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義妹は、私だけを見ていた。―妹に愛されすぎた女の話―  作者: 桐原悠真
第2章 光のズレ

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第23話 光の揺らぎ

 美咲と直哉は、家に帰った。


「ストーカーってさ……他にも何か気になることない?」


「マンションのほうが最近、物騒だって言ってたくらいかな」


 そのとき――


 詩織から、連絡が来た。


 いつも通りのタイミングで。


『美咲、土曜日なんだけど、そっちに行っていい?』


「出た。詩織か」


「高木はどうした」


「高木……ちゃんと詩織と一緒にいろよ」


「デートしたかったのに」


 直哉が、がくっと肩を落とす。


「またデートは無理そうね」


「でも――ストーカーのことがあるから……詩織、大丈夫かしら」


「詩織に何かあっても大変だし」


「あ……そうだな」


 直哉が、小さく頷く。


「高木に言うか」


 スマホを取り出して、電話をかける。


「もしもし、高木?」


「ああ、直哉か」


「詩織がさ、俺の家に来るって言ってるんだけど」


「ああ……土曜日は直哉の家に行きたいからって、デート断られたんだよ」


「別に来るのはいいんだけどさ……ちょっと、やばくて」


「え?」


「美咲が……ストーカーされててさ」


 少しだけ、言葉を選ぶ。


「今、ちょっとごたごたしてる」


「詩織、一人で動くのは危ないと思うんだ」


「できれば……来させたくない」


 電話の向こうで、少し沈黙が落ちる。


「休みは俺が美咲と一緒にいるから大丈夫だと思うけど……」


「それでも、危険じゃないか?」


「ああ。俺もそう思ってる」


「ただ……俺たちが言っても、詩織、聞かなそうだから」


 一瞬、間。


「高木。悪いけど……何とかしてくれないか」


「っていうかさ……美咲さん、大丈夫なのか?」


 高木が、低い声で言う。


「お前がずっと一緒にいられるわけじゃないだろ?」


「……ああ」


 直哉は、小さく息を吐いた。


「だからさ……俺はしばらく定時で帰るつもりだけど」


「それでも限界あるし」


「できるだけ家から出ないようにしてもらうしかないっていうか……」


「でも、買い物とかもあるだろうし」


「正直、どうすればいいのかよく分からない」


「……色々ありすぎなんだよ」


 少しの沈黙。


「とりあえず――詩織のこと、頼む」


「……わかった」


 高木が頷く。


「っていうかさ」


 少しだけ、トーンが変わる。


「お前ら、結婚するのか?」


「したいんだけど」


「それなら、さっさと距離詰めろよ」


「あ……でも、いい感じなんだ」


 少しだけ照れたように、直哉が言う。


「結構かわいくてさ」


「でも、週末のどっちかは美咲さんと会いたいって言ってて」


「そこ、抑えろ」


「わかった」


 ***


 その頃――


 美咲は、詩織に電話をしていた。


「詩織、あのね……土曜日、ちょっと無理なんだ」


「え? じゃあ日曜日は?」


「どっちも……ちょっと」


「何かあったの?」


 少しだけ、間。


「……ストーカーにあってて」


「詩織に何かあったら困るから、しばらく会わないほうがいいって思ってるの」


「え? 私のことを思って?」


 一瞬の沈黙。


「……そういうことなのね」


「うん」


「美咲、優しい」


 少しだけ、声がやわらぐ。


「でも――美咲に会えないのは嫌よ」


「しばらくの間だけだから」


「じゃあ、その間に勇太と距離詰めて、結婚するから」


「え?」


 思わず、聞き返す。


「結婚したら――平日会えるでしょ?」


「専業主婦なら、時間あるし」


「……」


「でしょ? 名案」


「わかったわ。美咲が今は駄目って言うなら行かないけど」


「その間に、さくっと結婚するから」


「……そ、そうなの?」


「そうよ。いい人だしね」


「問題ないわ」


 少しだけ、不安がよぎる。


「……大丈夫かしら」


「大丈夫よ」


 あっさりと、言い切った。


 ***


「直哉……」


 美咲が、少しだけ不安そうに言う。


「詩織が、ちょっとおかしいかも」


「え? 今に始まったことじゃないだろ?」


 即答だった。


「さくっと結婚するって言ってたけど……大丈夫なのかしら」


「さくっと結婚?」


 直哉が眉をひそめる。


「どういうことだ?」


「高木さんのこと、すごく好きなのかも」


「だから、早く決めたいってことかもしれない」


「ああ……そういうこと?」


 少しだけ考えて。


「あー……」


「なんだ、高木――全然心配いらないじゃん」


「え?」


「むしろ、勝ちじゃないか?」


「メッセージ送るわ」


 スマホを取り出す。


『高木、詩織はお前に夢中らしいから大丈夫だ』


 少しして、返信が来た。


『え? そうなの?』


『マジで嬉しいんだけど』


『俺だけ好きなのかなって、ちょっと心配しててさ』


『美咲さんのこと、大好きだし』


『正直……ちょっと嫉妬してた』


『あんなに仲いいからさ』


 少し間があいて、


『いや、大丈夫』


『早く結婚したいって、美咲に言ってたみたいだ』


『それの相談だったのかも』


 すぐに返信が来る。


『え? そういうこと?』


 さらに続く。


『やばい』


『頑張るよ』


 ――そして。


『ありがとう』

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