第参拾話 【理由】
「ふふふ、追ってらっしゃ〜い!」
ヤコは軽やかに跳ね、木々の上を渡って来る。
「待ちやがれ!」
いち早く追って来るのは白と十字。
その後ろに赤井、銀と続き、灰と黒が後を続く。
「トモすけ!」
「智子!」
「トモちゃん!」
「智子さん! 大丈夫ですか?」
「お姉ちゃん!」
「みんな! 私は大丈夫だよ」
智子の元へ辿り着いたみんなはヤコとキコを囲うように追い詰めている。
「何で智子を攫った!?」
「もちろん殺すためよ」
「殺してねーじゃねーか」
「智子が死ぬ所をお前達にも見てもらおうと思ってな」
「僕達がいてそんな事が出来ると思う?」
「出来るさ。 お前達が動けば即殺せばいいだけだろう?」
「……こいつを殺してどうするんだ? 本格的に俺達とやり合おうって事か?」
「さあね、あの方の考えはよくわからないのよ」
「それならなんでそっちに着いてる?」
「あら? わかってるくせに……」
私にはよくわからないけど、私を殺す理由がここにありそう。
「せっかく全員揃ってるなら、全部教えちゃおうかしら……智子も知りたいでしょ? なんで自分が狙われてるのか?」
「ええ、教えてくれるの?」
「いいわよ。 少し長くなるけどあなた達はジッとしていてちょうだいね」
「少しでも動けば殺す」
みんなは動かず、私はヤコちゃんの話しを聞く。
「まだ九尾として一つだった頃、人間に封印されたわ……けど少し前に封印が解かれたからもう一度人間を苦しめて楽しもうとしたんだけど、貴女のお婆さんと戦って妖力が完全じゃ無かった私は負けたわ……そして飯綱荘に封印された。 その時に九尾の力を分けて封印されたのよ」
「それがみんなって事だよね?」
「そうよ。 でも最初に顕現出来たのは四人だけ。 あの方と脳筋バカと私、そしてそこの黒は智子……貴女の力で顕現したのよ」
「私が!? 黒君だけじゃ無くて?」
「そうよ。 覚えてないかも知れないけど、貴女が初めて飯綱荘に来た時、あの方が顕現した。 それから貴女が飯綱荘に来る度に顕現していったわ。 そこの四人と違う所は貴女の力のほとんどをあの方が受け継いだわ。 だから最後の黒は貴女の力の残りカスみたいなものよ」
「僕の力が弱いのって……」
「黒君は力なんて無くても私の弟よ! みんなも家族に変わらないわ!」
黒君は自分に探知の力しか無い事を気にしていた……だけど、力なんて無くても家族には変わり無い。
「私の力で顕現したのになんで飯綱荘を出て行ったの?」
「それは簡単よ。 飯綱荘は九尾を封印出来る場所……でもね、術者がいなくなれば封印なんて無いに等しいの。 だからあの四人が出て行かないのがおかしいだけよ」
昨日見た夢……良く覚えて無いけど……あのもう一人いた人……本当だったのかも……。
「もう一つ教えて。 何で私を殺すの?」
「貴女が飯綱荘を受け継いだことで封印が戻ったわ。 もちろん今の貴女くらいの力じゃ私達を封印なんて出来ないけど」
「それじゃなんで?」
「元の九尾に戻るためよ。 あの方はそのために貴女を殺そうとしてる」
「私が死ぬと元に戻るの?」
「貴女だけじゃ駄目だけど……でも貴女が死ねばその指輪に封じられた力が解放されて私達の力が戻るのよ。 力が戻ればそこの連中を倒して元に戻れるからね」
「つまり、お前を殺さないそこの六人は一つに戻る気が無いって事だろう」
「そう言う事か……元に戻るとみんなの意識はどうなるの?」
「それは……」
「私が話します」
赤井さんが割って入って来た。
「おそらく我々の中で一番意識の強い者だけ残り、他の者は消えてしまうでしょう……」
「そんな!」
「そう言う事。 つまり僕達はまだこの世界を楽しみたいんだよ」
「締切もあるしな」
「僕もお姉ちゃんと別れるのは嫌です!」
「みんな……私もみんなと別れるのは嫌だよ!」
「だからお前をいつでも殺せる環境にいながら手を出さないと言うのはそう言う事なんだろう」
「でも私達は違う。 元に戻れるなら何だってするわ!」
「私を殺すのは今じゃ無いと駄目なの? 私がお婆ちゃんになってからとか?」
「おい! 何を言ってる!?」
「白君……聞いて、少しでもみんなが生きていけるならこんな方法もありかなと思うの」
「くく……あーはっはっは! やっぱり面白いわ! あいつらのためにそんな事を考えるなんてね……、……貴女がそんな人間ともっと早く知っていればね……」
「ヤコ、そろそろ……」
「そうね、もう話しは終わり。 戦いましょ!」
ヤコ、キコは妖狐へと変化して臨戦態勢を取る。
「それじゃそいつを返してもらうぜ」
パッと変わると私は灰さんに抱えられている。
「え!?」
「銀、黒は智子を!」
「うん!」
「もちろん!」
全員が妖狐へと姿を変えてヤコとキコと対峙した。
読んで頂きありがとうございます。
不定期連載ですが頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。




