第十一話:人間界の王
「人間界の王か」
ウツシミはグシャグシャの言葉を繰り返す。当然その言葉は、かなり重い意味を持つ。
「君は、どうでも良さそうだね。終末の化身の生まれ変わりちゃん」
グシャグシャはナイフをユウリの方に投げ、真っ黒なオーラに妨げられた。ユウリは普通に肉を食べている。
「だって貴方、私を殺せないんでしょ? なら、ごめんなさい、興味ないです」
ユウリは肉を食べ続けている。先ほどのレイラの斬撃も、ユウリは真っ黒なオーラで容易に防いだのだ。
「いや、もしかしたら彼に興味を持つべきかもしれないよ?」
ウツシミはそう言いながら、ユウリの横に立った。
「ジャバラから言われたんだ。僕は、君を含む6人をコピーする必要があるらしい。そしてあいつはそのうちの1人だ。全員をコピーした暁には僕は、本当の自分を取り戻すことができるらしい。そして、僕は思うんだ」
ウツシミは、少しだけ間を溜めた。
「今の僕じゃユウリは殺せない。でも、本当の自分なら僕は、ユウリも殺せるんじゃないかって。だからジャバラは、君と僕をめぐり合わせたんじゃないかな?」
ユウリは肉を置いて、立ち上がった。
「なるほど。なら、手伝いましょう」
ユウリがそう言った瞬間、付近に寒気が広がる。
「スキル"終末の化身"」
その言葉と共に、ユウリの付近に真っ黒なオーラが、一層現れた。
「捕まえればいいってことですよね? 私があの人を捕らえ、ウツシミさんが真っ赤な目で観察すれば、目的は達成されると」
ユウリはウツシミにそう言い、ウツシミは頷く。ユウリは、グシャグシャを見た。
「死なないでくださいね。このオーラのコントロールを私は、あまりうまくできなんです」
「うふふふふふふふふ、頑張ってみるよ」
グシャグシャがそう言うや否や、真っ黒なオーラが付近に広がっていった。一つのオーラがグシャグシャの方に向かい、その腹を貫いた。その刹那、グシャグシャの姿は完全に消え去った。
ユウリは静かに言葉を発する。
「さっきから見ていましたが、あなたが使うのはその能力ばかりです。どういう能力かは分かりませんが、あなたはいくらダメージを受けても死なず、ダメージを受けた瞬間に消え、まっさらな状態で現れる」
ユウリの出す真っ黒なオーラが、森一帯に蔓延する。
「ならば、現れた瞬間に捕まえ続けるのみです。そうすれば、あなたにできることはありません」
「野蛮な娘だなぁ」
グシャグシャは健康体にて、ユウリの付近に現れた。そのグシャグシャの方に、ユウリのオーラが向かった。
だが、グシャグシャの眼前でオーラの動きは止まった。
オーラの主であるユウリが、倒れてしまったのだ。
「そのオーラを扱うのはあなたにとって、とても負荷がかかるのでしょうね。まだ子供であるあなたには数十秒ほどしか使えない程の負荷が」
グシャグシャはナイフを、倒れたユウリに向かって投げた。そのナイフはユウリの身体から現れるオーラに、防がれた。
「気絶してても、攻撃は通さないってことだね。ほんと、恐ろしい力だ。さっきのオーラも、この少女の体力が持てば、国一つ容易に滅ぼせるほどに強大なものだった」
グシャグシャは納得するかのように、頷く。
「ところで……」
ウツシミは気絶したユウリにはさして興味もなさそうに、グシャグシャを見る。
「人間界の王は、そんなふざけた男だったっけ? 確か僕が聞いた話では、エドロワールって言う、真っ当な人間だってことだったんだけど」
「うふふふふふふふふ、ああ、そうだね。それが表向きのわたくしの姿。堅苦しい堅苦しい、王様の姿。でもそれじゃ、あんまりにも遊び心がなくてつまんないから、人目につかない時にわたくしはこうして、道化になるんだ」
「へ~~~~、ならいいや。君が人間界の王である事実に間違いがないのであれば、格好や名前の違いなんて、大した意味を持たないから」
ウツシミは、そう口にした。




