第参拾伍話【黒対黒】
私がいなくなった事を知った白君達が辺りを探していると、私がふらふらと歩いているのを奏が見つけ飯綱荘に連れて来てくれた。
「戻って来たのか!? 何があった!?」
私が部屋のベッドで休んでいると、私を探しに行っていた白君が急いで戻って来て部屋の扉を勢い良く開け入って来た。
「お静かに!」
「そうよ」
「これだから狐は……」
「なんだと……」
私を飯綱荘まで運んでくれたのは黒豆君。
奏が飯綱荘に向かっている途中で私を見つけ、私は奏に寄りかかるように気絶してしまった……そこを黒豆君が連れて来てくれたのだ。
「白……くん……」
「気がついた? トモモ大丈夫?」
「奏……、そっか……私……気絶して……」
「智子さんが無事ならよかったですよ」
「黒はどうした?」
「黒君は……天狐に連れて行かれた……私を守ろうとして……」
くやしい……私はいつも守ってもらってばかり……何も出来ないなんて……。
こぼれ落ちる涙を奏が拭いてくれる。
「白……」
「ああ、わかってる……その天狐は何処にいる?」
「……行っちゃだめ! 行ったら殺されちゃうよ! もうみんながいなくなるのは嫌なの!!」
既にいなくなった、十字さん、銀君、灰さん……そして黒君……もう、もう十分だよ! これ以上みんなが消えちゃうなんて……。
「智子……」
白君は俯いて泣いている私の頬に手を当て、顔を上げさせた。
そして、片手を振り上げてると、勢い良く振り下ろし……。
ピタン……。
私の頬に痛く無い平手打ちをする。
「白君……」
「いいか智子、天狐との戦いは俺達の問題だ。 智子は巻き込まれただけなんだ。 それに天狐を倒さなければいつまでも智子を追って来る……、……十字、銀、灰、黒……みんなこの飯綱荘と智子を守りたくて戦った……俺も赤井も同じ気持ちだ。 これ以上……お前に手出しはさせない……」
「ええ、そうです。 天狐を倒してこの飯綱荘を……いえ、智子さんを守りますよ……、……白、行きましょう」
「ああ、奏、黒豆……智子を頼む」
「お前達が俺に頼むとはな……いいだろう、妖怪として約束は守る……だが借りは大きいからな」
「わかった……」
そう言い残して赤井さんと白君は飯綱荘を出て行った。
「わ、私も……」
「トモモはまだ無理よ! 智子を頼むって白君や赤井さんに言われてるんだからね」
「でも……、……私が行かないといけない……そんな気がするの……お願い奏!」
奏の腕にしがみついて頭を下げる。
それを見ていた黒豆君は……。
「わかった……俺が連れて行ってやるよ」
「黒豆! 何言ってるの!?」
「行かなきゃ行けないんだろ? それに俺がついてるんだから心配ないさ」
「だけど……」
「お前は家で俺が戻って来るのを待っていてくれ。 帰る場所があるってのはいいものだからな」
黒豆君は私を抱き抱え、窓から飛び出した。
「智子ー! 黒豆ー! 必ず戻って来るのよーー!!」
窓から奏の声が聞こえて来た。
「白、どうだ?」
「ああ……この先だろうな……」
二人は黒の妖気を感じとり天狐の元へと急いでいた。
「グルルルル……」
「やはりか……」
二人の前に立ちはだかったのは……四つん這いになり、尻尾を逆立てている黒い狐の黒だった。
「黒! 邪魔をするなら容赦はしないぞ!」
「智子さんが心配してます! 気をしっかり持ちなさい!」
二人は黒に声をかけるが、黒は威嚇をやめない。
「だめか……白、黒は私がなんとかします。 早く天狐の元へ!」
「わかった。 黒を頼む」
天狐との戦いで体力や妖力を減らすわけにはいかない……。
赤井は黒が白へ攻撃するのを邪魔して白を先へと進めた。
「黒……あなたは一番智子さんの近くにいたのです。 忘れたとは言わせませんよ……」
「グルルル……ガァ!!」
黒は赤井に何度も飛びかかるも、赤井は難なく躱す。
「あなたでは私には勝てません。 それ以上くるのならこちらも手を出さなくてはいけなくなりますよ」
「ガァァァァァ!!」
黒の体から妖気が噴き出すと、さっきまでの黒の動きでは無く、速さ、力強さが格段に上がる。
「これは……天狐に力を引き出されましたか……」
急に引き出された力を黒は制御出来ず、赤井が避ければそのまま木に突っ込み額を血で濡らす。
速度を上げればビキッと黒の関節が悲鳴を上げる。
「もうやめなさい! これ以上は黒の体が持ちません!」
「ガァアアアアアア!!」
「仕方ない……黒! あなたを倒します!」
赤井が炎を出して突撃して来る黒を迎え撃つ覚悟を決める。
「だめええええ!!」
私が叫ぶと黒君は瞬時に私に狙いを変えて突撃して来た。
「な! 智子さん! 避けてください!!」
ドォンと凄い音を立てて黒君は突っ込んで来るも、受け止めたのは黒豆君だった……。
「おっと危ねぇな。 だがなかなかいい攻撃だ……何本か行ったな……、……おい! こいつは俺がなんとかしてやる! お前はさっさと天狐とか言う奴を倒して来い!」
「黒豆……、……わかりました、智子さんも一緒に頼みますよ!」
「任せておけ!」
黒豆君に捕まっている黒君は爪や牙で暴れて離れると、狙いを黒豆君では無く私に定めて来た。
「おい! お前の相手は俺だ!」
黒豆君は黒君から私を守るように戦い、ミンクの力を使い黒君を眠らせようと力を使った。
「グル……グ……ぐ……」
明らかに動きが鈍り、倒れて眠ってしまった。
「これでしばらくは起きてこないだろう。 あいつらを追うぞ」
「でも黒君が……」
「天狐って奴を倒せばその黒の催眠も解けるだろう。 今は白達を追うのが先だ!」
「う、うん……」
私は何度か黒君が心配で振り向くも、黒豆君の後をついて白君達を追った。
読んで頂きありがとうございます。
不定期連載ですが頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。




