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異世界召喚されたけど家でだらだらする  作者: 白ぶどう寿司
ミルクの幸せまで

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24/25

第2ラウンド

ドォォォォォォォォン!!!


 もう何度目かも分からない炎と光線による衝突音が、両者の間に響き渡る。


 律が最大まで増やした複製(コピー)、その全てをもってしても、ドラゴンの炎を相殺しきる事は出来ない。

 そのため律は、【魔法砲撃】で時間稼ぎしてから【飛行】で回避する、という手段をとっていた。


 しばらく同じ光景、同じ撃ち合いが続いていた。

 "それ"が起こったのは一瞬。【魔法砲撃】を撃つのに必要な魔力の溜めが僅かに間に合わず、ドラゴンの炎が再び【魔法障壁】を焼いたのだ。


「⋯⋯」


 炎が命中しても油断せず、律を警戒していたドラゴンの眼に映ったのは、前回とは違い、ヒビすら入っていない【魔法障壁】。


 律は今回のみ、【魔法障壁】に自らの魔力を使っていたのだ。

 これなら自然の魔力が焼き尽くされても問題なく【魔法障壁】を維持できる。


 そして、まだ炎が撃てる状態ではないドラゴンを【魔法砲撃】で攻撃する。

 その間、僅か0.5秒。

 ドラゴンは直前に反応したものの、避けきれず、光線に身体を晒す事になった。


 律もこれで倒しきれるとは思わず、砲口に魔力を溜める。


 【魔法砲撃】の着弾地点。未だ晴れない土煙の中に、キラリと光る青い光。


 それに気づいた瞬間、律は【魔法砲撃】を光に向かって撃ち込んだ。


 だが、律の予想とは違い、青い炎は飛んでこない。かといって、ドラゴンに当たった感じもしない。


 囮。


 そう気付いた頃には、ドラゴンは手の中に炎を携え、律達に向けていた。


 まだ【魔法砲撃】は撃てる段階ではない。


(やり返された)


 そう思って表情を歪めた律の視界を埋め尽くすかのように、青い炎は家を覆った。


 炎が収まり、そこに残っているのはやはり無傷の家と【魔法障壁】。だが、この時点で律の魔力の5分の1が消費されていた。


(何か、対策が必要だ)


 新たな家の機能を追加するためのHP(ハウスポイント)は大量に貯まっている。


 次の瞬間、炎と光線がぶつかり合い、抜けてくる炎を律が避ける。

 炎が再び放たれるまでの僅かな時間。

 即座にウィンドウを開き、最速で機能一覧までとぶ。


 炎が撃ち出されるまで時間がない。

 一旦【魔法砲撃】撃ってからにするか?と窓を見ようとした律の視界の端。そこに見える【魔力貯蔵庫】の文字。


 もう数秒後には炎は放たれているだろう。

 ウィンドウに集中していたせいか、【魔法砲撃】は溜め切られておらず、恐らく回避すらままならない。


 一か八か。

 律は【魔力貯蔵庫】を購入し、即座に発動した。

 次の瞬間、家は炎に包まれた―――――。


 数秒後、炎が消え、現れたのはまたもや傷一つ付いていない家。

 だが、律の魔力は減っていない。


 【魔力貯蔵庫】は、文字通り魔力を貯蔵する事の出来る機能。

 つまり、少しの間なら自然魔力がなくても【魔法障壁】を維持できるようになるのだ。


 炎が当たる直前、【魔力貯蔵庫】は自然の魔力を貯蔵し、【魔法障壁】を維持したのだ。


「⋯⋯何かしたな?」


 それに気付いたドラゴンが、余裕そうな笑みを見せる。


 その薄ら笑いは、まだ策がある事の証。


「本気で行くぞ」


 ドラゴンが全魔力を解放し、辺りが炎に包まれる。

 次の瞬間、炎を突き破る勢いで飛び出して来た巨体。


 蛇のように長い身体。皮膚を覆う強固な鱗。ただの家くらいなら軽く破壊出来そうな巨大な牙。

 その巨体を守るように、または纏うように周りに浮かぶ青き炎。


 そこにいたのは、"龍"だった。


「ドラゴン⋯⋯だよな?」


「ああ。これが妾の全力形態。固有スキル、【竜の闘士】完全解放の姿じゃ」


 少し引き気味に問いかけた律の言葉に、龍化の影響で野太くなった声が答える。


「では、行くぞ」


 ドラゴンが口を大きく開き、そこに魔力が集まっていく。

 やがて口の中には炎が宿り、赤、青、しまいには紫まで色を変えていく。


 明らかに先ほどとは桁違いな火力。

 それに圧倒されている様子の律に容赦なく(ブレス)が放たれる。

 それに律は【魔法砲撃】で迎撃する。

 しかし、紫の炎は【魔法砲撃】の光線を一瞬で打ち消し、回避する間もなく家に襲いかかった。


 先ほどとは違い、炎に晒される時間が長い。

 龍になった影響でそこすら強化されているのだ。


 炎に晒された時間は約30秒。

 律達には無限にも感じられたその30秒を、【魔法障壁】、いや【魔力貯蔵庫】は耐えきった。


 そして、律はドラゴンに砲口を向ける。


 さっき炎を受けたのはわざと。10個ある複製(コピー)のうち、1つだけを使った迎撃で、他の複製(コピー)は魔力を溜め続けていたのだ。


 一か八かの賭けだったが、【魔力貯蔵庫】は律の思い通りの働きをしてくれたようだ。


 あとは、【魔法砲撃】をドラゴンに当てるだけ。


 恐らく、ドラゴンは動き回って狙いを逸らそうとするだろう。

 そこだけ解決出来れば当てられる。


 律はウィンドウを開き、【魔法砲撃】を強化する。


「リツさん!」


 ウィンドウに集中していた律の意識がミルクに逸れる。


「どうし――――」


 た、と言う前に、律は家に向かって猛スピードで突進してくるドラゴンの姿を捉えた。


「マジか!?」


 突進してくるドラゴンの身体には炎が纏われている。恐らくその青い炎と突進を合わせて【魔法障壁】を破るつもりだろう。


「やるしかない!」


 律は家の外側に魔法陣を召喚し、溜めをスキップするため自分の魔力を消費して撃つ。


 家から放たれた光線は、ドラゴンの纏う炎とぶつかり合い、勝てるはずもなくその大半が消え去った。

 だが、僅かに残った光。その一部が、ドラゴンの本体までたどり着いた。


 瞬間、ドラゴンの動きが止まる。

 【魔法砲撃】の強化。その内容は、属性付与。

 今回付与された属性は電気。効果は麻痺。


 僅か1秒にも満たない硬直は、この戦いにおいては致命的で、ここまで溜められてきた【魔法砲撃】を撃ち込むには充分な隙だった。


「じゃあな、ドラゴン」


 麻痺して動けない巨体。巨大な(ドラゴン)を、【魔法砲撃】の光が飲み込んだ―――――――――――――――――

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