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第八話:逃げるように始まった旅

「スキル"剣聖"」


 ユウリのオーラとレイラの剣が相対し、世界に暴風が響く。


「街中でやる規模の戦いじゃないねぇ」


 壁を作る木々がめくれ、食器が舞うカフェの中だ。ウツシミは息が一瞬出来なくなった。


「しょうがないです。なるべく早く、私は死なねばならないのですから」


 真っ黒なオーラがユウリの付近よりウツシミに向かい続け、ウツシミの頬をかすめた。レイラの真っ白な皮膚から、真っ赤な血が滴る。


 ウツシミは、剣を横一文字に振った。同時に、横一文字の斬撃が、レイラに向かう。その斬撃を耐えられる存在はきっと、そう多くない。おそらくその斬撃だけで、100人ほどの軍隊だったら皆殺しにできるほどの代物だ。だが、ユウリには全く意味をなさない


「私のオーラを、全く傷つけられておりません。もう少し頑張ってください」


 ユウリは不満そうな様相で、口をへの字にした。


「殺せないんだよねぇ。二つの意味で。僕は君をコピーしなきゃならないし、そもそも君は、僕より強い」


 ウツシミは口をゆがませ、とても愉快そうな表情をした。


「そんなことはありません。ジャバラと名乗る女性が、あなたなら私を殺せるって言ってたんですから」


 ユウリのオーラが再度、ウツシミの方に向かう。


「私を殺さないなら、殺されるのは貴方です」


 ウツシミは瞬間的に移動し、そのオーラを避けた。


「"剣聖"のスキルで身体能力が圧倒的に向上してなかったら、死んでたよ」


 ウツシミはユウリの背後に現われ、自らの剣を超速でユウリの首元に向かわせる。


 同じことの繰り返しのように、真っ黒なオーラがユウリを守った。そしてレイラのものである剣が、オーラに捕まり、ウツシミの手からは得物がなくなってしまった。


 ウツシミは、ユウリから距離を取る。


「ふふふふふふ」


 ウツシミは、不敵に笑った。


「何を笑ってるのですか? このままだと貴方は、私に殺されてしまうのですよ?」


 ユウリのオーラがウツシミに向かう。ウツシミは、本来の姿である真っ黒な状態に戻った。そのウツシミの眼前で、ユウリのオーラが止まった。


「あと私が少しだけ力を込めたら、貴方は死にます」


「いいよ、殺しな」


 ウツシミは無数の眼を露わにし、ユウリを見る。


「僕は過去戦争において、他者の命をたくさん奪った。自らの命が奪われるのを嫌だとは思うけど、仕方ないことだとも思う」


「……………!!」


 ユウリは、眉間にしわを寄せる。


「諦めるってことですか?」


「うん」


「そんな……」


 ユウリは真っ青な顔で、困ったようにうつむいている。


「どうぞ、殺しな」


「意地悪ですね」


 ユウリはうつむいたまま、ウツシミを睨む。


「私が貴方を殺せないのを知ってるくせに」


「うん、君は僕に殺してほしいんでしょ。その僕が死んじゃったら、君を殺せなくなっちゃうからね」


 ウツシミは首を左右に動かし、その首はぽきぽきと鳴った。


「だから、提案なんだけど、僕と一緒に旅に出ないかい? 僕は自らの持つ"コピー"の能力で君をコピーしたい。君は、僕に殺されたい。そしてそのどちらの願いも、今は叶わない。一緒に行動することに、必然性がある気がするけどね」


 ウツシミは右手をユウリの前に突き出す。ユウリは顎に手を当て、考えるそぶりを見せた。


「まぁ、それしかないみたいですね」


 ユウリは、ウツシミの手を握り返した。そして、ユウリとウツシミの握手が成立した。ユウリの手に、冷たさが広がる。


「さて、じゃあ行こうか」


 ウツシミは、そう口にした。


「ここに魔物がいるのだな!!?」


 そんな兵士の声が響いて来たことにより、ウツシミとユウリはまさに逃げるように、二人の冒険を開始した。

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