第6話 悪意ある接触と好奇心の接触
〜山奥の小屋〜
提供者エグェ・ルォにより町が潰されて3日後
レオルドは食料を届けに来たマリエラと一緒に真剣な顔付きで新聞を見ていた…
『港町○○に続き大都市○○も原因不明の崩壊… またもや生存者0人、大魔王復活か』
「…」
新聞はマリエラが、食料と一緒に渡した物だった
二人は、その悲報に言葉を出す事も出来なかった
しかし、レオルドは頭の中でこの悲劇を生み出した人物…ではなく怪物を思い浮かべていた
(あの時の白い怪物…エグェ・ルォ…)
レオルドが新聞の一面を見終え、マリエラに優しく手渡す
しかし、マリエラが不安そうな顔をする
「これって…大魔王アビスが復活したのでしょうか…」
レオルドは大魔王の仕業では無い事を知っていた
そして、レオルドは真剣そうな顔をし言い放つ
「正直、僕にもわかりません…一昨日に港町が破壊されて、昨日、大都市を…こんな事が出来るのは大魔王並みの力を持った奴しか出来ないはず…」
マリエラは、小さく溜め息をつく
「そうですか…」
落ち込むマリエラにレオルドは優しく微笑む
「ですが…もし二つの町を崩壊させたのが大魔王だろうと大魔王でなかろうと、僕が退治します」
無論、レオルドにその気は更々無かった
しかし、世界を救った勇者としての立場、マリエラからの信頼を得るにはそう発言するしか無かった
そして、更に勇者として発言した
「僕は犠牲者の為にも…町の皆の為にも…そして…」
「マリエラさんを守る為に僕は…戦います」
レオルドの目は静かに、強く、偽りの決意に満ちていた
「レオルドさん…」
マリエラは顔を赤くし、ありがとうございますと、恥ずかしげにお辞儀をする
「だから、安心して下さい…マリエラさん」
レオルドは更に、マリエラを抱き締める
「はゃぅっ…!?」
不意に抱きつかれたマリエラはあたふたと動揺するが、すぐに大人しくなる
「レオルドさん…レオルドさんって意外と積極的な方なんですね…」
マリエラは嬉しそうに微笑み、レオルドの抱擁を受け入れる
「えぇ、僕も勇者である前に、男ですから…」
レオルドは、よっしゃと心の中でガッツポーズを決める
(これで…マリエラとの距離は縮まった…後は力の糧を育むだけ…)
レオルドはそう思った
しかし、自身の意に反し、ある感情が芽生えかけていた
(けど…何なんだ…このモヤァっとするようで暖かいようで温いような感覚は…)
レオルドは、自身に芽生えようとしている感情が何かを必死で考えていた、しかし
「あっあの〜…」
マリエラの声にハッと我に変えるレオルド
「ハッハイ…?」
レオルドはマリエラの顔を見る
マリエラは顔を真っ赤にしながら、細々と喋る
「えと…私もこうしていたいのですが…そっそろそろ教会に戻らないと…」
「あっ…そうですね、すみません」
「いえ…」
レオルドはマリエラを抱くのをやめる
「では…また来て下さい」
「はい…では…また来ますね」
マリエラはこの空間にいるのが恥ずかしいのかそそくさと急ぐ様にレオルドの家を出る
「マリエラ…さん…」
レオルドは、若干の寂しさを覚えつつ、マリエラの出ていった扉を見ていた
「…まさか、まさか俺がアイツに恋を?そんな馬鹿な…あり得ないあり得ない…アイツは俺の絆贄の秘術を成功させる為の道具なんだ、そう、道具だ」
レオルドは自身に芽生えた淡い感情を打ち消そうとする
しかし、どうやっても完全に打ち消す事は出来なかった…
〜その夜〜
どうにかして気持ちを建て直したレオルドは椅子に座り策を練っていた
「さて…マリエラは俺に恋をしている…これを順調に育み、得る力を多くしたいが…問題はエグェ・ルォだな…」
レオルドは提供者エグェ・ルォの事で悩んでいた
「アイツが人口調整に入ったなら、マリエラがいる町が襲われるのも時間の問題だ…得る力を多きくしようとしてもマリエラが殺されてしまったら元も子も無い…出来れば…町が襲われてもマリエラが大丈夫な様にしたいが…難しいな…やっぱり、町が襲われる前に早めにやって早めに絆贄の秘術をやるしかないのかな〜」
レオルドは今後の方針を大体決め、ベットへと潜り込むのだった…
〜町があった瓦礫の山〜
満月の光が崩れ落ちたレンガや木材を照らし、風が潰れた人間から漂う血の匂いを運ぶ中、瓦礫の山の中心に提供者エグェ・ルォがいた
「んっん〜、これで3つ目…ワタクシながらとても美しい調整だったよ…」
エグェ・ルォが満足そうに回転する
「そうだね〜、時間かかり過ぎだけど…いいんじゃない?」
その隣でダルそうに息絶えた人間の上に座るのは黒い提供者アルヴァトール
しかし、その後ろにはアルヴァトールと同じ姿をした怪物が4体いた
「んっん〜、君達のお陰で美しく事を進める事が出来ましたよ…」
エグェ・ルォは回転を続けながらも喋る
すると座り込んでいるアルヴァトールの近くにいた4体の内の1匹が喋った
「君達じゃない、君だ、何度も言うがこれは全て俺様であり、俺様の端末でもあり器だ」
どうやら黒い怪物が言うには、アルヴァトールの後ろにいる4体の怪物も全てアルヴァトールだという
「んっん〜、そうでしたね、貴方は提供者の中でも特別異質な方だ、貴方のその体は全て、自身を認識させるだけの器に過ぎないんでしたっけ?」
エグェ・ルォは回転をやめ、座っているアルヴァトールを見る
「あぁ、そういう認識で間違いない…俺様は超越提供概念体でありながら絶対超越不可視非概念不可知独立観測体…通称、認識する者でもある…まぁ、簡単に言えばアンタとは全てがダンチって事よ、寧ろ俺様がアンタ達に合わせてやってる訳」
アルヴァトールが色々言いながら手を叩く
すると後ろにいた4体のアルヴァトールは瞬時にして消え去る
「んっん…そんな我々提供者の既存の概念をも容易く越えるお方が、我々の為にお姿を現し、圧倒的低次元の既存概念しか認識出来ない人間や魔族の女の下劣な尻を追いかけているとは…実に滑稽な話ですね」
エグェ・ルォは腕を組み、アルヴァトールを見る
「尻じゃない、胸だ」
どうでも良い所を指摘するアルヴァトール
「まぁ、俺様が何だろうとアンタが何だろうと俺様は俺様のやりたい事をやっているだけだ、その為なら超低次元の所にだって合わせてやるぜ」
そう言い、アルヴァトールは立ち上がる動作も無く、立ち上がった
「そう言えば、アンタが言ってたこの世界最強の人間の事だが…」
アルヴァトールがエグェ・ルォの方を向く
「んっん〜、レオルドの事か」
エグェ・ルォは即座にレオルドの名を出す
そしてアルヴァトールはレオルドと言う人間に疑問があるらしくその疑問を話す
「2階層、プルシャロオカの摂理を観測する限り、人間に異質な能力が提供される事は本来あり得ないはずだが…」
それに対し、エグェ・ルォも疑問を持っていたらしくアルヴァトールに嫌味混じりで話す
「ふん、全知全能の観測者でも無知の領域があるのですな、しかし…確かに本来ならば奴が異質な能力を持つのはあり得ない、しかしワタクシは奴と対峙した時に、奴は時を…否、時間軸その物所か時間軸に囚われないワタクシをも止めた…」
エグェ・ルォは顎に手を当てて探偵のような考える素振りをする
「悪かったな無知があって…まぁいいや…んで、思ったけどそのレオルドは実はプルシャロオカの人間じゃなく別階層の人間じゃないのか?」
アルヴァトールはそう指摘する
「いや…奴の記憶を読み取る限り、このプルシャロオカの人間である事は間違いない…しかし…奴の記憶の中に、読み取れない物が幾つかあった」
「ほぉ…」
エグェ・ルォの発言に関心を示すアルヴァトール
「なら、そこにレオルドって奴がこの世界に反して異質な能力を持つ理由があるかもな」
そう言い、アルヴァトールは翼を広げる
「貴方…まさか…」
エグェ・ルォはアルヴァトールが何をしようとしてるのかすぐに察知した
「あぁ、レオルドって奴の所に行ってみるわ、面白そうだし」
そう言い残し、アルヴァトールは消えていった
「んっん〜…行ってしまいましたか…しょうがないですね、ワタクシは次に襲う町を探しますか」
そして、エグェ・ルォも音を立てず、忽然と姿を消すのだった…




