第3話 戦い
エグェ・ルォとレオルドは、互いに武器を構え距離を取る
互いに相手の出方を伺い、一瞬でも気が緩まないよう集中している
(大丈夫だ…一年のブランクがあるけど…やれるさ、俺なら…)
レオルドは、剣を握り直し相手の目を鋭く睨み付ける
(んっん〜…流石、この世界最強の人間なだけあって、静かだけど気迫がピリピリ伝わってくるね〜)
同じくエグェ・ルォも、レオルドを睨み付ける
この状態が数分続いた
「…先手必勝会心撃ィ!!」
先に動いたのはエグェ・ルォだった、しかし、彼はレオルドに向かうかと思いきや、一瞬で光に包まれ姿を消した
「ッ…!!!」
レオルドは、咄嗟に剣を後ろに突き刺した!
「オォォッッ!?」
そこには、二つの鎌を持ったエグェ・ルォがいた
腹には剣が刺さっており、赤い血が、突き刺した剣の刃を伝って流れていた
「不意を付く奴は大方、頭上か後ろを攻めて来るんだよぉ!!」
レオルドはそのまま、突き刺した剣を斬り上げる
傷から鮮血が吹き、レオルドにかかる
「イタタタタ!!んっん〜…流石は世界最強の人間だ…けど、所詮は人間」
エグェ・ルォは体勢を立て直し、斬られた腹を撫でる、すると、先ほど付けた傷がみるみる塞がっていく
「チィ…再生するのか」
レオルドはすぐに、距離を取り、次の攻撃の構えを取る
「次はワタクシの番!!」
エグェ・ルォはレオルドが攻撃を放つより早く、レオルドの元に走り、腹に蹴りを入れる
「うわぁ!!」
レオルドは重い一撃を受け、木々を壊しながら豪快に吹き飛ぶ
そして、エグェ・ルォは二つの鎌にエネルギーを発生させ、衝撃波を放つ
「秘技!!双鎌衝撃波!!」
なんて直球な技名なのだろう
レオルドは吹き飛ばされながらも体を捩らせ、体勢を何とか整える
「こうなったら…アレ使うか…」
そう言い、レオルドが念じると、鎌から放たれた衝撃波が止まる、エグェ・ルォの動きも止まり、川を流れる水も止まり、獲物を狙う動物も止まる、そしてレオルド以外の全ての動きが止まった
レオルドはそのまま、岩へと激突し吐血をする
「ぐぅッ…!?…ま…まぁ、発動したからいいか…」
レオルドはよろよろと立ち上がり、動かなくなったエグェ・ルォの方に近づく
「へ…神とは別次元とか言う割にはキッチリ時間軸に捕われてるじゃねぇか…」
レオルドは時を停止させたのだ
そして、レオルドは鎌から放たれた二つの衝撃波に目を向ける
「目標転換…」
レオルドがそういい放つと、なんと、衝撃波が一瞬でエグェ・ルォの方向を向いたのだった
更にレオルドはエグェ・ルォの方に近づく
「時が止まった物質は、何よりも硬いと思われがちだが…硬度には何も変化は無いんだよね」
レオルドは、持っていた剣でエグェ・ルォの体を何度も突き刺し抉る
「そして…次はこうかね」
レオルドがエグェ・ルォから離れ、指をパチンと鳴らすと先ほど方向を変えた衝撃波がエグェ・ルォの元へ飛ぶ
しかし、衝撃波はエグェ・ルォに接触すると再び止まってしまった
「そして、次は俺が不意打ちをする番…」
レオルドはエグェ・ルォの後ろ側にある木に登り、身を隠し、再び指をパチンと鳴らす
「グブォェ!?」
止まっていた時間は動き出し、エグェ・ルォに接触していた衝撃波は体を引き裂き爆発を起こし、砂煙を上げた
「なっ何が起きた!?ぐぐぅ…!!おのれレオルド・キングロードめぇ…!!」
レオルドは最大まで気配を殺し、砂煙からエグェ・ルォが姿を現すのを待っていた
(…)
息を殺し、不意打ちのタイミングを伺うレオルド
しかし、砂煙が消えた所にエグェ・ルォの姿は無かった
(アレ…見失ったか…?)
しかし、すぐに彼の声が聞こえた
それは上空から聞こえてきた
「んっん〜、レオルド・キングロード、君を人間だと思ってすっかり侮っていたよ、ワタクシをここまで傷付けた人間は…君が初めてだ…称賛に値する…素晴らしぃ!!!」
エグェ・ルォは空中で大きく拍手をする
(…)
レオルドはまだ気配を殺し、様子を見る
「ますます君の記憶を読み取りたくなってきた…そうだね、君の亡骸からでも記憶を読み取る事は充分可能だ…例え君が肉塊や手だけ骨だけ灰になろうともね!!君の功績を称え、ワタクシもちょっと力を解放してさしあげましょう!!」
エグェ・ルォがそう言うと、出していた鎌を消し、両手を高く天へと突き上げる
「ワタクシは重力を提供する者!!エグェ・ルォ!!圧倒的に集中させた重力で押し潰されろ!!」
エグェ・ルォの手から黒い玉が現れる
「…!!」
危険を察知した、いや、彼の話を聞いていたレオルドはあの黒い玉がどういう物かを察知し、すぐにその場から離れる
「アレじゃ目標転換は効かねぇ…逃げるしか…!!」
レオルドはすぐに自身以外の全てを止めようとした、しかし
「せぃ!!」
エグェ・ルォの放った黒い玉はレオルドが時を止めるより早く放たれた
その瞬間、周囲に凄まじい程の重力がかかり、木々、動物が押し潰され、地面が崩れていった
「う…うわぁぁぁ!!」
レオルドも重力に押され、地面に落ち伏せた
「グッグアァァァァ…!!」
レオルドにも凄まじい重力が襲いかかり、その体を押し潰そうとする、しかしレオルドは必死で這いつくばり、放たれた黒い玉から離れていく
重力は黒い玉を中心に発生しており、そこから離れていくにつれ、体にかかる重力も弱くなる
レオルドは少しでも体にかかる重力を弱める為に、這いつくばった
「んっん〜、そこにいるんだね、レオルド・キングロード」
レオルドの居場所を感知したエグェ・ルォがレオルドの前に降りる
どうやら、重力の影響は受けていないようだ
「んっん〜、押し潰したと思ったけど生きてたか〜、しかし、これではまともに立つ事も出来まい」
「チッ…」
エグェ・ルォはレオルド見下げるとレオルドの頭を掴み持ち上げる
「どれ…ハイ、読み取り完了…なるほどなるほど…」
エグェ・ルォはレオルドの記憶を読み取ったのだった
「グッ…以外と呆気ないな…」
「これでこの世界について知れるんだ、画期的だろう?」
そう言い、エグェ・ルォはレオルドの腹にパンチを食らわし投げ捨てる
レオルド「あぐぅっ…!!」
レオルドはそのまま、地面へと叩きつけられる
そして、黒い玉から発生している重力がキシキシとレオルドの骨を軋ませる
「ほぉ…君は人間だが人間に怖がられ避けられてるのか…人間の為に人間の敵を倒したのに、これは酷い酷い…人間はやはりどの世界でも身勝手で愚かだね、んっん〜」
エグェ・ルォはそう言い再びレオルドに近づく
「チッ…黙れ…!!」
エグェ・ルォはレオルドの言葉を無視し続ける
「んっん〜、君は生まれた時から勇者として育てられ、人間の敵と戦う事を義務づけられ…そして人間の敵を倒したら塵の様に捨てられ…都合良く扱い都合良く捨てる…これじゃ人間の敵の大魔王アビスとなんら変わりがないね、寧ろ人間の方が酷い」
「…」
レオルドは何も言えなかった、生まれた時から勇者としてあらゆる事を学ばされ、経験させられて来た
両親が優秀な戦士と賢者だった、それだけの理由で勇者としての使命を与えられ、勇者として作られていき、見事、大魔王を倒す人間の道具となったのだ
レオルドはそれを知っていた、だから自分が真の自由を得るには大魔王を倒すしか無かった
しかし、大魔王を倒し勇者としての使命から解放されたが、人間は自分を人として受け入れず人を越えた存在として、レオルドを怖れた
当の親は既に他界し、レオルドを受け入れる者は何処にもいなかったのだ
「んっん〜、自分の作った道具に怯えるなんて…人間は変わってるね」
「俺は道具じゃない!!」
レオルドがエグェ・ルォに怒りの声を上げる
「おぉ、すまないすまない…だが、これで人間に下す審判はハッキリした」
「…?」
エグェ・ルォは無駄に一回転し高らかに宣言した
「この世界の人間は…調整の必要…アリ!!」
エグェ・ルォはそう言い、空へ舞った
「ちょっと待て!調整って…」
レオルドが問いかける
エグェ・ルォは翼を羽ばたかせながらレオルドを見下げて言う
「そのまんまさ、人間をちょっと半分くらい殺すだけ、世界にとって無害になるように、じゃあ明日からやるんで、さらば!!」
そう言い残すとエグェ・ルォは空へと消えていった
それと同時に、重力を発生させていた黒い玉が消え、レオルドは玉による重力から解放された
「ハァ…どうなっちまうんだよ…」
レオルドは、今は空を見上げて考える事しか出来なかった




