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奈落曲(旧)  作者: 羽赤(はあか)
ヒースの花束に、理解を
11/21

鼠の病

「嘘だ……本当は……」


嵐が止み、屋上を月光が照らす、

話し切る前に風を切るを音。


「……ここにいたか、蛇」


旗が靡く剣、葉っぱを散らす月桂冠。


「ウェルギリウス!!」


ダンテがの声で気がついた、

ウェルギリウスが来たと。


「ヒースクリフ!大丈夫!あれっなんでウェルギリウスさんがいるの?さっきまで中庭にいたのに……」


遅れてネリーが来た。


「皆さんお揃いですがさようなら、結婚式で会いましょう」


「天叢雲剣」


蛇は手を振ってどこからか現れた剣を振り、

空間に亀裂ができる、

そこにヒンドリーと共に消えて行く。


「……まて、まてよヒンドリー……まだ終わってないだろ!!」


ヒースクリフが涙の混じった声を出す、

胸の揺らぎ、崩壊、罪に呑まれる。



「逃げられたな、私の失態だ、私はに先に追う、……ヒースクリフはダンテ、トミノ、ネリーさん任せますよ」


ウェルギリウスは素早く後を追う。


「全部……俺が悪かった、俺がいなければキャサリンは幸せになれた、キャサリンは……俺を忘れて……幸せに」


自己否定、絶望、後悔。

空虚に邸宅が浮かぶ。


――エリカが咲き誇り、嵐の無い丘。


「ヒースクリフ、貴方はどんな花が好き?」


「俺は……花はよくわからないな」


「あの丘を見て、私はそこに咲く花が好きなの」


ある時キャサリンは、

あの丘に咲く花の束を持ってた。

誰のためかはわからないが、

大切に持っていた。


誰に向けた花束か聞くのが恐ろしい。

モヤモヤを抱えていたある日聞いた。


「キャサリン様、またエドガー・リントン様に会いに行くんですか」


「ええ、お見合いですから、行かないのは失礼ですよ」


知った、花束のいく先を。

その先を……先を知りたく無い。

俺は嵐の中逃げ出した。


ヒンドリーあいつにする復讐を頼りに、

掃除屋になった。

いつか戻ってくる時……

キャサリンを見ても嫉妬しないために。


ヒースクリフの姿が変わる。

鼠、群れから離れて独りになった鼠の怪物。

孤独で抜け落ち毛、

自分自身を傷つけるほど鋭く伸びた牙と爪、

嵐を浴びて濡れた皮、傷から漏れ出る血。


「シャドウに呑まれたね、ヒースクリフ」

ダンテが吐いた息のように、

小さくつぶやいた。


「ヒースクリフ……ごめんね、私何もわからないや」

ネリーさん、謝り方を知らない、

そんなふうに見えた。


僕は……

「ヒースクリフさん……それは……」

事実を伝えても変わらない気がする。

理解してあげないと救えない、

だから言うべきことは……


「ヒースクリフさん……逃げないでください、受け入れないと……わからないんですよ!!感情は!!知ったフリをやめて聞いてください……」


ヒースクリフは聞く耳を持たない。

空虚に声は響か無いだから……今は、

憤怒でいい嫉妬でいいから、感情が必要だ。


「ネリーさん、ヒースクリフに何か感情を刺激する物はありますか?」 


「えっと……手帳!あの手帳の日記なら……」


「手帳って塗り潰されたやつだよね……」


「塗り潰された?私がここに来る時、キャサリン様の部屋ドアの前に吊るされてたけど、見た感じ全部読めたよ?」


さっきまではヒンドリーの部屋にあった。

何で今は塗り潰れて無くて、

ドアに吊るされてる……


「手帳の日記に、蛇が言ってたって……そもそも何でヒンドリーが持ってた?」


「偽物ってこと?だったらあるかもね、ヒンドリーならやると思うわ」


「いや違うかも、天叢雲剣、場所を変えることができる、塗り潰されたのはわから無いけど……多分どっちも本物」


ヒースクリフがこちらにやってくる。


「やば、向かいながら話そう……」

ダンテはそう言って走り出す。


「キャサリン様の部屋はこっち!」


ネリーが位置を教えながら先頭を走る。

ヒースクリフは血を撒き散らしながら、

目に映る物全てを喰らっているが、

お腹の傷から漏れ出る。

空虚に本来物はたまら無い、

だからあれが……

蛇が異常なだけなんだろう。


「塗り潰されてたらどうするのダンテさん……」


「どうもこうも無いよ、でも前にウェルに教えてもらったんだ遺物のこと、それに確かにたのがあった気がする……文字を一時的に消すのが……」


「多分消滅インクのことですよそれ、昔は遺物だったけど今は技術として販売されていますよ……違ったらすみません……」


ヒースクリフは全てを傷つける。

誰も幸せに出来ない事を恨んで。

もう何も見え無い、全部空虚だから。


「あそこを曲がればキャサリン様の部屋の前です……少し時間を稼ぎます」


ネリーさんはそう言って武器を出した。

「ヒースクリフごめんね、少し痛いかも……」


ヒースクリフの足に少し長いナイフを刺す。

ヒースクリフは足に刺さったナイフを、

外そうと踠く、地面に刺さったナイフを、

ネリーは踏む。


「ヒースクリフもう少しだけ大人しくして……」


角を曲がると手帳が、

吊るされている扉が見えた。

だけど手帳には栞が挟まれていた。


「やっぱり同じ」


「中身は……ちゃんと読める!」


よかった、ちゃんと読めたみたいだ。


「見せてください」

栞の挟まったページを読む。


「ヒースクリフは今日もわかってくれない、

ヒース花が好きといっても、

気づかなかった。

私のことが好きじゃないのかな。

明日ヒースの花束をあげようきっと喜んでくれるはず、明日が楽しみ」


「今日、ヒースクリフがどこかへ行ってしまった。花束は渡せなかった、

私が嫌になってしまったのかヒンドリー兄様に耐えられなくなったのかわなからない、

私はヒースクリフを、

理解してあげられなかった。

ちゃんと伝えればよかった、

ヒンドリー兄様にやめてと言えばよかった、ヒースクリフを不幸にした、

全部私のせいだ」


このページはさっきのヒースクリフに、

見えた光景と同じヒースクリフが、

逃げてしまった時のキャサリンが、

考えていたこと、きっと誤解は解ける。


でもなんで栞が挟まってたんだ?

蛇……何がしたいのかわからない。

なんでもいい、見せないと。


「ネリーさん、ありました!!」


「よかった、じゃあ見せて押さえてるから」


ネリーは服は傷ついてたけど、

血は一滴も垂れていなかったし、

まだかなり余裕がありそう。


ヒースクリフにあのページを見せる。

「キャサリン……キャサリン!!」


ヒースクリフは嵐のような涙を流す、

「俺が……俺は……キャサリンを……」


――ヒースクリフ!!

キャサリン……俺は……


「ヒースクリフ……私はあの花が好き」


「なんでだ?」


「貴方みたいだから」


「……?」


「……馬鹿」


キャサリン……俺はやっとわかったよ。


ヒースクリフの姿が徐々に戻る。

抜け殻のようになった、

鼠は塵のように消えていった。

そこにはもう、

独りじゃないヒースクリフがいる。


――ヒースの咲く丘


「もう逃げれないぞ、蛇」


「怖いですね、でももう少しで彼はヒースクリフは完成する、完成するまでに私を止めれますか、貴方に」


「止めはしない、殺すからな」


「完成したら、すぐに逃げますから、殺せませんよ、ウェルギリウス」

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