第十話:愚者
「ポンコツ剣聖レイラと、終末の化身の生まれ変わりユウリのコンビとは、面白いですね」
グシャグシャはナイフにてジャグリングを始める。ウツシミとユウリは立ち上がった。ウツシミの体中に、真っ赤な目が現れる。
グシャグシャは顎に手を当てて、わざとらしく首をかしげる、
「あなたはわたくしの情報網の中にも、情報がないですね。一体何者なんでしょう?」
ウツシミの数多の目がグシャグシャの方に向いた刹那、グシャグシャの姿は消えた。
「流石にその目で見られるのは、恐いですよ?」
(この目で見ることによりコピーできるだけじゃなく、その者がどんなものか分かるんだけどね)
グシャグシャは付近の木の枝の上に腰かけている。ウツシミは姿をレイラのものに変えた。
「この姿がお望みなんだろ? スキル"剣聖"」
ウツシミは剣を振り、グシャグシャの身体は真っ二つになった。
「あれ?」
ウツシミは、不思議な感覚に陥る。
「殺すつもりじゃなかったんだけどな?」
ウツシミは首を傾げる。
「さっきの瞬間移動の如き移動能力で避けれると思ったんだけど、少し買いかぶりすぎてたかな? まぁ、どっちでもいいけど」
今、グシャグシャの身体は上下で真っ二つに斬れ、地面に横たわっている。
「危ないなぁ。わたくしじゃなかったら、死んでますよ?」
横たわっているのとは別の場所に新たに現れたグシャグシャが笑う。先ほどの攻撃などなかったかのように、傷一つない状態でだ。
「へぇ、不思議な力を使うものだね」
ウツシミは、剣を天にかざした。
「来な」
「うふふふふふふふふ、行きませんよ」
グシャグシャは首を横に振る。
「むむむ?」
「行くわけないじゃないですか、普通に。だって、剣聖プラス終末の化身でしょ? 勝てるわけないじゃないですか。いくら僕が愚かだって、そんなことくらい分かりますよ」
グシャグシャは楽しそうにトランプをシャッフルしている。そして一枚をひいた。そこには、グシャグシャの姿に酷似した、ジョーカーが描かれている。
「なら、なぜこの場に現れたんだ?」
「うふふふふふふふふ、美味しそうなお肉の匂いにつられてですよ」
ウツシミは剣を振った。付近一帯の木々が真っ二つに斬れ、ウツシミ前方のうっそうとした森は開けた場所に変わった。当然その斬撃の先にグシャグシャがいたのだが、グシャグシャは相変わらず楽しそうにシャッフルしている。
「んもう、乱暴だなぁ」
「強いな」
ウツシミは、剣を納めた。
「うふふふふふふふふ、いじわるばっかりしててもしょうがないですね。わたくしは、確かめに来たんです。君が街で暴れるもんだから、情報が回ってきてたんです。ポンコツ剣聖レイラが、真っ黒な姿の魔物に身体を乗っ取られたって」
グシャグシャはおもむろに瓶に入った酒を口に入れた。そしてその口から酒を空に向けて吐く。するとその酒の中のアルコールが燃えるように火が生じ、薄暗い付近を一瞬明るくした。
「まぁ、噂の通りだったよ。君が、レイラの身体及び力を奪ったんだろ? さっき見せた無数の赤い目で相手を見るってのが、力を奪うための条件だとわたくしは推測します」
ウツシミは、頭をポリポリとかいた。
「君のどこが愚かなんだよ」
「その反応、当たりってことだよね。良かったぁ、あの目で見られた際に逃げてて」
グシャグシャは胸をなでおろす動作をする。
「つまり、剣聖レイラは得体の知れない者に自らの能力を奪われた、もしくは与えた。そしてそいつは終末の化身の生まれ変わりと共に旅をしてるっていうことですね」
グシャグシャは、自らの顔を手の平で覆った。
「ほんと、どこまでもポンコツだなぁ」
今までの明るい声色でなく、低いトーンのグシャグシャの声が響いた。
「また、わたくしが対処しないといけないことが増えるじゃないか。人間界の王であるこのグシャグシャ様が対処しないといけないことがね」
グシャグシャは静かなトーンで、そう告げた。




