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異世界召喚されたけど家でだらだらする  作者: マスカット寿司
ミルクの幸せまで

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29/46

ついに母親と再会⋯⋯?

 律は複製(コピー)の砲口に魔力を溜め、もうもうと上がる土煙をじっと見つめる。


 突如、土煙の中に剣閃が煌めく。


 その瞬間、律はいまだ見えない敵に向かって【魔法砲撃】を撃ち込んだ。


 それを迎撃するように放たれたのは斬撃。

 家に向かってまっすぐに飛んでくる斬撃は【魔法砲撃】すらも切り裂き、家へと襲いかかった。


 だが、魔王四天王の攻撃にも耐える【魔法障壁】は斬撃をしっかり耐え、発動された【飛行】のサブスキル、【探知(サーチ)】は敵の姿を律の目にはっきりと映――――――


「らない?」


 確かに土煙の中にいるはずの敵を、【探知(サーチ)】は捉えていなかった。


 やがて土煙は晴れ、敵の姿があらわになる。


 律はもう一度【探知(サーチ)】を発動し直すが、やはりその目に敵は映らなかった。


 つまり、なにかしらの方法で律の【探知(サーチ)】から逃れているのだ。


 律は苦い表情を浮かべる。


(思ってたよりも⋯⋯めんどくさい戦いになりそうだ)








 律がドアを開けると、借金取り達が一斉にこちらを向いた。


 そんな借金取り達の前に借金取りのボスが出る。


「ボ⋯⋯ボス?」


「よう。心配させたな」


 そう言ってボスが手を上げると、借金取り達はウォォォォォオオオ!!と叫び、ボスに駆け寄る。


 ボスに集まる男達を見て、律はふん、と息をつく。


 魔王城から出発した後、律は借金を返しボスをアジトに連れて来ていた。


 こっちの目的はミルクの母親なので、律はちょっと控えめに声をかける。


「盛り上がってるところ悪いが⋯⋯さっさとミルクの母親を返してくれないか?」


 そんな律の声に気付いた様子のボスが、騒ぐ部下たちを制止し律の前までくる。


「悪いな。あいつらが騒いで遅れちまった」


 ボスは少しバツの悪そうな表情を見せた後、ミルクの母親が入っていると思われる小さな立方体(キューブ)を見せてきた。


「ミルクの母親は、この中に入ってる。後は俺が魔法を発動させれば――――――」


 そこまで言ったところで、アジトのドアが静かに開けられた。


 開けられたドアの前に立っている男。その手には、魔法陣が浮かんでいる。


「っ!」


 律は即座に反応し、ミクロサイズの複製(コピー)を召喚して【魔法障壁】だけを大きく広げる。


「【ファイヤーバット】」


 男がそう唱えると、炎のバットが召喚され、律達に襲いかかってくる。


 とはいえもちろんその程度の攻撃で【魔法障壁】を破れるはずもなく、むしろ炎のバットが消え去った。


 自分の攻撃が効かず焦るかと思ったが、男はうろたえる様子も見せず落ち着いて手を前にだす。


「⋯⋯」


 何か来るかと思い身構えた律だったが、男の手から放たれたのは炎でも電気でもなく、光だった。


 それも攻撃用の光ではなく、ただ漏れ出ているというような弱い光。


 ただのハッタリ?


 そんな律の予想は、男が唱えた言葉によって砕かれた。


「【スティール】」


 男の手の光が一気に強まり、その魔法は効果を発揮する。


 【スティール】は相手の持ち物を確率で奪う魔法。スキルの熟練度が高いほど確率はアップする。


 そしてその【スティール】の光が向けられたのは身構えた律の横、借金取りのボスの方だった。


 ボスが気づいた頃には男の手の中の光は収まり、そこには何かが握られていた。


 【スティール】で奪ったものを素早く確認した男は、もう用済みとばかりに逃げていった。


 あっさり逃げていく男にぼうぜんとしていた一同だったが、ボスが盗まれたものを確認しようと服を探り始める。


 だが、ボスはすぐに気づいたようで律の方を見てくる。


 そんなボスを不可解に思った律だったが、すぐに律も盗まれたものに気づく。


「おい、盗まれたのって⋯⋯」


 一応律はボスに確認するが、その言葉は現実逃避に近い。


「ああ、ミルクの母親が入ってるキューブだ」


 やっぱりか、という思いと、どうしようという思いが律の中に不安となって渦巻く。


「どうする?」


 尋ねてきたボスに、律は確固たる意志を持って答える。


「あいつを追う。キューブを取り戻す」


 それを聞いたボスは真面目な表情になり、律をまっすぐ見据えて言う。


「助けてくれた礼だ。協力するぜ。キューブの場所なら分かる」


「だったらすぐに出発しよう。おい、ボス借りてくぞ!」


 いまだ、ぼうぜんとしている借金取り達に一声かけてから律はボスを連れていく。


 外には既に家が召喚されており、ボスも連れて乗り込む。


 そのまま【飛行】を起動、浮遊待機(ホバリング)させ、すぐに出発出来る状態を整える。


「それで?キューブの場所が分かるっていうのは?」


 律の行動の早さに一瞬ほうけていたボスだが、すぐに冷静さを取り戻し律に説明を始める。


「俺のスキルでキューブの位置が分かるんだ。何かの地図があればお前達にも見せられるが⋯⋯」


 そう言ったボスに、律はウィンドウから地図を見せる。


「な、なんだコレ?」


「早くキューブの位置を!」


「わ、分かった。ちょっと待ってろ」


 ボスは手に魔力を込め、ウィンドウの地図にその魔力を纏わせる。


 すると、地図にピンが映り、【探知(サーチ)】の効果で律の視界にもピンが現れる。


 そして、その距離は少しずつ離れていく。


「サンキュ、いくぞ!」


 ボスに感謝を伝え、律は家を動かし始めた。




 最高速度で動いていた家は、キューブを盗んだ不届き者まですぐに追いついた。


 だが、その男のスピードも中々のもので、追いつく頃には森に逃げこまれていた。


「こりゃあ、一回降りなきゃ分かんねぇぞ⋯⋯」


 一緒に付いてきたボスがそう呟くが、律は既に対処方法を思いついている。


「関係ない。大体の場所が分かれば十分だ」


 そう言って律は、砲口にあらかじめ溜めておいた魔力を解放した。ちなみに今律達がいるのは海賊船型の家だ。


 解放されて光線となり放たれた魔力は、木をなぎ倒し、地面をえぐり、ピンの地点(ターゲット)まで到達した。


 律達の視界を隠す土煙が晴れた時、そこには1人の男が立っていた。


「なぜバレた⋯⋯?」


 そう呟く男が、自分の持っているキューブからもれ出る魔力に気づいた。


「これか!チッ、早めに転送しておけばよかった!」


 そう言って男は魔法陣を描き、キューブを転送しようとする。


 それを阻止するために律も【魔法砲撃】を放つが、僅かに遅くキューブは転送されてしまった。


 瞬間、キューブの位置を表すピンは遥か遠くに移動し、律も転送された事を理解した。


 律はすぐにピンの地点まで向かおうとしたが、男から斬撃が飛んできて【魔法障壁】に衝突した。


 当然【魔法障壁】には傷一つ付いていない。


 だが、放っておくと何をするか分からない。


「まずはあいつを倒してから行こう」


 そう言った律の家から放たれた光線は、開戦の合図となり、両者の戦いが開始された。

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