの一つ、【至高剣術】は単純に技量と力を上げるスキル。
上がった力に比例して魔力も上昇し、その力は総合的に見て通常時の約10倍に達する。
同じく技量も上昇し、受け流し、切り返しなどの基本的な技術はもちろん、通常時のウステが使えないスキルの使用も可能にする。
これが【至高剣術】の効果。
そしてもう一つの効果が―――――――――
「!?」
振り下ろされるウステの大剣。
律はそれに"何か"を感じる。
それが何かは分からないが、律の頭に最大音量で鳴り響く警戒音は、律に【転移引っ越し】を使用させるのに十分なものだった。
絶大な魔力をこめて振り下ろされた大剣。
それに合わせて、【魔法障壁】、そして律が今の今までいたロボにまっすぐ剣閃が走る。
直後、その剣閃にそって【魔法障壁】とロボは綺麗に両断され、重力に負けたかのようにスルスルと落ちていった。
「マジ⋯⋯か⋯⋯!?」
ウステが発動した強化スキル【時空切断主】の効果は、文字通り時空切断の効果を自分の攻撃に一定時間付与するスキル。
その剣に斬られたものは例外なく、時空ごと切断されて両断される。
律は心底焦ったような表情を見せながら、【魔法砲撃】を大量に放つ。
「【飛貫】」
次の瞬間ウステが大量に放った飛ぶ突きは全ての光線の中心を捉え、正確に消滅させた。
光線を捌き切ったウステの視界に映るのは、先ほど両断したはずの巨大なロボ。
ロボはあくまで【家召喚】で召喚された家なので、何度でも復元が可能なのだ。
ロボの持つ巨大過ぎる剣が、ウステに向かって振り下ろされる。
強化スキルを使用したウステでも当たればただでは済まない攻撃。
そんな場面でも、ウステは冷静に大剣を構えた。
「【賽の目】」
次の瞬間ロボの片腕と剣に無数の剣閃が走り、バラバラにされる。
「【光貫】」
ウステが光と化し、ロボに向かってまっすぐ突進する。
その勢いのまま【魔法障壁】を貫きロボの内部に侵入したウステは、再びスキルを使用する。
「【微塵】」
ウステがスキルを発動した瞬間、ロボが粉となり崩れ落ちる。
ロボは複製だけを使い律が遠距離で操作していたものだが、それでもこれだけの差があると、戦う気は削がれる。
(それでも!)
律は諦めない。
理由はたった一つ。ミルクの母親を救うため。ミルクが心から笑えるようにするため。
律はウィンドウを開き、【魔法反射】をレベルアップさせる。
ウステが大剣を構え、居合の姿勢をとる。
その大剣は律本体がいる家に向けられている。
それでも律は逃げない。
「【光閃】」
ウステがそう呟いた瞬間一瞬光が見え、遅れて音と余波がやってくる。
【魔法反射】と【時空切断主】。
遠距離絶対反射と時空ごとの絶対切断。
盾と矛。
2つの"絶対"がぶつかり合う。
結果は――――――――――――――
「かはっ」
ウステの大剣はポッキリと折れ、その体からは鮮血が舞っている。
【時空切断主】の完全反射による即死は免れたようだが、それでも致命傷に変わりはない。
ゆっくりと前に倒れ込むウステ。
これで終わりかと思っていた律だが、ウステは最後に反撃をしていった。
「【巨大剣・時空切断】!」
時空を切断する魔力を纏った巨大な剣が現れ、その剣はウステの構えと同じ角度をとる。
「【賽の目】」
時空を切断する、巨大な剣。
それから放たれた無数の斬撃は今度こそ【魔法反射】を突き破り、律に【転移引っ越し】を使用させる。
「【時空切断主】、派生」
何か行動を起こしそうなウステに、律は急いで近づく。
「【時空転移】」
だがそれは僅かに間に合わず、ウステとキューブは時空ごと転移していってしまった。
(やっぱりか)
またしてもキューブを取り逃してしまった律だが、不思議と怒りはなかった。
いや、怒りは常にある。それが変動しなかっただけだ。
律はウィンドウからマップを開き、ピンの地点を次の目的地に定める。
次こそはミルクの母親を取り戻す、という気持ちはもはやほとんどない。
(長期戦だ)
マエスの部下を全て倒す。
そしてマエス本体が出てくるしかなくなった時、確実にミルクの母親を取り返す。
静かで、それでいて大きな怒りをもった律は、次の目的地へと向かっていった。
おまけ モネット王国侵略の魔王軍
「魔王城建設地を決めた」
魔王が部下たちにそう告げる。
「どこに建設されるのですか?」
エスペが魔王に聞くと、魔王は地図を取り出し指差しながら言った。
「ここだ」
エスペたちが地図を覗き込む。
魔王の指が向いているのは、モネット王国という大きな国だった。
王国というだけあって、面積も軍事力も他の国とは頭一つ抜けている。
だが、魔王四天王は一切恐れない。
それは、自分たちの力に自信があるから?
魔王が最強だと知っているから?
否。
魔王への忠誠、信頼故のものだった。
「ふむ。ここからならよく見える」
思い立ったが吉日とばかりに、魔王たちはモネット王国の近くまで来ていた。
現在地はモネット王国上空。地上から100メートル。
魔法で飛行しているのだ。
「やはり、相当大きいようだ」
その言葉の意図は恐れではない。
この国が手に入るという喜びからだった。
当然のようにこの国が手に入る事を確信しているが、もちろん慢心ではない。
この国を手に入れるだけの力も、部下もいるからだ。
「では、早速始めるか。ハウラ」
「は~い」
魔王が呼んだのは、四天王の一角。
四天王の中で最も結界術に長けた、ハウラ・バリラだ。
ハウラが魔法を行使した瞬間、モネット王国が結界に閉ざされる。
王国がざわめき始める中、魔王一行は魔法を解除、自由落下を始める。
重力に身を任せその風を全身に感じる。
爽快さに笑みを浮かべながら、魔王は固有スキルを発動する。
「【借力】軍勢魔道士、コンド・ガルネ」
魔王の身体から魔力がもれ、その魔力は人の形をとる。
「【軍勢召喚】」
数秒後、大量の軍勢がモネット王国に振り注いだ。
魔王の落下地点を中心として、軍勢が広がっていく。
対応するために王国騎士団がやって来た頃には、モネット王国の三分の一が侵略されていた。
これ以上の被害は出せないと王国騎士団が立ち向かう。
「ドラゴン」
魔王が短く言うと同時、王国騎士団に炎が襲った。
龍化の能力を持つドラゴン・ポセイドが炎を使い、騎士団を焼き払ったのだ。
辺りは炎に包まれ、何もかもが燃え盛る。
やがて炎が消え残ったのは焼け焦げた地面だけ。
「俺も少しはやるか」
魔王がその身に魔力を纏い、固有スキルを使用する。
「【魔王借力】岩石の魔王、ロカ・レイデモ」
魔王は手を空に向け、上空に巨大な隕石を生成する。
「【撃墜隕石】」
その隕石は王国の中心に落ち、衝撃波は辺り一帯の建物を破壊した。
建物は壊れ、騎士団は全滅。
逃げ回る人々に、それを追い回す魔王の軍勢。
モネット王国は、地獄と化していた。
魔王はその圧倒的な力でもって王国を蹂躙し、ある程度破壊したところで結界を解除させた。
魔王が空中へ飛び上がると、まだ生き残っていた人間たちが散り散りに逃げていく。
その様子に魔王は小さく笑う。
魔王は【軍勢召喚】を解除、魔法を使用し、逃げていく者たちに呼び掛ける。
「ここまで生き残った者たちよ。無事他の国へ逃げ込めたら伝えろ」
魔王は笑みを浮かべて言う。
「モネット王国は、魔王軍が支配した!」
第1456代目。
歴代最強、借力の魔王アンドロ・レイデモ。
その伝説の、始まりだった。




