第参拾陸話【天狐の力】
黒君を眠らせ、白君達の後を追う。
「おや? 遅かったですね……黒もなかなか役に立ったようです」
部屋の扉を開けて中に入ると、白君は天狐に倒され頭を踏みつけられていた。
「私に一人で立ち向かおうなどとは一世紀早いですよ」
天狐は白君の腹を蹴り私達の方へ蹴飛ばした。
「白君!」
「なんで……来た……」
「だって! 私だってみんなの事が心配なんだよ!」
白君は腹を押さえながらヨロヨロと立ち上がり一瞬私を見ると天狐を睨みつける。
「クックック……みんなが心配ですか……それでは私の事も心配と言うわけですか?」
既に姿が妖狐に変わっている天狐はニヤけた嫌な笑いで私を見て問いかけて来る。
「そうよ。 天狐、あなたも私から顕現したのでしょ? それなら黒君と同じよ! 心配するに決まってるじゃ無い!」
「……ほう……これは驚きました……あなたの仲間を倒して来た私を心配するとは……面白い人間もいるものですね……」
「智子さん……」
赤井さんも驚いている様子。
そりゃ十字さん、灰さん、銀君……それに黒君にも酷い事をした……でも……。
「ふ〜……もう沢山だ! お前と言い、あのババアと言い、言う事は同じか!! 俺は元の一人の妖狐に戻り暴れたいだけだ! 人間も動物も妖怪も全て私が喰らい尽くしてやる!」
天狐の周りに九つの炎が現れそれを私達に飛ばして来た。
白君は転がりながら回避して、赤井さんは自分の炎で打ち消し、黒豆君は私を担いで回避した。
「避けられると思うたかあ!」
天狐の放つ炎は避けた私達を追尾して追いかけてくる。
「ちっ! 白! どうにかしろ!」
「わかってる!」
白君も炎で打ち消し、私と黒豆君に飛んでくる炎も青い炎を当てて打ち消してくれた。
「白! これも打ち消せるか!?」
天狐は私達が炎を消している間に九つの炎を一つにまとめ、大きな炎球を私目掛けて飛ばして来る。
その炎球に向けて青い炎を飛ばすもかき消えてしまう。
「智子! 避けろ!」
「無駄だ!」
天狐の炎は追尾して来る……逃げても無駄だろう……私の体はその事を知って動け無いでいた。
ドオオォォン……。
「智子ー!」
「智子さん!」
直撃した炎球は大きな爆発音と共に消えた。
「ぐっ……」
「黒豆君!」
直撃寸前で黒豆君が庇ってくれた……。
「ガッ……ハッ……」
バタリと倒れてしまうが息はある。
「もう! もうやめて! どうして……どうしてこんな事をするの!!?」
「さっきも言っただろう……俺は全てが憎い……この世の全てがな……だから全てを消し去ってやる」
「その後はどうするの? あなた一人になってどうするのよ!?」
「簡単な事だ……俺も消えればいい……全てを消し去り最後は俺も消える……これ以上ない幕引きだとは思わないか?」
「狂ってやがる……同じ妖狐とは思えないくらいにな」
「当然だ! 貴様らとは違う。 九つに分けられた時に性格もバラバラになった……その中でも私は【憎しみ】のみが残ったのだよ……さあ、次は躱せるかな?」
再度巨大な炎球を飛ばして来る天狐。
白君が私の前に立ちはだかり炎球を受け止めようとした時、炎球はまた九つの炎に分かれ白君を避けて私に向かって来た。
「しまった!」
「もう遅い!」
天狐の炎はいつの間にか私と場所を入れ替わっていた赤井さんに直撃した。
「赤井さん!?」
「……これは私のとっておきの……妖術です……よ……」
「赤井さん! 赤井さーん!!」
赤井さんは消えた……。
「くっそおおおーー!!」
白君は天狐に向かって走り、天狐と戦い始めた。
だが天狐の方が強く、白君は何度も殴り飛ばされている。
「もう、もうやめてええええーー!!」
傷だらけでボロボロになって行く白君を見て私は渾身の力で叫んだ。
すると、指輪が紅く光り砕けると指輪から紅い光りが白君に入って行く。
「な! 私の力をよくも!!」
紅い光に包まれた白君の傷は治り、私でも感じるほどの妖気を発し始め、天狐を押し始めている。
「智子! お前はもう逃げろ! こいつは俺が殺す!」
「ちっ! いいでしょう……こうなれば……最後の手段に出るまでです!」
天狐は白君に襲いかかるフリをして突然私に襲いかかって来た。
「させるか!」
白君も天狐の後を追うが、天狐が懐から出した鈴をチリーンと鳴らすとあの二人の姿が現れ白君を止める。
「な! お前ら!」
現れたのはヤコとキンの二人……。
「さあ! 死になさい! そして私を解放するのです!」
天狐の鋭く尖った爪が私を襲う。
もう助けてくれる人はいない……。
天狐の爪はザシュっとお腹を貫ぬいた。
「お……お姉ちゃん……」
「く……黒君!」
「ぎ……ギリギリ間に合った……よ……」
白君が妖術で現れた二人を蹴散らし天狐に追いついた時には既に天狐は黒君から離れている。
「また邪魔を……本当に使えない奴らばかりで腑が煮え繰り返る! だが……まあいいだろう……」
白君は私と黒君の前に立ちはだかってくれた。
「黒! よく……よく守った……」
「へへ……僕だって妖狐だからね……このくらい……」
「喋っちゃだめ! 早く治さないと! 白君、黒君の傷を治さないの!?」
「俺は治せない……だが、この力なら……」
白君は紅く光る妖力を黒君に注ごうとするが、黒君はそれを止めた。
「……白兄さん……なにしてるんです……僕にかまう暇があるなら……あいつを……天狐を倒してください……」
「しかし!」
「僕は智子お姉ちゃんに顕現してもらえて嬉しかった……だから……大丈夫……」
「黒君、何を言ってるの!?」
「……智子お姉ちゃん……また……ね……」
黒君も消えてしまった……。
私はもう何も考えられない……腕の中で消えてしまった黒君……私を庇って消えた赤井さん……十字さん、灰さん、銀君……もう……もう私はどうすればいいの……。
「ほう、黒を見捨てましたか……。 所詮仲間と言ってもその程度です。 これで黒は私の力となります」
「どう言う事だ!?」
「私はそこの人間から顕現しました。 キンもヤコも黒も同じです。 顕現者が同じなら私は消えた者の力を使えるのですよ」
「なるほどな……だからその力や妖術を使えたってわけか」
「そう……だから私こそが大妖怪九尾なのです!」
「その割には尻尾が足りないんじゃないか」
「クク……だからあなたを殺し、そこの人間も殺せば晴れて私は復活するのです!」
天狐は大袈裟に身振り手振りをしながらあたかも劇の主役のように振る舞っていた。
「茶番だな……俺がお前を殺せば全て元通りだ」
「そうでしょうか? そう思うならやってみるがいい!」
白君と天狐の戦いは激しさを増し、部屋は跡形もない程にバラバラになり、降り始めた雨の下で戦い始めた。
読んで頂きありがとうございます。
不定期連載ですが頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。




