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妖狐そ!【飯綱荘へ】 〜引っ越し先は妖怪のお助け所でした〜  作者: かなちょろ


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第貳拾参話【旅館】

 海で一通り楽しみ、旅館を目指す。


「赤井さん、本当にこっちなんですか?」

「そうですよ、きっと気に入っていただけると思いますよ」

「赤井さんが選んだんですもの! トモモ楽しみにしておかなくっちゃ!」

「そ、そうね……」


 夏で日も高いはずなのに、向かう先は山の中……しかも何故か少し暗く感じる……。


「なんか霧も出てきたような……赤井さん、運転には気をつけて下さいね」

「大丈夫ですよ。 我々妖狐にはこの位の霧は問題ないですから……っと、そろそろ見えてきますよ」


 霧を抜け田畑の向こう側には竹藪に囲まれた和風の老舗旅館が消えてきていた。


「もしかしてあの大きな旅館ですか?」

「そうです」


 旅館の前に到着するとその大きさがわかる……三階建て?


「到着です。 荷物は十字達に頼むので私達は宿泊の手続きを済ませましょう」

「はい、それじゃ十字さん達お願いします」

「はいはい」


 旅館に入ると女将さんと仲居さんが並んで待っていてくれた。


「いらっしゃいませ、赤井御一行様ですね。 お待ちしておりました……そちらの御二方も御一緒様でよろしいでしょうか?」

「ええ、こちらのお二人も一緒にお願いします」


 女将さんは奏と私の方を見て赤井さんに聞いてるけど、何かしちゃったかな?


「わかりました……それではよろしいでしょうか?」

「大丈夫です。 むしろ喜ばれますよ」

「では、失礼致します」


 女将さんも仲居さんもお辞儀をするとボワンと煙が一瞬立ち上ると……。


「……か……可愛いーー!!」

「なんで!? なんで!?」


 奏も私も大はしゃぎ……だって……だって……さっきまで人と話していたはずなのに今、目の前にいるのは……。


「どうやら慣れていらっしゃるようで安心しました。 ではお部屋に案内させていただきます」


 仲居さんが奏と私の荷物を頭の上にかついで持ってくれた。

 その姿がまた……。


「こちらの部屋とお隣の部屋でございます。 何かあればお呼びください」

「ありがとうございます。 お世話になります」


 赤井さんは仲居さんに封筒を手渡した。


「お心遣いだけで大丈夫でございます」

「いえ、今日はお世話になりますから」

「……それでしたらありがたくいただきます。 どうぞごゆっくりお寛ぎ下さいませ」


 襖を座って丁寧にスーッと閉めて仲居さんは部屋を出て行く。


「赤井さん! こ、ここって!!」


 私と奏は赤井さんに近づき返答を待っている。


「お二人のご想像通りですよ」

「「やっぱりーー!!」」


 女将さんも仲居さんも……妖怪のような存在だった……そして……その姿は……スズメ!

 ここは昔話に聞いたスズメのお宿だった!

 一番大きかった女将さんでも私の半分も無い身長で、仲居さんはもっと小さかった……。

 その仲居さんが荷物を一生懸命運んでくれている姿がまた可愛くて……、……それに昔話が本当なんて……。

 隣の奏と私の部屋も綺麗で広い。

 二人で使うには勿体無い感じだよ……。

 窓からはスズメのお宿の庭も見えるし、綺麗な竹藪、その奥には海の地平線が見える。


「トモモお風呂の後、旅館の中を見て回らない?」

「そうだね」


 まずは海でキシキシになった髪や傷んだ肌を温泉で潤して、スズメのお宿なんてどれだけの人間が来られたかもわからないとっても貴重な体験なんだから楽しまないとね。


「みんな〜、温泉行くよ〜」

「お、いいねぇ……銀、行くぞ」

「僕はここでゴロゴロするよ〜」

「何言ってるんですか銀兄さん! せっかくの温泉なんですから行きましょう!」


 畳にゴロゴロしていた銀君は黒君に手を引っ張られている。


「俺もひとっぷろ浴びて頭をスッキリしてネタでも考えるか……」

「私も温泉行きます。 白はどうします?」

「俺も行く」

「俺も行くぜ!」


 全員で温泉へゾロゾロと向かう。

 途中すれ違う和服が妙に似合うスズメの仲居さんも可愛くて可愛くて……一人連れて帰れないかな?


「それじゃ私達はこっちね……十字さん覗かないでよ」

「覗かねーよ」

「俺がそんな事させねえから安心しな」

「それじゃ黒豆任せたわよ」

「任せとけ」

「みんなそれじゃ後でね……黒君はこっち来る?」

「い! いや、僕はこっちでいいです!」

「なによ〜恥ずかしがっちゃって」

「黒君も男の子だもんね。 またあとでね」


 黒君達は男性用、私達は女性用の脱衣所に向かい服を脱いでまずは室内のお風呂へ。


「へ〜、なかなかいいじゃ無い」

「そうだねお風呂も広いし」


 体を洗ってから湯船に浸かる。


「ねえトモモ」

「なに?」

「今日は誘ってくれてありがとね」

「どうしたのよ突然」

「トモモと知り合えなかったらみんなとは出会えなかったし、こんな素敵な宿に泊まるなんて、私一人の人生では無かっただろうしね」

「それをいったら私もよ……奏やみんなと出会えてなかったらこんな素敵な宿には来られなかったし」

「お互い様って事ね……はぁ……それにしてもいいお湯……」


 広い湯船には私と奏の二人きり……お互いお湯の気持ちよさにぬくぬくしていたら、扉がガラリと開き、体にタオルを巻いたスズメさんが入って来た。


「あら? ここに人間が来るなんていつぶりかしら? このお宿は気に入ってくれました?」

「もちろんです! こんな素敵なスズメのお宿なんて初めての体験です!」

「このお風呂もいい感じです〜」

「嬉しい事を言ってくれますね……でもこの宿のお風呂はここだけじゃ無いんですよ」


 スズメさんは小さいスズメさん専用の水風呂に入っている。


「私が出てきた扉の隣りにもう一枚人間サイズの扉があるでしょ?」

「ありますね」

「そこからは外に通じていて、その先には……」

「もしかして……」

「「露天風呂!!?」」


 奏と顔を見合わせて声がハモった。


「ぜひ楽しんで下さいね」

「はい! 入ってきます!」


 奏と扉を開けて外に出る……。


「素敵……」

「凄い! 凄い! これは絶景ね〜!」


 岩で囲まれた広い露天風呂。

 気持ち良い風に竹がそよそよと揺れている。

 お湯につま先を入れてみると室内のお風呂より少し熱い……だけど心地よい風が吹いているのでこの位の暑さが気持ちいい。


「満点の星ね〜、もう最高!」

「そうね、私も最高!」


 露天風呂は泳げそうな程の広さがあるので、奏が泳ごうとするのを止めながらたわいの無い話しが進む。


「トモモ! あっちの小屋に砂風呂って書いてあるよ!」

「砂風呂か〜、次にお風呂に入る前に行ってみよう」


 私達は露天風呂を楽しんでいたのだけど……。

 読んで頂きありがとうございます。

 不定期連載ですが頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。

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