第四話:本当の自分を見つけ出すために
ウツシミは、歩いていた。獣道は歩きづらい。だが、歩く。
「ここら辺にあの占い師の言っていた、"常夜の滝"があるはずだ」
ウツシミは青年剣士の前から去った後、とある場所に向かった。
"占いババァの館"
そんな看板が掲げられている館を、ウツシミは見た。
そしてその館の中でウツシミはとある老婆の前に立った。テーブルに置かれた水晶は、ウツシミの姿を映している。
「あれ?」
ウツシミは水晶に映った姿を見て、首を傾げた。
「ほっほっほ、この水晶には、偽りの姿は映らないのじゃ」
水晶のそばにいる老婆は、水晶に映る真っ黒な姿のウツシミを見ても、驚きすらしなかった。
ウツシミは、レイラの姿から真っ黒な状態に姿を戻した。
「あなたに会いに、この街に来たんだ。伝説の占い師のあなたに、僕が何者なのかを教えてもらいたい」
「ほっほっほっほっほ、そなたがそれを望むことなど、分かっておるよ。そなたが来ることも、分かっておった」
老婆は、楽しそうだ。しわのついた顔に一層しわをつけるかのように笑っている。
「じゃが、残念ながらそれはわしの力を使っても分からぬ」
水晶玉が、真っ黒な状態に変わっていった。
「そなたの本来の姿を占おうとしても映らないのじゃ、何もな。じゃから、わしにも分からん」
「あらららら、てことは、無駄足だったってことだね」
ウツシミはくるりと身体をターンさせ、占いの館から出ようとした。
「ほっほっほ、待ちなさい。確かにわしにはそなたの本来の姿は分からぬ。だが一つだけ、分かることがある。そなたの進むべき道じゃ。そなたは、"常夜の滝"に向かいなさい。その地に何があるのかは分からぬ。だが、わしの占いではそなたはそこに向かうべきとされている。わしがそなたに伝えられることは、それだけじゃ」
「なるほど、ありがとう」
ウツシミは老婆にお礼を言って、その場所から去った。
だからこそウツシミは今、山道を歩いている。
手に持つ松明が付近を照らさなければ、歩く道すら分からない程、付近が暗くなってきた。
「まだ昼間なんだけどね」
その滝の付近は常に、真っ暗である。不思議と滝に近付けば近づく程、夜のような様相になっていく。
(常時暗い場所にあるというただの滝に、何があるのだろう?)
ウツシミには分からない。だが今、自らが何者なのかを探すためのヒントは、そこにしかない。だからウツシミは松明片手に、獣道を進む。
そしてたどり着いたそこでウツシミは、息を飲んだ。
「発光蝶々が美しいね」
青白く光るその"発光蝶々"が付近を飛び回ることで、幻想的なその場所だ。その奥には確かに、滝が存在している。
「どうしてあの滝も輝いているんだろう?」
その滝は、本来ただの滝のはずだ。暗い場所にあるだけのただの滝。だが今その滝は、付近にいる発光蝶々の光に負けず劣らず輝いていた。
「くふふふふふふふ、待っていたよ、ウツシミ君」
発光する常夜の滝に、一人の存在が映った。
「君は?」
ウツシミは膝まで水につけ、その滝に近づいて行った。
「私は、本当の君を知っている者だよ」
女性物の甲高い声が響いた。
「教えてくれるかい?」
ウツシミは当然そう尋ねる。
「くふふふふふふふふ、それはできない。私が教えても、なんの意味もないから」
フードつきのコートをまとった女性だ。フードにより顔の半分は隠れているが、フードの下で光る大きな目が、ウツシミを映す。
「私は、ジャバラっていうんだ。本当の君が何者なのかは教えないけど、君が本当の自分を探し出すためにどうすればいいのかは、教えてあげるよ。君の持つ"コピー"の能力で、とある者達をコピーするんだ」
「とある者達?」
「そうだ。精霊界の王、魔界の王、天界の王、人間界の王、獣界の王、そして、とある少女の6人だ。その6人を君がコピーした暁には、君は本来の自分を思い出すことができるだろう」
ジャバラは、そのように断言した。




