魔王四天王
光線を撃ち終わった後。
龍化が解け、元の姿に戻ったドラゴンが陸まで落ちていった。
気絶はしているが、恐らく倒せてはいないだろう。
だが、この高さから落ちたら流石に無事では済まない。
そう思ってドラゴンを目で追っていた律の眼に、ドラゴンをさっとキャッチする影が見えた。
魔王四天王、エスペ・ヒヅモだ。
「ハウラさん、ルラロさん、そろそろ喧嘩はやめて下さい」
「エスペ兄さんは関係ないんだから黙っててよ」
喧嘩はやめないという意思表示をしたハウラに、エスペは心底疲れたような表情を見せる。
「はぁ⋯⋯⋯⋯。ドラゴンさんがやられました。喧嘩している場合ではないでしょう」
エスペが気絶したドラゴンを見せると、2人は驚愕の表情を浮かべる。
「うぇーマジか~」
「あのドラゴンが⋯⋯?」
ハウラは危機感なく、ついでにやる気もない雰囲気だが、ルラロは本気で驚いているように見える。
「とにかく」
エスペが締めるように律に敵意を向ける。
「やりますよ」
エスペに続き、ルラロ、ハウラが敵意を向けてくる。
恐らく、ドラゴンは仲間から見ても相当強かったのだろう。
そして、そのドラゴンがやられても敵意が消えない辺り、彼らも相当強い。
そんな律の予想通り、解放された彼らの魔力はドラゴンには劣るものの、凄まじいものだった。
次の瞬間、辺り一帯に霧がかかり、魔王四天王が律の視界から消える。
「ルラロさん」
エスペの短い呼び掛けと同時、家が何かにガシッと掴まれる感覚。
「!?」
瞬間蘇るのは、突然変異ゴブリンと戦った時の記憶。
あの時も投げられたが、今回はそれとは比較にならないほどの揺れ。
ドンッ!!!!!
ルラロが召喚した巨大な腕に投げられた家は、何かにぶつかって止まる。
「いったた⋯⋯」
壁にぶつけた体をさすりながら【飛行】を発動させ、移動を試みる。
だが、すぐに何かにぶつかった。
上に行こうとしても、下に行こうとしても、前に行っても後ろに行っても横に移動しても何かにぶつかる。
不可解に思った律が窓の外を見ると、そこには半透明な壁があった。
結界だ。
球状の結界が、家を閉じ込めるように展開されている。
そして、それが段々狭まってくる。
このままいくと、家が潰されてしまう。
律が表情を歪める。
結界で囲われた事により、自然魔力が無くなったのだ。
つまり、【魔法障壁】の魔力供給源が【魔力貯蔵庫】と律の魔力だけになったのだ。
律本体の魔力はなるべく使いたくないし、かといって【魔力貯蔵庫】だけでは30秒ほどしかもたない。
【魔法砲撃】で結界を破るのは、10分近くの溜めが必要だ。
何か策はないか。
思考を巡らせる律の頭に、ある策が浮かんだ。
律は家の大きさををミクロサイズまで縮小し、その分【魔法障壁】も小さくする。
律の策とは、【魔法障壁】の維持に必要な魔力の節約だ。
こうすれば本来30秒しかもたないのを、約100倍、50分まで増やせる。
これなら【魔法砲撃】の分の魔力を使ってもお釣りが来る。
ハウラが結界を狭め、家を押し潰してこようとするが、【魔法障壁】がそれを阻む。
律は家の外側に魔法陣を召喚し、溜め始めた。
10分後、充分に溜められた光線は結界を破り、ミクロサイズの家が姿を現した。
結界から出ても、未だ霧は晴れていない。
これではまた不意を突かれ、さっき以上のピンチに陥るかも知れない。
何か対策はないかを頭をひねる律の脳内に、ピコン、という音が響いた。
律はまた掴まれないように【飛行】で移動しつつ、ウィンドウを開いた。
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スキル、【家召喚】が進化しました!
強化内容の詳細
現在所有している機能のランクアップ
建築素材の増加
耐久性の向上
etsetora⋯⋯
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そこに表示されていたのは、見覚えのあるメッセージと、具体的な内容。
このメッセージを見たのも、随分と昔に感じる。
それほど異世界の生活は濃かったのだろう。
そう思うと何か感慨深いものがあったが、今は戦闘中だ。
律は機能の強化内容をざっと確認し、使えるものがないか探る。
そうして確認していた律の目が、ウィンドウの一点で止まる。
「⋯⋯これは使えそうだ」
律はウィンドウに見つけたそれを発動させる。
瞬間、律の視界はサーモグラフィーのように辺りを見渡す色に染まった。
律が発動させたのは、【飛行】のサブ効果。
マップが進化したものだ。
マップにピンを指せば律の視界にもピンが映り、そこまでの距離が表示される。
これで不意を突かれることなく対等に戦える。
そう思い笑みを浮かべた律が感じ取ったのは、魔力。
「っ!?」
魔王四天王全員が集まっても決して及ばないような、とんでもない魔力量。
律や魔王四天王のそれとは全く異なる、邪悪な魔力の質。
そして律達の肌を容赦なく刺してくる、凄まじい殺気。
この魔力、この殺気は、間違いなく、
「⋯⋯⋯⋯魔王」
律達の前に姿を現した魔王が、声を発する。
「お前ら、俺に何の用だ?」
そう言う魔王の顔には、嗜虐的な笑みが浮かんでいた。
これからは3日に1回投稿でいきたいと思います。
更新遅れてたら⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯気長に待とう!




