回想1
「お前ら、遊園地にいくぞ!」
俺、型無拓斗は、大声で、食事中の三人に言った。
「遊園地?いくいくっ!」
早速明奈がくいついてきた。
「あらあら、じゃあ明奈が行くのなら、私も行こうかな?」
詩音も乗ってきた。
あとは、
「勝也、お前はどうするんだ?」
静かに黙々と朝食を食べている勝也に聞いた。
「ん?僕は行かないよ?今日は早苗に勉強教えないといけないし、明後日が中間テストだから、一応復習もしておきたいし」
そういえば、確かそろそろテストがある時期か。中学生は大変だな。
「そうか。それじゃあ留守番頼んだぞ?」
「うん、わかった。でも午前中だけ、だけどね」
相変わらず向こうとこっちでは全く口調が違うな。見た目相応のしゃべり方だな。
「勝也は行かないみたいだから、ほら、明奈。さっさと支度してこい。詩音も、きれいな格好してこい」
「ふふっ、あなたもね」
そう言って、詩音は、リビングを後にした。
じと~っと、勝也がこちらを睨んでくる。
どうしたんだ、そんな怖い顔して。
「父さん、せめて食器を流しに持っていかせてから、言ってよ。全部僕がやらないといけなくなるじゃん」
ぶつぶつ文句を言いながらも、せっせと食器を片付けてるし。
うんうん、とうなずきながら、その光景を見ていた。
「父さん、早く食べて食器持ってきてっ!片付けができないから!」
勝也から怒られるまでは。
「おっしゃっ、忘れ物はないか?……ないな、よし、出発するぞ!」
「ハーイ!」
「おー」
明奈が、両手をあげて喜び、詩音は、微笑みながら、拳をつくり、軽くあげた。
あの後、非難の目を向けられながら、せっせと朝食を口に運んだ。
そして、急いで準備をしていると、明奈が、遅い、と言って非難してきた。
閑話休題
車を出発させると、明奈が更にはしゃぎだした。
いまからいく遊園地は、車で、一時間程の所にある。
そこは、今年開業四十周年を迎えた、古い遊園地だが、いまだに多くの客が来る、人気の遊園地だ。
正直にいうと、なぜいまだにそんなに客が来るのか、不思議だった。
だから、いまからその遊園地にいくのは、どうしてそこまで繁盛するのか調べるためだ。決してただいきたいだけじゃないぞ?ほんとだぞ?
今日の天気は、少し雲があるだけだった。
ようやく目的の遊園地に着いた。
あの後、明奈は、はしゃぎ疲れて眠った。
たく、どれだけ楽しみなんだよ。
「明奈、起きろ。もう着いたぞ!」
眠たそうに目をかきながら、明奈が起きた。
「あれ?もう着いたの?」
「ああ、着いたぞ」
やったー、と叫びながら、元気よく飛び出していった。
「明奈、元気ね」
「ああ、そうだな。詩音」
ほがらかに微笑んでいる詩音の手を握りなら、明奈を追いかけた。
おお!すげぇ!広っ!
入場料、子供千円、大人千五百円を払って入園すると、観覧車や、ジェットコースターを始め、さまざまな遊具があった。
「お父さん!お母さん!私あれ乗りたい!」
いまだに反抗期がこない、純粋な明奈が、ジェットコースターを指差し、服の裾を引っ張ってきた。
「よし、乗るか!」
「うん!」
そうして、ジェットコースターに向かって、二人は走り出した。
数時間後
拓斗は、ベンチで休んでいる二人のために、自動販売機で、飲み物を買って、お手玉のようにくるくると回しながら、二人のところに向かった。
視界に、二人の姿が見えた。
明奈は、詩音の膝を、枕代わりにして、すやすやと眠っていた。
「ふふっ、疲れて眠ってしまったみたいですね」
もう小学六年生なのに、ここまで子供っぽいのだろう?と結構真面目に、拓斗は考えていた。
「ほら、詩音。コーヒーで良かったよな?」
拓斗は、手に持っていたペットボトルのコーヒーを、詩音に手渡した。
「ごめんなさいね、あなた。あなたも疲れてるのに、飲み物を買ってきてもらって」
すまなさそうに、詩音はお礼を言った。
「いや、いい。お前程疲れている訳じゃない。だてに毎日鍛練している訳じゃない」
拓斗は、少し空いていたスペースに座り、自分用に買っていた、ペットボトルのコーヒーを飲み始めた。
「ふふっ」
「ん?どうしたんだ?急に笑い出して」
手で口元を隠しながら、なんだか嬉しそうに、詩音は笑った。
「昔、付き合いたての頃、公園のベンチで、一緒に座ってコーヒーを飲んでいたことを思い出して、つい」
拓斗も、その時の事は、いまでも鮮明に思い出すことができる。
詩音と拓斗が、付き合い始めたのは、大学生の時。
拓斗が、詩音に一目惚れして、告白して、交際を始めた。
先程の話は、付き合い始めてすぐの頃の話で、その頃の二人は、大学のサークルや、アルバイトで忙しく、デートも、あまり出来なかった。
それでも、デートは何度もした。
その最後に必ず公園のベンチに座って、二人でコーヒーを飲んでいた。
詩音が言ったのは、その頃の話だろう。
「あの頃は、今以上に忙しかったが、今と同じくらい充実していたと、いまでも思ってる」
「私も同じです」
詩音が、拓斗の肩に頭を乗せ、拓斗は、詩音の肩に手をまわした。
いつの間にか、二人の間には、あまあまな空間が出来上がっていた。
その時、メロディーと共に、閉園の知らせが聞こえてきた。
辺りは、大分暗くなりかけていて、明かりがチカチカとなりながら、ついていた。
結構な時間、遊園地に居たようだ。
「帰るか」
「そうね。ほら、明奈、起きなさい。もう帰るよ」
詩音は、自分の膝に頭を乗せて、すやすやと眠っている明奈を、ゆさゆさと揺すって、起こした。
明奈は、眠そうに、目をごしごしと擦りながら、
「あれ?もう帰るの?」
と言った。
ほほえましい光景を見て、お互いに顔を見合わせて、笑った二人は、
「そうよ、もう閉園時間だからね」
「そうだぞ、明奈。なに寝ぼけたこといってんだ?」
と、二人していい放った。
そして、二人は、明奈の手をとると、小走りで、出口に向かった。




