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義妹は、私だけを見ていた。―妹に愛されすぎた女の話―  作者: ZERO POINT
第2章 光のズレ

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第33話 光の境界線

 花って、高校時代に何かなかったか?


「え?」


「勇太、知らない?」


「美咲、花束事件」


「いや……美咲伝説は色々あるだろ」


 高木が苦笑する。


「俺さ、いつも直哉とよくいたの覚えてる?」


「うん」


「直哉って、美咲さんと付き合ってただろ?」


「それに、詩織のことも美咲さんのことも大事にしてたじゃん?」


「だから、三人で一緒にいた」


「ああ……」


 詩織が小さく頷く。


「でも、美咲さんってめっちゃ目立ってただろ?」


「モテまくってたし」


「正直、直哉が美咲さんと付き合ったって聞いた時、冗談かと思ったよ」


「ごめんだけど」


「ただ、詩織の友達ってことで納得はした」


 高木は少し考える。


「あの頃って何か……いや、違うって思うけど」


「直哉って、美咲さん大好きだけどさ、詩織のことも好きなんじゃないかって少し思ってたんだよ」


「だから、紹介してくれないのかよって思ってた」


「聞いたら、詩織が止めてるんだって言ってたけど」


「俺、ずっと詩織のこと好きだったからさ」


「あいつ、美咲さんの彼氏のくせにって、ちょっと思ってた」


「少し腹立ってた」


 詩織が、少し困ったように笑う。


「今だから言うけどな」


「だいたい直哉のやつ、両方ってあり得ないだろ」


「ちょっと詩織のこと好きなんじゃないかって噂もあったしさ」


「俺が好きなの知ってるのに」


「でも、今は本当に美咲さん大好きって感じだよな」


 そう言って、高木は笑った。


「花束事件ってさ……」


「美咲様って言われて、花束結構もらってたよな」


「ああ……あったわね」


「それで、直哉が美咲さんの教室に乗り込んで、『俺の彼女に花束送ってんじゃねぇ』ってキレたやつだよな」


「そうそう」


「あと、よく乗り込んでた」


『俺の彼女に手を出すな』


 って。


「すごかったよな」


「それなりに彼氏してた」


「俺の彼女は受け取れませんからって、直哉が返しに行ってたし」


「あいつってさ……学校一のイケメンではなかったけど、結構やる時はやるんだよな」


「だから、誰も何も文句言わなかった」


「あいつよりイケメンはいたけど、あいつは何があっても一緒にいたしな」


「でも、直哉ってそれなりに顔いいんだよな」


「悔しいけど」


「めちゃくちゃ顔がいいわけじゃないけど、普通に整ってるし、背も高いしな」


 高木が、ふと思い出したように笑う。


「お前さ……伝説残したんだろ?」


「何?」


「プロポーズ伝説」


「何それ」


「直哉が美咲さんにプロポーズした時、一緒にいたんだろ?」


「うん」


 高木が呆れた顔をする。


「お前さ……気を利かせてやれよ」


「いや、お兄ちゃんがちゃんとプロポーズしないから」


「お前がいるからできないんだよ」


「え?」


「……」


「お前、空気読めよ」


 詩織が、少し目を丸くする。


「ごめん。それ、本当にわかってなかったかも」


「邪魔しようと思ってしたんじゃないの」


「それは本当なの」


「さすがに、ちゃんと結婚したらいいなって思ってたし」


「なのに、何でお兄ちゃん、プロポーズするって言ってしないんだ?ってなってたのよ」


「……お前な」


 高木は頭を抱えた。


「詩織……お前さ、俺と一緒にやっぱりいよう」


「何ていうか……お前が直哉と美咲さんを大好きなのはわかる」


「でもさ……お邪魔虫だぞ」


「でも、私、親友だし」


「美咲のこと大好きだもん」


「でも、わきまえようか」


「うん」


「俺のこと好きか?」


「うん」


「なら、よし」


「じゃあ、わきまえよう」


「お前、直哉に俺らずっと邪魔されたらどうするんだよ」


「困る」


「同じだ」


 詩織が、少しだけしょんぼりする。


「お前は、美咲さんに何もおかしなことしてないな?」


「友達だからするわけないでしょ」


「なら、問題ない」


「したなら、謝るんだぞ」


「わかってるよ」


 高木は、真面目な顔になる。


「たださ……美咲さんのストーカーが絡んでる可能性があるなら、本当に距離置いた方がいい」


「美咲さんもだし、詩織もやばいことになる」


「それに、詩織のストーカーかもしれない」


「だから、それもどっちかわからないし、お前単体かもわからない」


「多分、直哉のことだから、お前に何かあってほしくないって思ってると思う」


「だから、すぐ電話してきたんだろうし」


「たださ……あいつ、高木任せたぞって言ってたから」


 詩織が、少し黙る。


「落ち着くまでは、少し美咲さんと距離置こう」


「そうじゃないと、美咲さんも本当に危険だから」


「詩織だって、美咲さんに迷惑かかるの嫌なんだろ?」


「うん」


「それに、今は俺もお前ひとりで手一杯だ」


「ちゃんと安全に暮らせるようになったら、また遊べばいい」


「そうしよう」


「わかった」


 少ししょんぼりした顔で、詩織が頷く。


 高木は、小さく息を吐いた。


「お前さ……本当は皆で仲良くしたかっただけなんだよな」


「うん」


「仕方ないやつだな」


 そう言いながら、高木は考えていた。


(……誰がやってるんだ?)


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