13.京子VSテロ犯
立花の先導で、翠たちはスタッフオンリーの扉の奥にあるエレベーターへと乗りこんだ。「ご武運を」との翠の言葉を残し、エレベーターは上がっていった。
それを見送った京子は階段を昇る。七十八階の倉庫部屋に入るスチール扉のわきでいったん待機、状況を整理した。
立花たちにテロ犯一人が排除されている。自分たちの存在がすでにバレているのは間違いないが、どこの組織でどんな構成かは判明していないはずだ。警戒はされているが、テロ犯たちも次の一手を打ちあぐねているのだろう。
あちらさんがグズグズしている隙に、一気に制圧してやる!
京子はワンピースをウエストあたりから引きちぎった。白いショーツがあらわになるが、これで動きやすくなった。
さっと扉を開けてまた脇に隠れる。同時に扉の奥から銃弾が放たれ、コンクリートの壁を穿つ。十発ほどでいったんはおさまった。
京子は先ほど引きちぎったワンピースの切れはしを、扉のほうに投げた。再び銃声が連続で響き、それが止んだタイミングで中に滑りこむ。
左右に二人、銃を持った男がおり、その頭を撃ち抜いた。すぐさま横に飛び、コンテナの陰に隠れる。
七十八階はパーティションのない大部屋だが、倉庫階だけあって多くのコンテナが並んでいた。単独で多人数を相手にするにはもってこいだ。
京子は射殺したテロ犯から、防弾チョッキを奪った。それを装着するとすぐに、コンテナを拳で叩いた。
カンッと甲高い音が響く。それに反応してタタタッタタタッとテロ犯たちが銃を撃ち乱し、コンテナを削り、白い壁を穿つ。
テロ犯など戦闘に関しては、やはりアマチュアだ。あらためて京子は思う。
京子の位置はすでにテロ犯に知られていたが、こちらはテロ犯がどのコンテナに隠れているかわからない不利な状況だった。それが先の銃声や着弾点から、だいたいの位置は把握できた。
コンテナの上を意識した弾道がなかったのも、アマチュアのそれだ。下から上は狙いにくいというのに、京子がコンテナの上を渡ってくるという発想が、テロ犯にはないのだ。
京子はコンテナの上縁をつかんでスイッと登ると、迅速にコンテナ間を跳び渡って、上方からテロ犯を狙撃していった。頭部を撃たれた男たちがバタバタと倒れていく。
入口から部屋の奥までの七十メートルを十秒で駆け跳んだ京子は、五人のテロ犯を射殺すると同時に、残敵の把握も行っていた。
射線が通らず仕留め損ねたのはあと三人、そのうち一人は遠くない。
さて、次はどうでるか……。コンテナから降りた京子が、その陰から顔をだそうとした瞬間、空気の澱みを察知した。
とっさに退きながら銃をかまえようとしたが、身軽な格好の男に銃を蹴り上げられた。
男はそのまま流れるような手さばきでナイフをだし、京子の首筋を狙って奔らせる。
それより先に、京子が放っていた前蹴りが男の胸を捉えた。
速度はあるが威力はない前蹴りで、思惑通りに男はバランスを崩してナイフは空を切る。
男はすぐさま体勢を整えてナイフを突きだすも、その隙に銃を拾っていた京子が容赦なく顔面を撃ち抜いた。
歯ごたえのある相手だった。テロ犯ではなく、それに雇われた傭兵であろう。
ともあれ残りはあと二人で、その二人とも傭兵だという可能性がある。
京子があらためて警戒してすぐ、二人の男が騒々しい音をあげながら出入り口の扉に駆けこむ。ほとんどパニック状態におちいっているようだ。
京子はあきれながら、その二人を背後から射殺した。
一息つくこともなく、部屋を出て階段を上がる。
七十九階倉庫のスチール扉の脇に身体をよせた。この中にも、下の階と同様に十人ほどのテロ犯がいるはずだ。
京子はさっと扉を開け、すぐに扉脇に避難した。すぐさま銃声が響くものだと思っていたが、反応はない……。
嫌な予感をいだきながら、部屋の中を覗いて愕然とした。
部屋の中央でコンテナが階段状に積み上げられ、天井には人が通れる穴が開けられている。エレベーターなどなくても、その穴からテロ犯たちは屋上に出られたのだ。
十人のテロ犯を相手に、立花たちはなすすべなく、殺されてしまったであろう……。
「くそっ! 私のミスだ!」
もう手遅れだとわかっているが、それでも歯を喰いしばりながら、積まれたコンテナを駆けあがって屋上に飛び出た。
だが京子が目にしたのは、無傷に見える立花たちと、テロ犯であろう六体の死体だった。
その前で固まっていると、「一足遅かったな」と、自慢げにいったのは真理亜だ。




