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第二話:物語る目

 雨が降りそうな、どんよりとした曇り空の下、フードつきのコートをまとったウツシミが歩いていた。


(レイラさんの姿は見せない方がいいんだろうね)


 ウツシミはそんなことを思うが、今現在としてウツシミは、レイラしかコピーしておらず、他に姿を変えられる対象がいない。


(さすがに、真っ黒な人型の何かである本来の状態は見せない方がいいだろうね)


 ウツシミはそう理解しているからレイラの姿になってこそいるが、その姿を隠しながら歩く。




 その数日前、ウツシミは剣の国の国王の前に立っていた。


「おお、剣聖レイラ、先の戦いでは大義であった。よくぞ自らの欠点を克服し、この国に勝利をもたらしてくれた」


「おほめにいただき、光栄です」


 ウツシミは頭を下げた。勝利したお祝いムードとは程遠い雰囲気の玉座だ。複数人いる家臣達の顔は、強張っている。そしてまるで化け物でもみるかのように目を見開いて、ウツシミの方を見ているのだ。


(怖いんだろうね、僕が)


 ウツシミは、そう思った。


(他人を傷つけなかったレイラさんは無能扱いで、他人を傷つける僕は化け物扱い。なんとも人間ってのは、勝手なものだなぁ)


「して、レイラよ。申し出はなんだ? なぜ、この場所に来た?」


「私は、この国から離れようと思います。剣聖として、この国だけでなく、世界の困っている人を救いたいのです」


 ウツシミは、思う。


(レイラさんだったらこんなことを言うだろうからね)


「ほう?」


 国王は眉間にしわを寄せた。


「駄目じゃと言ったら?」


「無視して出ていきます」


 ウツシミは真っ青な瞳で国王を見る。


「そうか。なら、しかたいのぉ」


 国王が立ちあがった瞬間、付近にいる家臣達が剣を抜いた。


「ほっほっほ、ここにいる者達はそなたの同僚じゃ。心優しきそなたに、同僚を傷つけて出ていくことができるか? レイラよ、貴殿のおかげで我らは魔法の国を手中に収めることができた。そして前回は防衛線じゃったが、次は侵略戦をしたい。剣の国が領土を広げるには、そなたの力が必要じゃ」


 家臣達は、剣先をウツシミに向けている。


「こんな奴らを守りたかったのかい、君は?」


 ウツシミは誰に言葉を発するでもなく、そう告げた。


「スキル"剣聖"」


 ウツシミが持つ真っ黒な剣が、輝きをまとった。そして直後、ウツシミはまるで瞬間移動かのように動いた。剣を国王の喉元に突き付けている状態のウツシミは国王に向けて言葉を発する。


「分かってるでしょ? 私が本気になれば、この場にいる者なんて皆殺しにできる。そして今の私はやろうと思えば、それもできる」


 ウツシミは国王の目を見る。国王もウツシミの目を見る。国王は、言葉を絞り出す。


「その目から分かる。あともう少しでも我らが貴様の行く手を妨げたら、本当に皆殺しにするつもりなのじゃな」


 国王は息を吐いた。


「そうなのであれば、我らが貴様を止めることはできぬ」


 その言葉を背後に、ウツシミは悠々と剣の国の城から出た。


「皆殺しにすることは造作もなかった」


 ウツシミはぶつぶつ言いながら、長く下に続く階段を降りる。ウツシミの前に現われるレイラの同僚であろう者達は、レイラの姿をしているウツシミから目をそらす。


「でも、殺さなかったよ。君が、それを望んでいたからね。殺した方が話は早かったんだけどね」


 そう言いながらウツシミは、剣の国から出た。そして、自らが何者なのかを探る旅に出た。




 そんなこんなでウツシミは、フードを被ってとある街にいたのだ。


"剣の国と魔法の国の戦争、剣の国の圧勝。剣聖レイラが覚醒し、魔法の国の主力兵士達を皆殺しにした"


 そんな文言の新聞をウツシミは、ちらりと見た。だが興味もなく、歩き続ける。


 そんなウツシミの耳に、大きな声が届いた。


「見つけましたよ、レイラ様!!!!」


 ウツシミが振り返った先にいたのは、青年剣士であった。ウツシミは、かゆくもない頭をかく。


(あんまり大きな声でその名前を呼ばないでほしかったなぁ)


「レイラ? 剣聖の?」


「魔法の国の兵士達を皆殺しにした?」


 そんな言葉が付近に溢れて、平穏な街並みは騒がしくなった。


「なんかよう?」


「僕は、あなたに物申したかったのです。僕は、優しかったあなたが好きだったんです。強大な力を持ちながらも、他人を傷つけないあなたが」


「へ~~~、ありがとう」


 ウツシミは軽く会釈してから歩き出そうとした。


「待ってください!!!!!!」


 青年剣士が叫ぶ。


「僕が貴方の目を覚まし、優しかった貴方を取り戻してあげます!!!!」


 青年剣士の目はとても煌びやかで、自らの行動が間違っているとなどみじんも思っていないようであった。


(おこがましいなぁ)


 ウツシミは、ただただそう思った。


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