回想2
車を走らせて、十分ほどすると、左手に、海が見えた。
若干出ている太陽に照らされて、オレンジ色に染まる海を見て、明奈は、きれ~、と言った。
そんなときだった。
カーブを曲がろうとしていると、カーブから、一台のトラックが、こちらに突っ込んできた。
チラッと見えたトラックの運転手は、居眠りをしていた。
拓斗は、とっさに、トラックの進行方向を、少しずらして、直撃は免れたが、車の側面に当たり、車がガードレールを飛び越えて、崖となっていて、地面のない海の真上に叩き出された。
「キャーーーーーーーー!」
明奈が、悲鳴をあげて、詩音は、静かに目を瞑っていた。
拓斗は、瞬時に考えて、異世界に向かい、それで助かろうという結論に至った。
「『異世界転移』!」
すると、車の中にまばゆい光が発生し、拓斗、詩音、明奈を異世界へととばし、車は、そのまま海に落下した。
まばゆい光が、収まると、詩音は、知らない場所に立っていた。
隣には、うずくまって、頭を抱えている明奈の姿があった。
明奈は、いつまでたってもこない衝撃に、キョトン、としながらも、恐る恐る顔をあげた。
そして、
「ここどこ?」
と、もっともな疑問を口にした。
「ゴポッ」
液体が、固まりになって出てくるような音と、びしゃっ、という音が聞こえてきて、恐々とその音のした方向を向くと、血を吐きながら、倒れている拓斗の姿があった。
「あなた!」
詩音は、顔を蒼白に染め、拓斗に駆け寄った。
「あなた、しっかりして!」
どうしたらいいのかよくわからず、ぐらぐらと、拓斗の体を揺すった。
「ゴホッ」
拓斗は、更に血を吐いた。
「あなた!」
「詩音、心配、しなくても、いい。俺は、大丈夫、だ」
息も絶え絶えに、詩音を制し、血走った目で、詩音を見た。
「俺は、これから、とある箱に入る。その前に、これを、シャロロという、少女に渡してほしい。俺は、少し寝てくる」
虚無、亜空間庫から、一枚の紙を取りだし、詩音に渡すと、ゆらゆらと立ち上がり、ふらふらとした足取りで、部屋を出ていった。
そして、少し離れたところで、何かの蓋が、閉まるような音がした。
その後、二人が、呆然としていると、ガチャリ、と扉が開いて、一人の少女が入ってきた。
「誰ですか?貴女方は」
少女は、警戒した目で、詩音と明奈を見ていた。
「え、ええっと」
詩音が、答えに困っていると、その少女が、先に口を開いた。
「私の名前は、シャロロです。貴女方の名前は何ですか?」
「えっと、私は、型無詩音で、こっちが娘の型無明奈です」
すると、みるみる少女、シャロロの顔色が変わっていった。
顔が、真っ青になり、突然頭を下げた。
「勝也様のご家族とは知らず、ご無礼な態度をとってしまって、申し訳ございませんでした」
こちらが許さなければ、今にも土下座をしそうな様子だ。
「頭をあげてください。そして、まず、ここがどこなのか話してください」
だんだんと、思考が、回ってきた詩音は、状況の説明を求めた。
「はい、僭越ながら、私が説明いたします。
まず、ここは、いえ、この世界は、お二人様の生まれそだった世界、地球とは違い、イナーズという世界、お二人様の言葉で、簡単に、分かりやすく説明するなら、異世界です。
そしてここは、オオサト村と言いまして、千年程昔、異世界より召喚され、魔王を倒し、この世界を救った勇者の末裔が、代々治める村で、現在は、型無拓斗様が、村長となっております」
「ええっ!」
つい詩音は、大声を出して、驚いてしまった。
なぜなら、自分の夫である、拓斗が、まさか異世界の村の村長をしていたからだ。
「少しいいですか?」
おずおずと、明奈が、手をあげた。
「なんでしょうか、明奈様」
「えっと、私達って帰れるの?」
確かに、と詩音が言った。
シャロロは、口を閉ざしていた。
沈黙が流れる。
シャロロが、諦めたように、口を開いて、
「勝也様が、拓斗様に、『異世界転移』のやり方を教えられていれば、帰られると思います。拓斗様が、勝也様に、『異世界転移』を教えていなかったら、拓斗様が、死んだことで、帰られる可能性が、零に大分近くなっています」
顔を歪めて、そういい放った。




