第3章
巨獣の出現によって、人類の時代は終焉を迎えつつあった。
大地は踏み荒らされ、都市は瓦礫と化し、国という概念さえ崩壊の淵に追いやられ、文明は失われつつあった。
人類はもはや、この地球における支配者ではなくなっていたのである。
だがその中で、ただ一つ──人類の味方として現れた存在があった。
2045年、「ガクラ」の出現。
彼がもたらした恩恵は、時に世界を混乱に陥れながらも、人類に再起の機会を与えた。
既存兵器を遥かに超越する圧倒的な戦闘能力。
彼の身体から生成・放出される“棘”。
それは単なる生体組織ではない。
新たなエネルギー源であり、新素材であり、崩壊しかけた人類文明を繋ぎ止める希望そのものだった。
──それらは人類にとって、絶望の底に差し込んだ最初の光だった。
その光を受けて、人々は再び立ち上がる。
失われた故郷を取り戻すために。
踏みにじられた文化を蘇らせるために。
そして、絶望の時代にあっても人であることを証明するために。
イギリスで突如として発生してから23年。
侵略的軍性巨獣種「ベルゼブブ」によって、ヨーロッパは徹底的に蹂躙されていた。
数多の国家が滅び、都市は巣へと変えられ、生存者たちは大陸各地から追い立てられていく。
その中で唯一、人類側の中核拠点として機能し続けたのがイタリアだった。
イタリアは亡命政府と難民を受け入れ、各国残存戦力を統合。
やがて新たな旗の下に結集したその国家群は、「ヨーロッパ連合国」と呼ばれるようになる。
彼らは長きにわたり、耐え続けた。
奪われた祖国を想いながら。
死者を積み重ねながら。
再び戦うその時を待ち続けていた。
その苦難と絶望の果てに、ようやく“反撃”の機会を掴み取った。
彼らの胸に宿ったのは、奪われた土地を取り戻すという単なる軍事目標ではない。
奪われた土地を取り戻すこと。
失われた文化と歴史を奪還すること。
そして何より、“ヨーロッパという魂”を取り戻すための戦いだった。
そして──2051年。
人類は、巨獣時代最大規模の反攻作戦を開始する。
その名は「ヨーロッパ奪還計画」。
人類が再び立ち上がることを、世界に示す戦いである。




