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第六話:死なねばならない少女

「早く死ななきゃならない」


 とある少女は、そう言葉を発した。


 その目はとても凛々しい。自らがやるべきことはそれで正しいのだと一縷も疑っていない目で、そう告げるのだ。


 少女は高台から飛び降りた。重力に従って高速で地面に落ちる少女は、自らの命がこの落下で終えることを祈ったまま、全てをゆだね、落ちてゆく。そして、かなり大きな落下音が付近に響いた。


「やっぱり駄目だ」


 地面は陥没し、クレーターのようになっている。だが、少女は無傷であった。真っ黒なオーラが付近に溢れている。そしてそのオーラが意思を持つかのように、少女を守ったのだ。


「どうして、死ねないの? 私は死ななきゃいけないのに」


 少女は苦々しい顔で、そう告げた。


「私は、化け物だから」


 少女は歩きだす。死ねる場所を探すのだ。


「消えろ、終末の化身の力を受け継いだ女め!!」


「あのオーラは数百年前に暴れ、この世界を絶望に陥れた怪物、終末の化身のものであろう。ああ、恐ろしや」


 過去何度もそんな声が、ユウリという名のその少女の元に届いていた。


 ユウリのまとう真っ黒なオーラの異常さ及び圧倒的な力を畏怖した者達は、ユウリを迫害した。怖かったのだ。


 この地に伝わる伝承では数百年前、終末の化身という存在が現れ、この世界を終らそうとした。希望の化身という存在がその命を持って終末の化身を滅ぼさなければ、この世界は終わっていたとされている。


 終末の化身は真っ黒なオーラをまとい、そのオーラから魔物が生み出されたというのが伝承だ。現在魔物の王として君臨しているガラムハザールですら、終末の化身のオーラにより生み出された存在なのだ。


 つまり今なお終末の化身の影響は、この世界を苦しめている。


「私は、死ななきゃならない。終末の化身を復活させないために」


 ユウリは、自らの手を見る。


「スキル"終末の化身"」


 ユウリの手に、真っ黒なオーラが溢れる。


 ユウリの持つスキルの名は、今ユウリが口にしたように、"終末の化身"というのだ。これがユウリ及び周りの者が、ユウリが終末の化身の力を受け継ぎし者と判断した理由だ。


(ていうか、確実に受け継いじゃってるよね)


 ユウリは、頭を抱える。


(この力が暴れる前に、私は死ななきゃならないんだ。この力は今現在も私には制御できてないんだから)


 ユウリは自らが死ぬことを勝手に防ぎやがったオーラを見て、そう思った。


「勝手に出てこないでよ」


 普段は身体の中に納まっているのに、自らの命の危機になると現れるそのオーラに対してユウリは苛立ちを感じる。


「化け物」


「この世を終らせる存在」


「消えろ」


 そんな声がユウリの耳に過去、何度も何度も届いた。


 ユウリは思う。


「普通に生まれてたら、どんなに人生は楽しかったんだろう」


 ユウリは、涙溢れる目をごしごしとこすった。


 誰もいない荒野、ユウリは歩く。自らを終らせる術を探るために。


「くふふふふふふふふ」


 ユウリの耳に、不思議な笑い声が届いた。


「誰!?」


 ユウリはドキッとして、そちらの方を見る。


「私は、ジャバラって言うんだ」


 そ奴はユウリに笑いかける。


「君は死にたいのかい?」


「え、ええ。私は死にたい、いえ、死ななきゃならないんです」


 ジャバラは大きく頷いたのち、とある方向を指さした。


「君の願いを叶えることができる可能性がある存在がいる。こちらの方角にまっすぐ行った街にいる存在だ。きっと剣聖の姿をしているそやつに話しかけてみな」


 ジャバラはそれだけ言い残した後、その場から影も形もなくなっていた。


「え……!?」


 ユウリはジャバラがいきなり消えた事実に少なからず驚愕する。


 だが、ユウリは足を進める。先ほどジャバラと名乗った女性が伝えた言葉は、偽りではない。それは、あの女性のまとう雰囲気から不思議と理解できる。


 だからこそユウリは足を進める。少しでも早く、自らの命を終らせるために。

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