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異世界召喚されたけど家でだらだらする  作者: マスカット寿司
ミルクの幸せまで

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33/45

巨人ギガント

今回長くね⋯⋯?

 ミルクの母親が入っているキューブがある地点。


 東の古城ガレア。


 そこにいるのはマエスに雇われた巨大化能力の持ち主、ギガント・ドンド


 彼の巨大化能力は文字通り身体を巨大化、それに比例したパワーを手に入れる事が可能で、巨大化のリーチとパワーの組み合わせはとんでもなく凶悪なものだ。


 彼にかかれば、律の家程度なら軽く投げ飛ばす事が出来る。


(そのはずだ。俺にはそれが出来るはずだろ)


 ギガントは戦慄していた。

 生まれて初めて見る自分より大きい生き物。


「なんだ⋯⋯あれは⋯⋯!?」


 今彼の目の前にいるのは。

 巨大化したギガントを遥かに超えるサイズを持つ、機械兵士(ロボット)だった。







 律は作業をしつつ、マップを確認する。


(大体あと30分くらいか⋯⋯。うん、この設計図は完成させられそうだ)


 律が現在制作している設計図は、マエスに発想を得たロボットだ。


 正確に言えば、ロボットの一部分。部品(パーツ)を制作している。


 最初から全部1つにまとめて作ってしまうとサイズが小さくなるし、何より操作が不可能になる。


 そこでいくつかの部品に分けて製作、複製(コピー)を利用して合体させる事で【飛行】にて操作が可能になる。


 ただ、指など一つ一つ動かすためには10個の複製(コピー)では足りないので、律は【複製(コピー)】の機能をレベルアップ、最大個数を50個まで増やしていた。


 作る部品は指で10個、関節ありの両手両足で8個、頭で1個、胴で1個。

 そして、律たちが乗る中心(コア)の部分で1個だ。


 合計すると21個の部品を作ることになる。


 現在律が作っている部品は最後の部品で、到着までには完成させられる算段だ。


 その他にも律はたくさんの設計図を作り、戦いに備えてきた。


 この戦いが、律の新しい戦い方の第一歩になる。

 ⋯⋯かも知れない。







 やがて辺りは夜の闇に包まれ、遠くには城が見えてきた。


 その城の名前は既にマップで確認してあり、ちょうどその中に敵がいる事も確認済みだ。


「あれが東の古城ガレア⋯⋯」


 律はそのまま少し進んだ後、城の上空で止まる。


「近づかないんですか?」


 不思議そうに律の様子を伺うミルクに律はニヤッと笑い、返答代わりの行動を取る。


 律は10個の複製(コピー)を召喚、砲口に魔力を溜める。


 そこにさらに自分の魔力と【魔力貯蔵庫】の魔力を上乗せし、ピンの位置に向けて放出した。


 夜の闇でよく目立つ光線はピンの地点に向かってまっすぐ進み、城を破壊しながらも進み続ける。


 次の瞬間、城は許容量を超えたかのように一瞬で崩壊した。


「!?」


 破壊され、崩れ落ちる古城ガレア

 その中から現れたのは巨人。明らかに人の身を超えた、巨大な人影だった。


「巨大なのは、ロボットで見慣れてるんだよね」


 律は最高速度で背後に回り込み、【魔法砲撃】を背中に撃ち込む。


 光線が届く直前、ギガントは体の向きを半回転させ、魔力の集中した手でそれを受け止めた。


 光線を耐えきり、律に反撃しようとするギガント。

 2発目の【魔法砲撃】が直撃したのは、その瞬間だった。


「!?」


 最初にギガントの背後に回り込んだのは律たちが乗っている本体だけ。


 複製(コピー)はずっと同じ位置で待機していたのだ。


 そしてギガントが光線を防ぎ油断した瞬間、律の魔力消費で溜めをスキップした【魔法砲撃】を撃ち込んだ。


 完璧に決まった【魔法砲撃】。

 それでもギガントは倒れず、その巨体をもって律に攻撃してきた。


 だが、ここまでは律も織り込み済み。


 家のサイズをミクロサイズまで縮め、複製(コピー)を最大個数召喚する。


 レベルアップで50まで増えた複製(コピー)は、それぞれのタイミングで魔力を砲口に溜め、バラバラのタイミングとバラバラの方向からギガントを襲う。


「【マジックアーマー】【アーマーエンチャント】」


 大量の光線を見て避けられないと悟ったギガントが、耐えるための魔法を使う。


 魔法で作られ、魔法で強化された半透明の鎧は、襲いかかる大量の光線から確かにギガントを守りきった。


「【マジックガントレット】」


 光線を耐えきったギガントの手に纏われたのは、魔力で構築されたガントレット。


 直後、ガントレットの纏われた拳は律の反応速度を超え、【魔法障壁】を攻撃した。


 ギガントが表情を歪める。


 【魔法障壁】はギガントの拳程度では揺らがず、無傷で家を守りきったのだ。


 そのタイミングで砲口に魔力が溜め終わる。


 律がギガントに向かって撃とうとした瞬間、ギガントが跳躍、一瞬で律の視界から外れる。


 やべ、と律が気づいた頃には背後に回り込み、家を鷲づかみにしていた。


(あ、これ投げられるわ)


 そう一瞬で察知した律は、上空に複製(コピー)を召喚する。


 次の瞬間、ギガントのパワーによって家は遥か遠くへ投げられ、見えなくなるほど飛んでいった。


 飛んでいった家を見て、ギガントが息をつき巨大化を解除しようとする。


 上空から巨大な魔力を感じたのは、その時だった。


 ギガントがばっと上を向く。


 これが家に追加された新たな機能。


 【転移引っ越し(コピー・ワープ)】。


 あらかじめ召喚しておいた複製(コピー)の中にワープ出来る機能だ。


 ギガントの上空、夜の闇に輝くのは魔力の光。


 辺り一帯を包むような目映(まばゆ)い光は光線となり、ギガントに襲いかかった。


 範囲重視で放たれた光線はもはや一本の柱のようになり、辺りを照らしていた。


 夜という事もあり、何も知らない人が見たら幻想的にまで思えてくるだろう。


 やがてその幻想的な光は収束し、光で埋まっていたギガントの視界が解放される。


 その視界に映ったのは、空から落下してくる何か。


 自らの大きさを遥かに超えるほどの、巨大な何かだった。


 ギガントは一瞬絶句したが、すぐに持ち直し迎撃の体勢を取る。


 律はロボを操作し、ギガントを踏みつけるように着地した。


 だがギガントも耐え、なんとかロボを弾き出した。


(巨大化してるだけあって力は相当強いな)


 そう相手の評価を上方修正しながら【飛行】を使い、ふんわりと着地する。


 ギガントは前で腕をクロスさせ、そのまま突進してきた。


 ギガントの大きな足音と共に舞う土煙。


 律のロボにも当然纏われている【魔法障壁】にぶつかった瞬間、ギガントの勢いが止まる。


 それでもギガントは諦めず、ガントレットの纏われた拳で攻撃を仕掛けてくる。


 だがロボはその攻撃に一切動じず、反撃とばかりにパンチを放つ。


 一心不乱で攻撃していたギガントは反応が遅れ、その攻撃をモロに食らってしまう。


「ぐっ⋯⋯」


 ギガントはダメージを負いながらも後ろに回り、ロボの胴に腕を回してきた。


 そのまま後ろに身体を反り、ロボの頭を地面に打ちつける。


 だが、律たちがいるのはロボの中心。

 球体に設計されたコアの部分。


 どれだけ攻撃されようが、律たちには全くダメージは入っていなかった。


(んじゃ)


「反撃開始だ」


 律はニヤッと笑い、ロボットを部品ごとに分解する。


「!?」


 困惑するギガントの後ろで再構築されたロボは、そのままギガントの首根っこをつかみ上げた。


 もがくギガントを空中に放り投げ、大量の複製(コピー)から放たれた光線がギガントを全方位から攻撃する。


「まだだ」


 律はロボを操作、再びギガントをつかみつかんだ手に魔力をこめる。


 次の瞬間、超至近距離で【魔法砲撃】は放たれ、その属性でもってギガントの動きを止めた。


 今回の属性はもちろん電気。効果は麻痺。


 体が痺れ動けなくなったギガント。


 その絶好のチャンスを逃さず、律は自分たちがいるコアの部分を操作する。


 あらかじめロボの内部にはコアの通り道が設置してあり、手の先からでも足の先からでもコアを出せるようになっているのだ。


 ポンッと手の先から出されたコア。


 そこについているドアが開き、レイトが出てくる。


 そのままレイトはギガントに触れ、スキルを発動、キューブの中に閉じ込めた。


 そこに残ったのは、ミルクの母親が入っているキューブだけ。


 今回は転送される前に倒しきれた。


(これでついに……!)


 そう思いながらキューブを拾おうと―――――――


『やらせないよ』


 キューブに魔法陣が浮かび、どこかに転送される。


(くっそ!またかよ!)


 そして再び脳内にマエスの声が響いてくる。


『やぁ。今回は簡単に倒せちゃったかな?』


 軽薄さが伺える声に、律は怒りをあらわにする。


「いいかげんにしろよ!なんでそんなに俺たちの邪魔をする!」


 次に脳内に流れてきたのは、律の怒りに一切動じず、余裕の溢れる声だった。


『詳しくは言えないが⋯⋯そうだな』


 声が止まり、長い吐息が聞こえてくる。


『ぼかしていうなら、野望のため、かな』


 マエスの声が少しだけ重くなったような気がした。


『ま、今はとにかく戦い続けてよ。いつかはボクのところまで案内してあげよう。またねー』


 一瞬のうちに軽薄さを取り戻したマエスは、一方的に告げて魔法通話を切った。


 正直大分怒りが溜まっていたが、何もしない事にはどれだけ怒ろうとも問題が解決しない、というのは分かっていた。


(今はとにかく敵を倒し続ける)


 律の眼に光が宿り、その心には炎が燃える。


(そしていつか目の前に現れた時には⋯⋯)


 その炎は怒りから来るものか、はたまた一種のやる気から来るものか。


(ボコボコにしてキューブを取り戻してやる!)


 律の心にキューブを取り戻すまで消えない、熱い炎が宿った瞬間だった。

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