第32話 光の花束
高木と詩織は、二人で高木の家に来て話していた。
「大丈夫か?」
高木がコーヒーを出す。
「うん、ありがとう」
詩織の顔色は少し悪かった。
「全然違うところに住むのも、ありかもしれないぞ?」
「どうせ俺達、結婚するだろ?」
「二人で暮らすところ探すか」
「そうだね」
「でも……見つかる可能性もあるから、とりあえず、しばらくここにするか」
「狭いけどな」
「うん」
高木が、小さく息を吐いた。
「怖いのはわかる」
「でも仕方ない」
「好きになったら止まらないんだ。仕方ないと言えば仕方ない」
「たださ……相手への迷惑も考えてほしいよな」
「それね」
「なあ。リセットするの、ありじゃないか?」
「え?」
「いい機会だろ?」
「服とかさ、色々」
「結婚するし」
「とりあえず……仕事はした方がいいんじゃないか?」
「一人でいるより、紛れると思うし」
「その方が安心かもしれない」
「毎日送って行くし、迎えに来いって言われたら迎えに行く」
「あ……俺が行けない時は無理だけど」
高木は、少し考える。
「でも、ちょっと違ったら来なくなるかもしれない」
「それはわからない」
「だから、何とも言えないけど」
「俺の友達もストーカーに遭ったんだ」
「女にな」
「でも、警察に言ったら止まった」
「だから、そういうこともあるかもしれない」
「俺と一緒にいたら大丈夫になったとか」
「わからない」
「でもさ……少しだけポジティブに考えよう」
「駄目なら、二人で別のところに引っ越すぞ」
「うん」
少しだけ、詩織の表情が和らいだ。
「それとさ……やたら花があったりしないか?」
「あれ、何だ?」
「落ちてたんだよ」
「ストーカーって花が好きなのか?」
「何か知ってる?」
「花?」
詩織が少し考える。
「美咲が好きかも」
「え?」
「美咲さん絡みとか?」
「美咲って、フラワーアレンジメント習ってるんだよね」
「昔から花が好きなの」
「だから、お兄ちゃんもよく言ってたわ」
『美咲はいつも花を飾ってる』
って。
「自慢してたもの」
「最近はヒマワリに凝ってたと思う」
「花屋で、湊君にすすめられたんだって」
「ヒマワリ好きなのもあったみたいだけど、飾ったらかわいいなって思ったみたいよ」
「お兄ちゃんは違うのが好きだったみたいだけど、美咲にはいいねって褒めてたみたい」
「美咲はお兄ちゃんに褒められて、嬉しそうだったけど」
「ああ……そういえば前に行った時にあったな」
高木は少し考え込む。
「そういえば……あそこにヒマワリがばら撒かれてなかったか?」
「詩織の家のところだよ」
「あ……」
「怖くて、あまり見てなかったの」
「でも、ヒマワリだったかも」
「ちょっと待て」
高木がスマホを開く。
「直哉に送ってもらった証拠写真……これ花だったよな?」
「ヒマワリじゃないか? これ」
「……」
二人の間に沈黙が落ちた。
「やばくない?」
「部屋に入られたって言ってたぞ」
「だから知ってるの?」
「でも、普通そこまでわかる?」
「そういえば、行きつけの花屋があるの」
「湊君っていうイケメンがいるのよ」
「お兄ちゃんが牽制してきてるから大丈夫って言ってた」
「お兄ちゃんが言ってたもの」
「花は俺が買いに行ってるって」
「ああ……」
高木は少し考え込む。
「私も、新人の男の子が入ったって美咲が言ってたから、どんな子なんだろって気になって、一回行ったことあるの」
「その時、鈴蘭を買ったわ」
「美咲がヒマワリ買って飾ってたから、ちょっと真似したの」
「あまりにも、お兄ちゃんが自慢するし」
「それに、私達遊びに行く時、あの花屋の前を通るのよね」
「それで、その湊君が美咲のこと好きなんじゃないかって」
「一回、お兄ちゃん牽制しに行ったみたいだし」
「とにかく、お兄ちゃんは湊君のこと少し警戒してる」
「絶対に花屋の前では手を繋ぐもん」
「花って言ったら、それくらいしか……」
詩織が、ふと顔を上げる。
「……ん?」
「ちょっと待って……」




