シャロロの心情
「と、これが詩音に聞いた話と、俺の回想だ」
朝食は、もうとっくに食べ終え、シャロロが、流しに持っていった。
「そして、このあと、詩音は二日間寝込んだそうだ」
と言って、勢いよく立ち上がると、
「勝也、狩りに行かねえか?」
と、勝也を誘い、勝也が、二つ返事で承諾して、外に出ていった。
近くの森の中で、二人が話し合っている。
「勝也、何匹狩れた?ちなみに俺は、猪十五匹に、チョルチョル鳥、言いにくいな、が三匹と、狼が四匹、それと、モンスターが数匹だ。で、お前は?」
「俺は、猪が三十六匹と、トーナン鳥が十九匹、チョルチョル鳥が二十一匹、狼が七匹と、魔物が数匹だ」
「ぐあっ!負けたっ!」
拓斗が、地面に倒れ込む。
拓斗は、外に出たあと、勝也に、勝負を仕掛けた。
勝負のルールと勝敗は次の通りだ。
その一、得物は、普通の弓のみにする。
そのニ、獲物は、動物のみで、魔物はカウントしないことにする。
その三、制限時間は、一時間とする。
その四、使用スキルは、身体能力強化、弓術のみとする。
その五、勝敗は、狩った動物の数の合計とする。(上記のルールに当てはまらないことをすると、相手の勝利となる)
と、なっていて、拓斗が二十二匹、そして、勝也は、七十八匹で、三倍以上の差をつけて、勝也が圧勝した。
もちろん、お互いにズルはしていない。
そもそも、拓斗は、勝也のせいで霞んで見えるかも知れないが、一時間で、二十匹以上の動物を狩ることは、かなりすごいことなのである。
勝也は、論外。
勝也と拓斗は、村に帰った。
村に帰って、合計百匹の動物を狩ったというと、今日の夜も宴になった。
二人は、顔を見合わせて、苦笑いをした。
日はとっくに暮れて、現在は、シャロロと勝也の『ライトボール』という魔法が、唯一の光源だ。
今日も、昨日に続き、二日連続の宴だ。
理由は、拓斗の生還という建前の、ただ大量の肉が手に入ったからだ。
シャロロは、この宴がおきるきっかけとなった、人物の片割れ、勝也を、ジーっと見ていた。
シャロロの視線の先で、勝也は、明奈に、大量の肉を突っ込まれていて、詩音が、それを止めていた。
(ご主人様にあんなことが当たり前のように出来て羨ましいですね)
シャロロは、若干、嫉妬していた。
シャロロは、少なからず勝也に恋心を抱いている。
本人は、自覚していなかったが、おそらく、出会った時から、多少の恋心を抱いていた。
だが、奴隷という身分のため、シャロロは、基本的には、主人である勝也と、結婚する事はできない。
しかし、シャロロは、奴隷と主人という関係で良かったと、少し思っている。
理由は簡単だ。
奴隷と主人という関係なら、勝也から棄てられない限り、勝也という大切な人と、ずっと一緒にいれるからだ。
そして、奴隷ならば、主人の夜の相手をする事も、有るかもしれないからだ。
シャロロは、実際、いつご主人様の勝也に、そういう事を頼まれてもいいように、体のケアは、毎日欠かさず行っている。
シャロロ的には、いつでもバッチこいなのだ。
シャロロのプロポーションは、見事としか言い様のないスタイルだ。
顔は、ものすごく整っており、顔が、ものすごく整っていると言われる、エルフともひけをとらない。
胸は、これでもかと言わんばかりに、メイド服を、したから押し上げている。
なのに、しっかりとくびれがあるのだ。
シャロロの体は、男なら、誰もが夢見る体型の持ち主だ(一部の自称紳士の変態を除く)。
実際、勝也も、健全な普通の男子なので、少なからず、意識はしている。
しかし、シャロロは、勝也が、自分には興味がないと思っている。
閑話休題
シャロロは、遠くから、和気あいあいとしている、勝也と明奈と詩音を、羨ましそうに見ている。
シャロロには、親と呼べる存在がいない。
母親と呼べる存在がいたのだが、シャロロが奴隷になる一年ほど前に、病気で亡くなった。
父親は、居るには居るのだが、暴力は振るうわ、働かないわ、借金をするわ、あげくのはてに、シャロロを、奴隷商に売り、お金を得るといったメチャクチャな男なので、シャロロにとって、父親という存在はない。
もちろん兄弟もいない。
そんなシャロロにとって、三人が醸し出している、和気あいあいとしたムードは、憧れの存在的なものなのだ。
「シャロロ、こっちに来て一緒に飯を食わないか?」
勝也が、手を振りながら、シャロロを誘っていた。
シャロロは、すぐさま勝也に近づく。
「ご主人様がよろしいなら」
シャロロが、頭を下げると、勝也は、はぁ、とため息をついた。
勝也の反応に、シャロロは焦った。
もしかして、知らず知らずのうちに、ご主人様の機嫌を損ねたのではないか、と。
「ご、ご主人様。わ、私」
何もわからなかったが、とりあえず謝っておき、その後で、理由を聞こうとした。
しかし、口を開くと、勝也が、両手でシャロロの頭を掴み、真剣な顔で、目を覗き込んだ。
「いいか、シャロロ。奴隷だからって、俺たちに遠慮はするな。お前が奴隷でものなんて思っている奴は、ここにはいない。ここにいる全員は、お前のことを、一人の女性として見ている。だから」
ここで、一旦口を閉じ、表情を柔らかくすると、両手をはなし、ポン、と頭に右手を乗せ、
「もう、遠慮すんな」
と優しく言った。
シャロロは、若干目尻に涙が浮かんでいた。
勝也は、その涙を、そっと拭き取ってあげた。




