第参拾肆話【天狐】
金狐との戦いで私と白君、黒君は飯綱荘でみんなの帰りを待っていた。
「ただいま戻りました……」
ボロボロに疲れ果てた赤井さんが戻って来た。
「赤井! ……他のやつは……?」
赤井さんは首を振るだけだ……。
「くそっ!」
白君はテーブルに穴を開けるほどの力で殴り、唇を噛み締めていた……。
「赤井さん……私……どうすれば……?」
「智子さんは何もしなくて大丈夫ですよ……」
「そんなの嫌! みんな私を守るために戦ってくれたんでしょ!? そんな私が何もしないなんて……」
「…るな……」
「え?」
「自惚れるなと言ったんだ! あれは俺達の戦いだ! お前は関係ねえ! まだ肝心の奴が残ってんだ! お前はここから一歩も外に出るな! そして奴をぶっ倒したらお前はここから去るんだ!」
「は、白君……」
白君はいつもの無表情だけど優しさのある顔では無く、悲しさ、寂しさなどが入り混じった見た事が無いほどの顔で私を怒鳴り散らした。
「白……智子さん、まずはお部屋に……黒、頼みます」
「う、うん……」
私は黒君に手を引かれて部屋に戻った……。
「怒られちゃた……」
部屋に戻った私はさっきは驚いただけだったが、黒君に手を引かれてなんだかじわっと涙が出て来た。
「智子お姉ちゃんは悪く無いです。 悪いのはあいつらだから……今度は僕が智子お姉ちゃんを守るからね」
「ありがとう黒君……でもいいの……。 私のせいなんてちょっと自惚れてたのは事実だし……」
私のせいで……私のために……なんて物語りのヒロインじゃあるまいし……自惚れていたのは事実だよね……。
私が反省しながら十字さん、銀君、灰さんの事を考えていた時、食堂では赤井さんと白君が話し合っていた。
「白、ちょっと言い過ぎですよ」
「あのくらい言って正解だ」
「……まったく素直じゃないですね……」
「智子をあいつに殺らせる訳にはいかないからな……」
「そうですね……それではこれからの対策を考えましょう……、……ふぁ……少し疲れました……ちょっと休みましょ……」
「ああ……久しぶりに力を使ったからな……俺も……、……い、いや……これは……」
飯綱荘にチリーンと鈴の音が響き渡る。
赤井さんはパタリとテーブルに伏してしまった。
「これは……あいつの鈴の音か……く……そ……」
2人とも力を使い切っていたのでこの鈴の音には逆らえず、深い眠りについてしまった……。
「お迎えに上がりましたよ」
「あ、あなた!」
「一度お会いしてますね。 やっと……やっとこの時が来ました……」
「智子お姉ちゃんに近づくな!」
「おや? 私の鈴が聞いてないとは黒も随分育ちましたね……やはり今が好機! この飯綱荘の中ではやりにくいですから一緒に来ていただきます」
私に手を伸ばして来ると、黒君は飛びかかり伸ばした手に噛みついた。
「ふっ……いいでしょう。 黒も一緒に来ていただきます」
噛みつかれていない方の手から鈴を出すとチリーンとさっきより強い眠気が襲って来た。
「あ……白……くん……」
私も黒君もパタリと眠りについてしまう。
「ん……ここは……?」
「お目覚めですか?」
「……ここはどこ?」
「私達の家ですよ……いや、今はもう私一人ですけどね」
私は手足を縛られ目が覚めた場所の部屋は和風な中華風なそんな部屋……。
「聞かせて、なんで私を狙うの?」
「おや? 聞いてませんか? それならお答えしましょう……そこの黒も聞いていいですよ」
「黒君!」
黒君は猿ぐつわをされ朱色の柱に縛り付けられていた。
一生懸命に暴れて縄を外そうとしているけど……。
「黒、大人しくしていなさい。 今から大事な話をするのですから」
黒君は猛暴れしている所、この妖狐に喉を押さえつけられ黙るように首を絞めていく。
ぐったりとしてしまう黒君からゆっくりと離れて話し始めた。
「まずは名乗りましょう! 私の名は【天狐】! テンと呼んでいただいて結構です。 そして智子さん、貴女を狙うのは勿論、私が元の九尾に戻るためです! 貴女のお婆さんに負けたあの日から私はそのことばかり考えていました。 そして智子さん、貴女が私を顕現させてくれたのです」
「私の記憶ではあなたもみんなと仲良くしていたはずよ!?」
「それはそうでしょう……私一人では勝てませんでしたからね。 智子さんの力をいただいてもあのお婆さんには勝てない。 だからチャンスを伺っていたのです」
「チャンスって……まさかお婆ちゃんを!?」
「いえ、私は何もしていません。 ただ、私がもう一度九尾に戻るにはあの飯綱荘に住む者全てを殺す必要がありました……そして私を顕現させた智子さん、貴女をね!」
「私を殺してどうなるの?」
「解放されるのです! 私は智子さんから顕現したせいで貴女が生きている限り飯綱荘の封印は消える事は無い。 解放させなければ九尾に戻る事も出来ない……だから私は飯綱荘の全員に私が無害と信じるまでは手を出さなかったのですよ」
テンは目を瞑りながら昔を懐かしんでいる。
「そしてチャンスがやって来たと思ったのですが、予知が出来る赤井に邪魔をされてしまいまして、お婆さんに私の力を宝石に更に封じられてしまったのです」
「宝石ってもしかして……」
私が身につけているお婆ちゃんからもらった指輪……。
「そうです。 その封印の指輪を身につけられると私の力が効きにくくなりますからね。 その事を考えてお婆さんは渡したようですがね」
「そっか、お婆ちゃんが守ってくれてたんだ……」
テンは話し終えると私の後ろに回り、指から指輪を外した。
「この指輪は私がいただきます……さて、貴女のことは解放しましょう。 あの二人をちゃんと連れて来るのですよ」
テンは縛ったまま黒君を連れて出て行った。
読んで頂きありがとうございます。
不定期連載ですが頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。




