第七話:視野
とある街において、ウツシミはとある少女を見た。
「私を殺して下さい」
ユウリという名の少女だ。黒髪ショートカットで素朴な様相だが、可愛らしい顔をしている。
「う~~~~ん、殺してもいいんだけど、疲れるからやだ」
レイラの姿になっているウツシミはとあるカフェで、コーヒーを飲んでいた。
「僕にはやらないといけないことがあるんだ」
ウツシミは5人の王と1人の少女をコピーするのをどうやって全うするかを考えていた。
「ジャバラっていう名前の女性から聞いたんです。この街に私を殺してくれる存在がいるって。その存在は剣聖の姿をしてるって言ってました。つまりそれは、貴方ですよね? レイラさん」
ウツシミはゆっくりと顔をユウリに向けた。
「コピーするのは、5人の王と、"1人の少女"か」
ウツシミは、ユウリを見た。
「ジャバラが僕の元に向かわせたってことは、そういうことなのかもしれないな」
ウツシミは人目もはばからず、真っ黒な姿になった。
「……ッ」
ユウリはウツシミの姿を見て、驚いた。
「か、怪物だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
周りの者達はウツシミの姿を見て、驚いて逃げ出した。
「兵士達を呼ばれてめんどくさくなる前に、さっさとすませよう」
ウツシミの身体のいたるところに真っ赤な目が現れ、ユウリを見る。オーラが納まっている状態のユウリは、ただの少女に見える。だがウツシミは、とてつもなく不思議な感覚を覚えた。
(この少女の中を観察しては駄目だ)
それはウツシミの本能からくる思いである。ユウリの中にあるオーラに怯えたのかどうなのかは分からない。
だがウツシミは、ユウリを観察することを辞めた。いや、できなかった。体が震えるのだ。まるでドス黒い何かが待ち構えているかのような、嫌な嫌な感覚に陥る。
そしてウツシミがコピーできるのは、相手の内面を理解し、憧れを抱けた者だけだ。だからこそウツシミは相手をコピーする前に、真っ赤な目で相手を観察する行為を行う。
「この少女なのかい、ジャバラ? 僕がコピーすべき一人の少女ってのは」
ウツシミはそう理解して、笑った。
「何を納得してるんですか? 私は貴方に殺してもらわなければならないんです。そうじゃないと、この力が世界を滅ぼしてしまうから」
ユウリの身体から、真っ黒なオーラが溢れる。
ウツシミは首を横に振った。
「いいや、僕は君を殺さないよ。僕のこの目で君は観察できなかった。だが僕は、君をコピーする必要がある。ならば僕が君に対してとるべき行動は一つ。長い時間をかけて、数多のやり取りを経て、君を理解する。まぁ、普通の人間が自然にやってることだね」
ウツシミはうんうんと頷いているが、ユウリは不服そうな顔。
「それじゃ、駄目なんです。私は、怖いんです。私の身体の奥にいる終末の化身の力が、日に日に強くなってきています。この力にいつか私は飲まれ、世界を滅ぼす者になってしまうんじゃないかとすら思うんです。いえ、そうだと確信してます。だから私は…………、死なないとならないんです!!!!」
ユウリの身体から、真っ黒なオーラが溢れ始めた。
「殺してくれないのなら、殺させるまでです」
ユウリは確固たる目で、ウツシミを見る。
「ふふふふふふ、少女らしく、まだ視野が広くないみたいだね」
ウツシミは、レイラに姿を変えた。だがウツシミには分かることがある。
「こりゃあ、剣聖の力を使っても、勝てないかもしれないなぁ」
ウツシミは笑いながら、ユウリを見た。
「行きます!!!!」
ユウリは真っ黒なオーラをまといながら、ウツシミに向かった。




