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異世界召喚されたけど家でだらだらする  作者: マスカット寿司
ミルクの幸せまで

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28/45

決着

文量増量キャンペーーーーーーーン!!!!!

 【魔法障壁】が破られると共に、魔王の魔力、それによる威圧感が律を襲う。


 詰み。


 周りから見れば誰もがそう思う状況。

 たった今【魔法障壁】を破った魔王も、一番近くにいるミルクも、そう感じていた。


 ただ1人、律だけが未だ希望を持っていた。いや、希望がある事を知っていた。


 魔王が家を破壊しようと一歩踏み出す。ちょうどその時、【魔法砲撃】の溜めが終わった。

 魔王が今すぐにでも家を破壊出来る距離。

 それは裏返せば、律も最速で攻撃を当てられる距離。


 超至近距離で撃ち出された【魔法砲撃】。

 それにも魔王は反応し、即座にバックステップする。


 瞬間、魔王の背中に何かがぶつかった。

 ばっと振り返る魔王の目を映るのは、再展開された【魔法障壁】だった。


 一瞬。

 【魔法障壁】に気を取られて魔王の動きが止まる一瞬。

 僅か1秒にも満たない魔王の隙は、【魔法砲撃】を当てるには充分な隙だった。


 避けきれずに【魔法砲撃】に当たった魔王。その動きが止まる。


 今回【魔法砲撃】に付与した属性は電気。

 ドラゴンとの戦いで、最後の一撃を決めるために使った属性だ。


 そして今も、魔王に強力な一撃を食らわせるために貢献してくれる。


 今魔王に当てた【魔法砲撃】は1回分。

 まだ複製(コピー)の10回分が残っている。

 その全てを魔王に叩き込む。


 律が家を縮小させ、それに合わせて【魔法障壁】を小さくする。


 電気属性の麻痺を与えたが、相手は魔王だ。

 いつ動き出してもおかしくない。


 だから最速で。


 属性は付与せず、威力を上げる事だけに特化させる。


 複製(コピー)の砲口に込められた、魔力の光。それがより一層輝き、一点に凝縮された光線が放たれた。


 万が一光線を避けられた時のため、律は魔王を注視していた。

 とはいえ【魔法砲撃】の着弾まであとコンマ数秒。律の心配は杞憂に終わりそうだった。


 そんな魔王にとってはピンチな場面。

 それは誰の目から見ても明らかだが、光線が当たる直前も直前、律の目には、魔王が笑ったように見えた。


ドォォォォォォォォン!!!!!


 魔王の笑い声が響いたのは、光線の着弾直後、一瞬遅れて聞こえてきた着弾音と同時だった。


「くははははははは。面白いなお前」


 そんな魔王の言葉に、律は困惑していた。

 無理もないだろう。

 【魔法障壁】が破られ絶対絶命のピンチからなんとか【魔法砲撃】を食らわせ、それでもなお倒れない魔王に警戒していたら、突然褒められたのだ。


 今律の心に渦巻いているのは、困惑と驚き、そして少しの安堵だった。


「障壁を破壊されて、普通なら絶望する所を、お前は俺に反撃してきた。見事だ。それに⋯⋯面白い」


 べた褒めしてくる魔王に、律は困惑するしかない。


「ともかく、これで条件は達成だな」


 魔王の構築した空間が壊れ、現実世界に戻る。


「ついてこい。男に会わせてやる」


 魔王はそう言うと闘技場を消し、魔王城へと歩いていった。




 数分後。

 律達は魔王の後ろに付いていっている。


「そもそもなぜお前はあの男に会いたいんだ?」


 ずっと無言だったのに痺れを切らしたのか、魔王が隣に来て話しかけてくる。


 ちなみに隣といっても律は家を小さくして【飛行】で付いていっているため、魔王に律の顔は見えていない。


 律はすぐに答えようとしたが、はっとなって言葉に詰まる。

 男に会う理由を説明するのには、ミルクの事情を説明する必要がある。

 そう簡単に全部話していいものでもないだろう、と思ったのだ。


 とはいえこのまま黙っているわけにもいかず、男に会う理由をテキトーに考える。


 そうしている中、ふと律は思った。


「お前こそ、なんであの男を攫っていったんだ?」


 律にはあのレベルの力を持っている魔王がわざわざ借金取りの男を攫う必要があるようには思えなかったのだ。


 質問に質問で返した形になってしまったが、案外すぐに魔王から答えが返ってきた。


「俺が持っている固有スキルの関係でな。あの男の能力が使えそうだと思ったんだ」


 あっさりと質問に答えてくれた魔王が、さらに言葉を続ける。


「とはいえ、もう用事は済んでいる。あの男をそのまま街に返してくれると助かるんだがな」


 冗談っぽく言った魔王に、律の緊張が少しだけ緩む。


「ああ、俺が街まで返そう。そっちの方が都合がいい」


 街にいる借金取り達はボスであるあの男を信頼しているように見えた。

 魔王に言った通り、ボスも一緒に連れて行った方が都合がいい。


「冗談のつもりだったんだがな。連れて行ってくれるというなら言葉に甘えよう」


 まさか承諾してくれるとは思っていなかったのか少しだけ驚愕の表情をしている魔王に、律はこっそりと笑った。




「ここだ」


 さらに数分後、律達が連れてこられたのは牢屋だった。


「一応牢屋に入れていてな。別に牢屋になど入れなくてもいいのだが、配下たちが俺の安全のためとうるさくてな」


 魔王と話していて律が分かったのは、案外魔王は悪い奴ではないということだ。

 魔王四天王達も結局は魔王のために動いていて、魔王への忠誠心が分かる。

 そのおかげか魔王も魔王四天王達を信頼していて、よい仲間なんだろうな、と律は勝手に思っていた。


「この牢屋の中にいるのか?」


「ああ。その小ささならそのまま入れるだろう。俺は少し外すとしよう。存分に話すといい」


 借金取りのボスと話すのなら、ミルクの過去にどうしても触れてしまう。

 どうしようかと思っていたが、魔王は自ら席を外し、律達と借金取りだけにしてくれた。


 そんな魔王の気遣いに感謝しつつ、律は家を中に入れ、借金取りに声をかける。


「おい。借金を返しに来たぞ」


 そこでようやく律達に気付いた借金取りが、顔を上げる。


「誰だ?」


 そんな借金取りの言葉に応じるように、ミルクが窓から顔を出す。


 借金取りは目を凝らして家を見ていたが、急にはっとしたかのように声を出した。


「ミルクか!?」


 やはりミルクの事は知っているようで、だからこそなぜここにいるのかと面食らったような表情を浮かべる。


「ミルクの借金を返しに来た。だから代わりにミルクの母親を解放してくれ。解放してくれたらお前をここから連れてってやる」


 脱出出来ると知った借金取りが目の色を変える。


「ああ、解放する。だから今すぐここから連れ出してくれ!!」


 その言葉を聞いた律が、複製(コピー)を召喚し、借金取りを中に入れる。


 それを縮小させ律の手の中に入れると、律は牢屋を出て魔王の所に向かった。




 家の機能を使って魔力をたどると魔王が外にいる事が分かったので、律は外に出て、魔王に近づく。


 ある程度近づくと、律に気付いた魔王が声をかけてくる。


「終わったか」


「ああ。俺達はこのまま街に戻る」


 それを聞いた魔王が少しだけ寂しげな表情を浮かべる。

 恐らく戦っていて楽しい相手など、久し振りだったのだろう。


 そんな魔王を見て律は少し笑い、家から出た。


 そう、魔王を警戒してずっと家の中にいた律が魔王を信頼し、初めて生身で外に出たのだ。


「じゃあな、えーっと⋯⋯魔王?」


「そういえば名前を教えていなかったな。アンドロ・レイデモだ」


「俺ももう一回名乗っとくか。三時律だ。律って呼んでくれ」


 そうしてお互いに名乗った2人は少し話をして、そろそろ戻るという雰囲気になった。


「律。最後に少しいいか?」


 律の様子を伺うように尋ねてきた魔王に律は返す。


「なんだ?」


 (はてな)を浮かべる律に、魔王は近づく。


「動くなよ」


 そう言って魔王は律に触れ、魔力を流し込む。

 次の瞬間、律の魔力は何倍、何十倍と膨れ上がり、逆に魔王の魔力は少し減った。


「な、何をしたんだ?」


 困惑する律へ、魔王は自慢げに語りだした。


「俺の固有スキル、【借力】は自分の魔力を分け与えた相手の固有スキルを借りる事が出来る」


 魔王は話を飲み込みきれていない律によく聞かせるように話す。


「お前に魔力を与えた事により、俺にはお前の位置が常に分かるようになり、」


 続く魔王の言葉は律の頭の中に直接流れ込んできた。


「俺とお前だけの念話が可能になる」


 頭の中に言葉が流れ込んできて驚いている律に、魔王は続ける。


「ピンチに陥った時は、俺を呼べ。すぐに駆けつけてやる」


 困惑している律でも、この言葉だけははっきり分かった。

 なぜなら、これを話す魔王の表情が、今までに無いほど真面目で、誠実さを滲ませていたからだ。


「では、街に帰るといい」


 それでも少し寂しそうな魔王に、律は別れの挨拶を告げる。


()()()、アンドロ」


 魔王は目を見開き、驚きの表情を浮かべる。

 だがすぐに笑顔を浮かべ、


「ああ、()()()、律」


 と返してきた。

 これが投稿されている頃には、作者はディズニーに行っています。

 とても楽しみですね。(5月13日)

 わくわく

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