魔王四天王 ドラゴン・ポセイド
律達の前に現れた4人の魔族。
それは、それぞれが突然変異ゴブリンを凌駕する力を持つ、魔王四天王の4人だった。
「なんで⋯⋯四天王全員が揃ってるんだ?」
顔を青くして言った律に、エスペは淡々と答える。
「私1人でその魔力の障壁を破るのは不可能でしたからね。仲間を呼んだまでです」
律は、【飛行】で出せるトップスピードをもって、ここから即座に離れる。
仕切り直すため、魔王城には向かわずに、とにかく離れる事を優先する。
次の瞬間、その移動を遮ったのは結界。
魔王四天王の1人、ハウラ・バリラの結界であった。
その結界の魔力を見て、律は険しい表情を浮かべる。
(少なく見積もっても、エスペの結界の10倍は硬い⋯⋯)
律は、壊すのは現実的ではないという判断を下した。
「ねぇ、侵入者さん、僕の結界は壊せそう?」
そう煽ったハウラを、魔王四天王の1人、ルラロ・ヒガンテが宥める。
「こら、ハウラ。そう煽るでない」
「うるさいなぁ、ルラロの爺さんは。別にいいじゃん、侵入者なんだし」
「なんじゃと?」
後ろで喧嘩を始める2人を、エスペが宥めにいき、律の前に残った魔王四天王は1人になる。
「やれやれじゃ⋯⋯あの2人はいつもあれじゃからの⋯⋯。おい、其方。名は何という」
どうやら最後の1人は女性だったようで、思っていたより高い声に律は少し驚く。
「分かっておらぬのか?そこのお前だぞ?」
「⋯⋯律だ」
少し迷ってから返事をした律に、彼女は顔を隠すように上から被っていたローブを脱ぎ捨て、その顔を見せる。
「妾の名はドラゴン・ポセイド。ドラゴンと呼べ」
そう言い放った彼女―――ドラゴンは、好戦的な表情を隠そうともせず、身体に魔力を纏う。
「其方の力、見せてもらおう」
ドラゴンの纏う魔力はさらに増大し、その手には鉤爪が生える。
それに応戦するように律は海賊船型の複製を召喚し、砲口に魔力を溜める。
砲口に込められた魔力。それを見たドラゴンはにっと歯を見せ笑い、
「来るがいい」
律は【魔法砲撃】にて溜められた魔力を解放し、全力でドラゴンを倒しにかかる。
ドラゴンは走り、しゃがみ、時に跳躍して光線を避け続ける。
やがて溜めた魔力を放出しきり、攻撃が止む。
絶好の隙。
それを見逃さずに距離を詰めてきたドラゴンは、【魔法障壁】を鉤爪で攻撃し始める。
その攻撃スピードは段々上がっていき、目で追えないほどに早くなっていく。
それでも【魔法障壁】には傷一つつかない。
やがて砲口に魔力を充填し終え、また魔力の砲撃が開始される。
するとドラゴンは【魔法障壁】から離れ、光線を避け始める。さっき見た流れだ。
そしてさっきと変わらずドラゴンは全ての光線を避け切り、レーザーの雨は一時停止する。
ここまでは先ほどと同じ流れ。だが、次にドラゴンが取った行動は、先ほどとは違うものだった。
距離は詰めずに、手の中で何かをこねるような動作をしている。
一見何の意味もないその動作に律が不可解に思ったのも束の間、ドラゴンの手元に魔力が集い、小さな火球が現れる。
その火球の温度、そして込められた魔力はどんどん膨れ上がっていき、標的はお前だとばかりに家の、いや律の方向へ向けられた。
律に向けられた火球はもはや青き炎となっており、その温度の高さが伺える。
ダメ押しとばかりに膨れ上がる魔力、そしてそれを纏った青き炎は、満を持して律に放たれた。
レーザーのように細長くなった炎を迎え撃つのは、ちょうどそのタイミングで魔力を溜め終えた【魔法砲撃】。その光線。
ドラゴンと律、その中間地点でぶつかり合った青と白。2色の光は、それぞれがそれぞれを破壊し、燃やし、相殺した。
威力は互角。少なくとも、ドラゴンの背中に翼が生え、炎の火力が上がるまでは、互角だった。
「!?」
そう驚愕の声を上げたのは律。
理由は2つ。ドラゴンの背中に龍を彷彿させる翼が生えたのと、それと同時に炎の火力が跳ね上がったからだ。
突如跳ね上がった火力、そして魔力に為す術なく【魔法砲撃】は押し負ける。
その結果、【魔法障壁】は青い炎に晒される。
その炎が止み、現れたのは、傷一つ付いていない家、そして僅かにヒビが入った【魔法障壁】だった。
「【魔法障壁】に⋯⋯ヒビ?」
そう、これまで一度も破られる事のなかった【魔法障壁】に、ヒビが入っていたのだ。
「おや。エスペから相当硬いと聞いていたが、案外脆いものだな」
ドラゴンの炎により、【魔法障壁】が僅かに破壊された。
その原因は、【魔法障壁】の原理にあった。
【魔法障壁】の展開に使っている魔力は、自然界に空気のように存在している魔力。
ドラゴンの圧倒的な火力は、その魔力を空気ごと焼き尽くしたのだ。
その結果、【魔法障壁】展開に必要な魔力源がなくなり、【魔法障壁】にヒビが入ったのだ。
その事を、ドラゴンはまだ知らない。
そして、律も理解していない。
その結果生まれた双方の判断は―――――
(あの火球には、絶対に当たれない!)
(さらに火力を上げ、次こそあの障壁を燃やし尽くす!)
律はさらに多くの複製を召喚し、その砲口に魔力を溜める。
ドラゴンは口に牙を生やし、肌に鱗を纏い、頭には角を生やした。
律とドラゴン、2人の戦い。その第2ラウンドが、今始まった。
今回ミルクとか他の四天王の出番がなさすぎて困ってます。
てか喧嘩しすぎだろ四天王の3人(作者)




