第貳拾玖話【野狐と気狐】
文化祭も無事に終わり、今年のクラス売り上げ最高を獲得した私のクラスは盛り上がった……盛り上がりはしたけども……。
奏、助けて〜!
トモモー! たすけてー!
お互いに助けを必要とする位には質問攻めにあった。
「あの人達は知り合いなの!?」
「あの可愛い子は?」
「奏も知ってるの!?」
あー……もうどうにかして……。
「ちょっとした知り合いが友達連れて来てくれただけだから.…」
本日学校に行ってから何十回と同じ事を話したか……まだ納得してくれて無い子からはしつこく聞かれるし……、……白君もなんとか言ってよー!!
白君の方に助け舟を求めて見つめると……「フッ」 と笑った顔だけ見せて来る。
もう! 全部喋っちゃうわよ! 白君達が妖怪で私と一緒に住んでるって……、……言える訳なーい!!
言ったらもっと酷くなりそうだし……。
「や……やっと解放された……」
「トモモ……私もうダメ……」
奏と一緒にヘトヘトになりながら家に帰った……。
「いらっしゃいませー」
玄関の扉を開けると銀君がメイド服を着てお出迎えしてくれた……え? なんで?
「銀君どうしたのその格好?」
「どう? 似合ってるでしょ?」
「そりゃ似合ってるけど……、……十字さん銀君どうしたの?」
「なんかトモすけの学校でチヤホヤされて気に入ったんだとか……」
「……う〜ん……銀君、それ女の子が着る服装だよ?」
「知ってるよ、でも似合ってるならいいでしょ?」
「……いいけど……それを着て外には行かないでよ」
「は〜い! わかってるよ」
スカートをくるくるヒラリとさせながら部屋に戻って行った……。
文化祭と言う名の学祭も終わり、すっかり秋めいて来た頃、私の部屋に秋の鈴の音が響き渡る。
チリーン……チリーン……。
涼しげなその音色は私を深い眠りへと誘う。
そして私は夢を見る……。
昔の夢……お婆ちゃんがこの飯綱荘に初めて連れてきてくれた日の事を……。
「智子や、ここが飯綱荘だよ」
「ここがお婆ちゃんの家?」
「そうだねぇ、ここはお婆ちゃんのお友達が住んでいるんだよ」
「お友達? それじゃ私も友達になれるかなぁ?」
「智子ならなれますよ」
私はお婆ちゃんと飯綱荘に足を踏み入れると、私の体と飯綱荘が紅く光り出した。
「お、お婆ちゃん!」
「智子! これは……」
「お婆ちゃん私どうしちゃったの?」
「落ち着きなさい、お婆ちゃんに任せれば大丈夫よ」
お婆ちゃんが私の額に手を当て祈り始めると、紅く光っていた私の体と飯綱荘から光りが消えて行った。
「もう大丈夫よ。 驚かせちゃってごめんね、中でジュースでも飲みましょうね」
「う、うん!」
私の記憶はここまでしか無かったけど、夢は続きを見せてくれた。
そこには白君、赤井さん、灰さん、十字さん、銀君と出会い、食堂で一緒にご飯を食べたていた。
ただそこには他にもう一人、顔がぼやけている人がいた。
そして夢が変わると真っ暗な場所で顔の見えない人が私の前にやって来る。
「あなたはだぁれ?」
「……私を解放しろ」
「うん? わかんないよ?」
「……解放しろ!」
「わかんない! わかんないよー!!」
その人はどんどん大きくなり鋭い爪を出ししゃがんでいる私に突き立てたが……紅い光りがその手を弾く。
「ちっ……次はない……」
そこで私の夢は終わり、ガバッと起き上がった。
「ハァハァ……なに今の夢……それにあの人は……」
私が見た夢……あの人は私を攫った妖怪……、……私は小さい頃出会ってた?
その後、何事も無くいつもの日常が進み季節は冬へと差し掛かる。
「やっと涼しくなってきたね〜」
「そうだね〜、ハロウィンも終わってやっと涼しくなったよね」
「ハロウィンは楽しかったよね〜、銀君、黒君もお化けの格好可愛かったし」
「お化けの格好する必要ないのにね」
「ほんと、ほんと……でも楽しかったからいいか」
「いいよ」
私と奏はお化けの格好をした二人を思い出していた。
そんな楽しい日々がずっと続くと思っていたけど……ある日、学校の帰りに弥栄子ちゃんが私の前に姿を現した。
「久しぶりね、夏の旅行以来かしら」
「弥栄子ちゃん!? 今までどこに!? なんで急にいなくなったの!? みんな心配してるよ?」
「質問沢山ね〜……まあ、色々あってね……」
「……帰って来たの?」
「違うわ……弥栄子……貴女を殺しに来たのよ」
「……そう……なんだ……」
「驚かないのね?」
「なんと無くそんな気がしてた」
「それじゃ死んでくれるの?」
「それは出来ないわよ、私にはみんながいるから」
「やっぱそうか〜、私も殺したくはないんだけどね」
弥栄子ちゃんは花魁の格好をした妖狐の姿へと変身した。
「それで、私をどうやって殺すの?」
「そうねぇ……爪で引き裂くか牙で喉を噛みちぎるか……選ばせてあげるわよ」
「どっちも嫌って言ったら何もしない?」
「……智子、貴女強くなったわね……これは確かにいまじゃ無いと駄目か……、……仕方ないわ、これから智子を攫うけど手荒な真似はしないから安心して攫われてくれるかしら?」
「白君達みんなが弥栄子ちゃんを追って来るわよ?」
「それはそうでしょうね、でも私はあいつらと違うからね……、……さ、行きましょ」
「……わかった」
私は弥栄子ちゃんに攫われた。
私を抱き上げると風のように走り、竹藪へと辿り着く。
攫われる事を許したのは弥栄子ちゃんを説得したかったからだ。
私ならきっと出来る……そう思っていたんだけど……。
「ここにいてちょうだい」
「弥栄子ちゃん」
「なにかしら? やっぱり死にたく無いとかは無理よ」
「ううん、そうじゃ無くて、私を縛らなくていいの?」
「縛る? そんな事するわけないじゃ無い。 私から逃れる訳無いからね」
「そっか……確かに逃れないね……弥栄子ちゃん、少し話してもいい?」
「話したいのは山々だけど、あいつらに貴女の事を教えてあげないとね。 あいつらぬけてるからここに来るまで時間かかるだろうし」
「弥栄子ちゃんがいなくなったら私逃ちゃうよ?」
「それなら僕が見てるから」
「吉良馬くん!?」
竹藪から吉良馬君が顔を出した。
「それじゃあいつらが来るまでキコと話でもしてて」
「あ! 弥栄子ちゃん!」
弥栄子ちゃんは風のように消えてしまった。
残ったのは私と吉良馬君。
「吉良馬君も弥栄子ちゃんと同じ考えなの?」
「そうだね、僕とヤコは双子だから考える事は一緒さ」
「そっか……でも双子って嘘でしょ?」
吉良馬君は驚いたような顔をして私を見た。
「……なんでそう思った?」
「だってみんなは九尾の狐なんでしょ? 飯綱荘のみんなで六人、そっちはあの偉そうな人、体が大きい人、それで弥栄子ちゃんと吉良馬君の二人だとおかしいでしょ?」
「……そうだがあの二人が九尾では無いかも知れないぞ?」
「それは無いわよ。 だって私を狙って来るのは九尾の狐のみんなしかいないもん」
「……ハァ〜……こんなに早くバレるとはね」
「二人の内、どっちかが九尾の狐じゃ無いって事? 私にはそんな感じもしないけど」
「そこはまだバレて無いか……でもここまで気がついたご褒美をあげるよ……僕とヤコは双子じゃ無い。 幻さ」
「幻?」
「そうさ、幻を見せている限り僕がヤコであっちがキコにもなれる。 つまりこう言う事さ」
吉良馬君は妖狐の姿に変身すると、その姿がさっきまでここにいた弥栄子ちゃんと同じ姿へと変わる。
「え? 弥栄子ちゃん?」
「こう言うこと……驚いた?」
「驚いた。 いつからなの?」
「そうね、学校で初めて会った時からかしら」
「そんな前から……二人はどっちが本物なの?」
「さてね……おしゃべりはそろそろ終わり。 ヤコがあいつらを連れて来たよ」
ヤコとキコの二人が私の前に立つとみんなが揃って来てくれた。
読んで頂きありがとうございます。
不定期連載ですが頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。




