第十九話 再会の音
(信じられねえ……これ現実かよ)
広々とした空間を呆然と見渡す。丸い天井、ほの暗い空気、壁に掛かる幾つものランプの明り。
目線を下げると、稽古を受ける門下生たちの姿が映る。そして彼らの先には……俺たちが入った扉以外の五つの扉が佇んでいる。―――あれ、一番右側の扉だけ、他と違って大きいような気がする。
「お前ら驚いたか? ここが正真正銘、悪退の眼の本部兼、稽古場だ。全員思ってるだろうが、無駄に広いよな? 流石は政府裏公認って感じの組織だ! あはははは!」
(政府裏公認……?)
政府って、あれだよな。よく分かんねえけど、国に関する重要なことを決める人たちの集まり……だったよな? え、てことはなんだ、俺たち政府から認められてるってことか? 人演狐を殺す組織を政府が承認してるってことなのか―――?
裏公認の意味は理解できねえが……とにかく俺が想像する以上に巨大な組織であることに違いない。そうじゃなきゃ地下にこんな凄い施設なんか作れないわけだし。
改めて考えると、俺みたいなやつが足踏み入れていいような場所じゃないよな……。
「ってこんなこと言ったら怒られちまうな! 冗談はさておいて、あっちまで移動してから始めるぞ!」
鬼勢豪明が指さす方―――入った扉から左側にある壁沿いには、墨色の衣服をまとった人たちがすでに集合していた。手ぬぐいを頭に被った変な奴も一人いる。
(あの人らも入門生なんだろうな……)
大男を先頭にその場所まで歩き着き、俺は伏し目がちに立ちすくんだ。口を一文字に結び、鬼勢豪明から次の指示があるまでは微動だにできない。次第に、緊張から手先が震えてきた。
(怖え、どうしよう)
異質な場所で、年齢の近い、よく知りもしない男女と上手くやっていけるのか。そんな気持ちが膨らむばかりだ。俺……やっぱり自信なくなってき―――。
「パキ……パ……キ」
―――ん……この音は?
何だか、繊細で……壊れかけた器が割れてしまいそうな———そんな音が俺の耳に響いてきた。
瞬時に後ろを振り向く。
その時、俺は目を見開いた。
見覚えのある男が立っているからだ。
(な、なんでお前が―――)
「なんでお前がここにいるんだよ」
目の先には、赤茶髪の男が、確かに立っていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
なんと音在暗之助が赤茶髪の男と再会してしまいました。
人演狐だと思っていた彼がなぜ悪退の眼の稽古場にいるのか……謎ですね。
ぜひ彼の動向にも関心を持っていただけると嬉しいです!
次話も気長にお待ちください!




