至高剣士ウステ・バザー
ギガント戦を終えて。
今日も今日とて、律は設計図作りに勤しんでいた。
現在作っているのは巨大な剣。
前まではロボットや戦闘機など、誰もが思いつきそうなありふれたものを作っていた。
だがマエスへの怒りで律の心は吹っ切れ、自由な発想が出来るようになったのだ。
その結果今の律はたくさんの作りたいものができ、剣もその一つというわけだ。
やる気に満ち溢れた表情で設計図を作っていた律だったが、頭の中にピコンという音が鳴った事により集中を解いた。
一旦作るのをやめてウィンドウを見た律は、リビングへと移動していった。
「次の地点に着くまであと10分だ。準備をしておいてくれ」
ウィンドウにあと10分だと表示されていたため、それをミルクたちに伝えに来たのだ。
(とはいっても、準備する事なんてほぼないんだけどな)
家の外に出るわけでもないし、ご飯は先ほど食べた。
律もちょうど設計図を作り終わっており、特にやる事もない。
到着まで暇だった律は、手元に小さい複製を召喚、【飛行】させて暇を潰すことにした。
やがてキューブの位置を表すピンが近づいてきた。
相当ピンの地点まで近づいてきた律だが、その顔が不可解といった表情に変わる。
(建物が⋯⋯ない?)
マエスの時もギガントの時も建物があったため自然と建物があると思っていただけに、木の一本もない土地に違和感を覚えたのだ。
建物がないため、ピンの地点に人がいるのが見える。
律がよく目を凝らすと、その人物は地面に大きな剣を突き刺し、その柄に両手をかけているのが見える。
こちらに気づいているのかじっと家を見ているが、攻撃してくる様子はない。
これ幸いと律が砲口に魔力を溜め、【魔法砲撃】を撃ち込む準備をする。
もうすぐで撃てるという時、家にぬっと影が差した。
律が上を見上げると同時、召喚された巨大な剣は家に向かって振り下ろされる。
「!」
剣を召喚した張本人、ウステ・バザーは少しだけ驚愕したような表情を浮かべる。
家に傷一つ付かなかったどころか全く動かず、巨大な剣の方がポッキリと折れていたからだ。
戦闘の始まりを告げる巨大な剣による斬撃。
その反撃とばかりに放たれた【魔法砲撃】は、ウステに向かってまっすぐに飛んでいった。
光線が迫る中、ウステは地面に突き刺さった大剣を一気に引き抜いた。
そしてそのまま光線を斬り裂き、直撃を避けた。
着弾地点から上がる土煙。
それを振り切るように一条の光が飛び出し、空へと昇っていった。
てっきり家に攻撃してくると思っていた律は不可解と驚愕の表情を浮かべ、ウステが昇っていった空を見上げる。
「⋯⋯!」
律が目を見開く。
家に向かってまっすぐに。
まるで隕石のように落ちてきたウステは、落下の勢いを利用して全力で剣を振り下ろした。
ドォォォォォォォォン!!!!
初撃を遥かに超える一撃。
その威力に家は叩き落とされ、地面にめり込んだ。
とんでもない音と威力に律が引きつった笑みを浮かべながら、率直な感想を口にした。
「バケモンかよ⋯⋯」
少し前ならまだしも、【家召喚】のランクアップで【飛行】のレベルも上がっている。
そんな理屈を無視するほど、ウステの力は常軌を逸していた。
ウステが剣に魔力をこめ、追撃を入れようとする。
その追撃を避けるため、複製を大量召喚、その全ての砲口から【魔法砲撃】を撃ち出した。
魔力自腹消費で溜めをスキップした【魔法砲撃】はその全てがウステまで飛んでいき、追撃を回避するには十分な時間を作ってくれた。
それどころか全てを捌ききれなかったウステに何本か命中し、麻痺の効果でその動きを止めることが出来た。
その隙を利用し、複製の砲口に魔力をこめる。
ウステが動けるようになった時には【魔法砲撃】は撃ち出されており、光線が間近まで迫っていた。
これでまた当たれば麻痺の効果で再び行動不能に出来る。
上手くいけばそのまま続けて撃破まで持っていけるだろう。
とはいえそんな都合よくいくはずも無く。
ウステは残された僅かな時間で剣を構え、その剣技でもって光線を迎撃した。
「【賽の目】」
次の瞬間ウステの周りに隙間なく斬撃が飛び、光線がバラバラに分解された。
「マジか!」
全ての光線を一瞬で捌き切ったウステが、立て続けに技を発動する。
「【曲山】」
下からうねるような突きが放たれ、一気に上空まで跳ね上げられる。
「【飛竜落とし】」
次の瞬間にはウステが飛び上がり、【魔法障壁】ごと家を叩き落とす。
「【激流突き】」
落ちていく家に向かってウステが渾身の力を込めて大剣を突き刺す。
ガァァァァンという音が鳴り響き、大剣と【魔法障壁】を振動させる。
それでも【魔法障壁】は破れず家を守りきり、【魔法砲撃】を撃つだけの時間を作り出した。
今回は放たれた光線は範囲重視。
空間を丸ごと埋め尽くすほどの大量かつ巨大な光線が、ウステに向かって撃ち出された。
ウステが【賽の目】と同じ構えを見せ、技を発動する準備を完了させる。
だが、今回は隙間なく空間を埋め尽くすほどの光線。【賽の目】でも対応し切ることは出来ない。
全方向から壁のように光線が迫ってくる中、ウステが使った技は【賽の目】とは違うものだった。
「【微塵】」
瞬間魔力が煌めき、全ての光線が消失した。
いや、斬り伏せられたのだ。
「【畝り】」
ウステの斬撃が曲がり家を包み込むように一周する。
「【蜷局断ち】」
うねって家を一周していた斬撃がとぐろを巻くように家を締め付ける。
ギシギシと【魔法障壁】が悲鳴を上げる。
家を斬撃で覆っているため、魔力の供給が絶たれているのだ。
(ちょっと前なら大分焦ってただろうな)
律は【転移引っ越し】を使用し、【魔法砲撃】にてウステの不意をとる。
「!」
当然ウステは気づき即座に光線を斬って対応してくるが、必要な時間は稼げた。
先ほど律が転移したのはコアの複製。
つまり、光線を捌いたウステの眼に映るのは――――――
「っ!」
巨大な剣を片手に持つ、機械兵士の姿だった。
律がロボを操作し、剣を振り下ろす。
当然ウステは反応し大剣で防ぐが、ロボの方が巨大なだけあって相当苦戦している。
「ぐっ⋯⋯!」
ウステはしばらく鍔迫合いの形を続けていたが、力では敵わない事を悟って次の行動を起こした。
「【光貫】」
ウステがスキルを発動した瞬間一気に加速し、一瞬でロボの背後に回りこむ。
「【旋斬】」
ウステは大剣を横向きに構え空中で回転し、その勢いを利用してロボに攻撃してきた。
ロボよりも遥かに小さい体でロボに匹敵するほどの威力を出してきたウステの攻撃に、ロボは一瞬よろめく。
絶好のチャンスにウステは畳み掛ける。
「【旋風斬撃】」
最速で手数重視の斬撃が迫る中、ロボは片足立ちになり一気に軸回転、そのまま斬撃を吹き飛ばす勢いでウステに攻撃する。
「うぐっ!」
ウステも想定外だったのか、大剣越しに攻撃を食らってしまう。
そのままウステは吹っ飛んでいき、地面を削りながらようやく止まる。
そこに【魔法砲撃】を撃ち込み、ウステを倒しにかかる律。
「【閃光断ち】」
ウステが迎撃のためにスキルを発動。
魔力の光が煌めき、光線を一刀両断した。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」
とはいえ、ウステはもはや満身創痍。
これ以上戦闘が出来るとは思えない。
そう思っていた律は、次の瞬間に放たれたウステのオーラに目を見開いた。
「【至高剣術】【時空切断主】」
消えかかっていたウステの魔力が、一気に膨れ上がる。
(これは、思ったより⋯⋯)
「とんでもない剣士に戦いを挑んでたみたいだ⋯⋯」
その言葉が聞こえたのか、ウステがにっこりと返す。
「それくらいしか、取り柄がないもので」




