第17話 ヒマワリの視線
二人が帰った。
まさか、あんなに早く話がまとまるとは思っていなかった。
「高木って……陽菜のこと、大事にしそうだな」
「私も、そう思う」
「良かったね」
「ああ」
少しだけ、間。
「たださ……四人で付き合うことは、ありそうだよな」
「もし結婚したら、親戚になるし……そうなるわよね」
「そうだな」
「それはそれで、いいけど」
「別に、高木さんのこと嫌いじゃないわ」
「俺も仲いいしな。悪いやつじゃない」
「そう思う」
「ただ……」
「二人きりの邪魔は、されたくないな」
「ふふ」
「結構、我慢してたの?」
「うるさいな」
「俺は、結構我慢してたよ」
「美咲もだろう?」
「うん」
少しだけ、間。
「でも……専業主婦になったら」
「平日、陽菜は美咲と一緒か……」
「ちょっと、陽菜が羨ましいな」
「……嫉妬する」
「それに――」
「何となく、嫌な予感がするんだよな」
「お喋りするだけよ」
「俺の悪口ばかり言うなよ」
「そんなことしないわ」
「あと――俺のことも構ってくれよ」
「わかってる」
「直哉が構ってくれないんじゃないの?」
「そんなわけないだろう」
「二人とも、幸せになるといいな」
「うん」
そう言いながらも――
俺は、陽菜が何か企んでるんじゃないかと思っていた。
……いや。
結婚したら、平和になるはずだ。
きっと。
そうだ。
問題ない。
しばらくして。
「ねえ、直哉」
「何?」
「そろそろ、花を買いに行きたいな」
「ああ、花屋に行くか?」
「うん」
「そういえば……この前もスーパーで、相沢くんに会ったの」
「またか?」
「きっと、近くに住んでるんだな」
「……そう思う。一人暮らしなんだって」
「そうなんだ」
「ご飯、作ってって言われた」
「は?」
「あいつ……駄目に決まってるだろ」
「今から、花屋に行くぞ」
「え?」
俺たちは、花屋に向かった。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは」
「花を見せてもらいに来ました」
俺は――
美咲の手を、しっかり握っていた。
「家内が、お世話になってるみたいで」
「いつも、素敵なお話を聞かせてもらってます」
「やっぱりヒマワリにしようかしら。ねえ直哉、どうしよう?」
美咲が、俺を見る。
「美咲がいいと思うやつにしよう」
俺は、美咲を見た。
少しだけ――長く。
「じゃあ、ヒマワリください」
俺は、少し笑った。
――渡さない。
「家内には、いつも感謝してるんですけど」
「少し、寂しい思いさせちゃったのか……」
「お話に付き合ってもらったみたいで」
俺は、美咲を引き寄せた。
「いえ、とんでもないです」
「楽しかったですよ」
「美咲さんと過ごす時間は――楽しいので」
「……」
「ありがとうございます」
「でも――」
「俺が、傍にいますから」
俺たちは、ヒマワリを買って店を出た。
「美咲……やっぱり、あいつ嫌いだ」
「俺の敵だ」
「子供みたいだって思うかもしれないけど……」
「あいつとは、仲良くしないでくれ」
――少しだけ、手に力が入る。
店では――
店長が、小さくため息をついた。
「完全に、牽制されたわね」
「……みたいですね」
「ご主人、悪い人には見えないわ」
「それに……奥さんのこと、大好きみたいだったけど」
少しだけ、間。
「だから――」
「やめておいた方がいいと思うわ」
それでも――俺は。
「運命」
そんな言葉が、頭をよぎった。
美咲さん……。
諦めた方がいいのかもしれない。
でも――
俺は、完全にハマってる。
それに……
寂しい思いをさせるような男よりも、
俺の方がいい。
……そんなふうに、思っていた。
「店長……どうしたらいいでしょうか……」
「好きなんですよね」
少し間。
「……重症ね」
俺は――
何となく、これで終わるとは思えなかった。
あの男の目が、気になった。
美咲を見る目が――まっすぐで。
ある意味、ヒマワリみたいな男だ。
……これで終わってくれ。
それに――
陽菜も、片付いたようで……片付いていない。
何で、こんなに美咲に向かってくるんだ。
そして――
街を歩けば、男たちは美咲を見る。
ああ……。
直哉は、変わった。
ふふ。
陽菜も、結婚するわ。
きっと――
相沢くんも。
……色々、面白くなりそう。
ふふふ。
やっぱりね。
毎日、楽しい。
みんな――
私のこと、好きね。
「今度、直哉に旅行に連れて行ってもらおう」
ヒマワリの花が、微笑んでいる。
ふふ。
綺麗。
ヒマワリは――
誰を見つめているのかしら。
本当のヒマワリは?
……違うわね。
光は――
誰だったのかしら。
ふふ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ヒマワリは、光の方を向く花です。
けれど――その光が何なのかは、誰にもわかりません。
物語は、まだ続きます。




